2019年12月30日月曜日

生存報告という名のアプローチシューズレビュー

放置しすぎのこのブログ。

読んでいる人はもはや居るのだろうか。

どうせ自己満足の代物なので良いんだけれども。

2019年も終わるので最後に何か更新をしておきたい。

そしてせっかくなので何かしら実のある内容を書きたい。

そういえば以前書いたクライミングシューズレビューは結構読まれているみたいだ。

じゃあ今回は
アプローチシューズについて書いてみようと思う。

今までそこそこの数のアプローチシューズを履いてきたと思う。

というのも、
岩場へのアプローチ目的に買ったり、
普段履きとしてスニーカー代わりに買ったり、
ルートセット用に買ったり、
様々な用途のために買って履いては、
「これいいなー」だったり
「なんかちがうなー」を繰り返しているのだ。

ということで今回は
僕が履いたことのあるアプローチシューズを

履き心地の良さ・・・・☆☆☆☆☆
整地での歩きやすさ・・☆☆☆☆☆
荒地での歩きやすさ・・☆☆☆☆☆
クライミング出来る・・☆☆☆☆☆
の4項目で★をつけていき、所感を書いていこうと思う。

ちなみに素足実寸24.3cmの僕が履いたサイズも表記していく。

5.10 ガイドテニー
US7(25cm)
履き心地の良さ・・・・★★★★☆
整地での歩きやすさ・・★★★★☆
荒地での歩きやすさ・・★★★★★
クライミング出来る・・★★★☆☆
US6(24cm)
履き心地の良さ・・・・★★★☆☆
整地での歩きやすさ・・★★★☆☆
荒地での歩きやすさ・・★★★★☆
クライミング出来る・・★★★★☆

信頼と実績のザ・アプローチシューズ。
履き心地・歩きやすさ・登りやすさが高いレベルで纏まっている。
普段履きとしてや、アプローチ用としてならUS7でベストだが、セット用に詰めたサイズが欲しくてUS6にしてみたらやっぱりキツかった。が、登りやすさは向上。多少小さ目のホールドへのエッジングもこなせるのは靴全体の剛性バランスの良さ故か。
河原の滑りやすい岩の上をとび移りながらのアプローチなんかでは抜群の信頼感。
1,000m以下級の軽い登山であればこの靴で問題なく快適にこなせた。



5.10 アッセント
US7(25.0cm)
履き心地の良さ・・・・★★★★★
整地での歩きやすさ・・★★★★★
荒地での歩きやすさ・・★★★☆☆
クライミング出来る・・★★☆☆☆

幅広のラストと、柔らかめのアッパーとソールで、履き心地はものすごく快適。
快適であるがゆえに若干靴の中で指が遊ぶのでクライミングには不向きだが、MI6ソールのフリクションはやはりすばらしく、これもガイドテニー同様、岩の上を歩くのに安心感がある。しかしアッパーの素材の剛性が弱く歪みやすいので、長い距離整地されていない地面を歩いているとやや足が疲れる。
デザインもシンプルで使いやすく、普段履きならコレだ。


5.10 アーバンアプローチ
USW7(23.5cm)
履き心地の良さ・・・・★☆☆☆☆
整地での歩きやすさ・・★★☆☆☆
荒地での歩きやすさ・・★★☆☆☆
クライミング出来る・・★★★★★

一目見た時に「これは登れそう」と思い、いっそのこと「アプローチシューズでどこまで登れるのか」を試す為にかなり攻めたサイズで購入。
めちゃくちゃ登れる。
サイズゆるめでレンタルシューズを借りました、というくらいには登れる。
ただ攻めまくったので当然履き心地は最悪。そうでなくても靴の特性として、中敷きが無い、ソールもアッパーも薄いなど、サイズが適性であったとしても履き心地は良くないだろう。(ウィメンズモデルなので足幅が細いというのもある)
しかしそれを差し引いてもクライミング性能が高い。ソールとラウンドラバーが一体になった作りはアプローチシューズ界のノーエッジシューズ。正直、ボテやボリュームに乗るならクライミングシューズよりもこいつのほうが信頼感ある。
もう二度とこのサイズで買おうとは思わないけどまた欲しい。けれどもう無い。


スカルパ モジト
サイズ忘れた
履き心地の良さ・・・・★★★☆☆
整地での歩きやすさ・・★★★☆☆
荒地での歩きやすさ・・★★★☆☆
クライミング出来る・・★★★☆☆

デザインがお洒落という事以外これといった特徴が無い。
他のアプローチシューズと比べてどこが悪いという事もないがどこが素晴らしいというわけでもないという印象。
サイズは確か当時履いていたガイドテニーUS7と比べてクライミングしやすくなるよう、もう少し小さめを買ったはずだが、それでもガイドテニーUS7のほうが若干登りやすくもあった。普段履きにするというならもっと快適なスニーカーがあるし、山道を歩くとかセットに使うなら他のアプローチシューズを使いたい。
色展開が多く、ファッションとして合わせやすいのは強み。


スポルティバ MIX
EU38
履き心地の良さ・・・・★★★☆☆
整地での歩きやすさ・・★★★☆☆
荒地での歩きやすさ・・★★★☆☆
クライミング出来る・・★★★★☆

スポルティバ信者のためどうしても欲しくなって購入。
扱いやすいし登りやすい。
ヒール周辺のつくりがしっかりしているのでアプローチシューズのくせに何故かヒールフックがけっこうかかる。あとつま先のクライミングゾーンがしっかりしているのでエッジングもそこそこいける。あきらかにクライミングをすることを意識した設計になっている。
調子に乗ってこの靴で登りまくっていたら結構早く壊れてしまった。
もう少し価格が安ければ自分の中で定番化されたかもしれない。


スポルティバ TX2
EU39
履き心地の良さ・・・・★★★☆☆
整地での歩きやすさ・・★★★★☆
荒地での歩きやすさ・・★★★★★
クライミング出来る・・★★★☆☆

今現在(2019/12)普段履き兼アプローチ用として使用中。
歩きやすさと言う点では文句無し。安定感、フリクション、トラクション等の性能の良さは半端なトレッキングシューズ以上。
ソールがやや厚く、前述のアーバンアプローチや後述のクルーザー等の、ソール薄めのアプローチシューズと比べて足裏感覚に乏しいのでクライミングにはやや向かないが、十分及第点ではある。
つま先周辺がやや狭く、初めは若干窮屈に感じたが、少し履きならすと気にならなくなった。登ることに使わず、歩くことだけを気にするならサイズはEU40で良かったかもしれない。


イボルブ クルーザーサイキ(ウィメンズ)
USW7.5(24.5cm)
履き心地の良さ・・・・★★★★☆
整地での歩きやすさ・・★★★☆☆
荒地での歩きやすさ・・★★☆☆☆
クライミング出来る・・★★★★☆(★★★☆☆)

今のところセット用のシューズとして一番使いやすいと思うのがこの靴。
快適な履き心地であるにも関わらず結構クライミングもこなせる。
かかとをスッとつぶしてつっかけみたいに履けるのも、履き脱ぎの機会の多い場面で使いやすい。
唯一難があるとしたら耐久性。1年持たず靴側面に穴が開いてしまった。
2019年に行ったモデルチェンジ(マイナーチェンジ)で、ラストが変更されたのかトウ周辺により大きなゆとりができたことで、以前と同じサイズ(24.5cm)で購入したら体感で0.5~1cmほどゆるく感じるようになり、クライミング性能ががくっと落ちた。現行のモデルをクライミング性能重視で履くとしたら24cmか23.5cmくらいでもいいかもしれない。


ブラックダイヤモンド サーキット(ウィメンズ)
USW7(24cm)
履き心地の良さ・・・・★★★★☆
整地での歩きやすさ・・★★★☆☆
荒地での歩きやすさ・・★★☆☆☆
クライミング出来る・・★★★★☆

履いていたクルーザーのサイズにずっと違和感を抱えていたのと、最新号のロクスノの広告に胸を打たれて購入(やっぱり「広告を載せる」ってことは大きい効果があるんだよなあ)。
性能としてはクルーザーにかなり近いが、かかと部分がクッション性のある素材で厚みがあるのでクルーザーのようにかかとをつぶして履くのには向かない。
アッパー素材がクルーザーはキャンバス地なのに対し、こちらはニットっぽい柔らかい素材。それにより履き心地が向上、クルーザーよりも小さいサイズでも同等程度に快適に履くことができ、結果クライミング性能も損なうことなく履くことができる。ソールはBDのオリジナルソールを使用しているが、フリクション性能という点ではやはりステルスやイボルブのTRAXラバーに軍配が上がる。
履き心地とクライミング性能をうまく両立できているのでジム内で履く靴として全く不満は無い。とりあえず壊れるまでは履きたい。

【併せて買いたいモノ】


僕が「これだけはガチだ」と思うものの一つに

「スーパーフィート」という中敷きがある。

始めはお店の人に勧められつつ「なんだかうさんくせーなあー」と思いながらも、騙されたと思って買ってみたんだけど、今となっては靴を買う度にほぼ確実にセットで購入している。

買ったそのままでは使えず、靴に合わせて加工する必要があるので、買うんだったら合わせる靴と同時に購入するか、使っている靴を持って行って、店の人に加工してもらった方が良い。
わざわざそんなことをするのが億劫だという人は、ちょっとした手順とコツを覚えれば自分でも加工が容易なので、知っている人に加工の仕方を教わるといいだろう。
慣れてくると5分も掛からない。

アプローチシューズに入れるんなら一番のオススメは
「カーボン」
薄くて軽量。クライミング性能を損なわずに長時間の履き心地や歩き心地が向上する。

もしくは
「ブラック」
軽さはカーボンに劣るが十分コンパクトで、クルーザーやサーキットのような軽量アプローチシューズの中に入れても違和感全く無し。値段はカーボンより1000円以上安いので常用するならコレでいい。

「ブルー」
はガイドテニーやTX2などの、比較的しっかりした作りの靴に向いている。が、軽量シューズにも十分合う。

ブルーより厚い
「グリーン」
もあるが、それはミッドカット~ハイカットの靴に適しているので、ローカットのアプローチシューズと合わせるのには向かないだろう。

と、なんだかスーパーフィートの回し者みたいになってしまったけどこれは本当にオススメできる。

クライマーじゃなくても特に「立ち仕事」の人

1日中ずーっと立っていると夕方くらいには足裏が痛くなってくる、とか、足がどんどんむくんでくる、みたいな悩みを抱えている人は是非一度試してみて欲しいと思う。


ということで以上!


来年は
「これ登れたぜー!よっしゃー!」
っていう記事で更新しまくりたいなあ・・・・

2019年10月6日日曜日

信頼と実績、或いは成長の実感


僕にとって「岩を登る」という行為は

自分の中の孤独を突き詰めていくという行為であると、そう思っていた。

岩と、自分と、あとは精々、虫と鳥くらい。

それだけが居る空間で、可能と不可能の境界に没頭する作業。

そういった時間に最も価値を見出していた。

しかしそれはそれとして、

仲間と共に楽しむクライミングもまた好きだし、

岩の魅力を他者に理解してもらいたいという欲求もまたある。

今日はそんな欲求のために、普段あまり岩に行かないクライマー達と共に

瑞牆へ。

結論から言うと今日の岩登りは個人的にもパーティとしても成功だった。

気候は穏やかで過ごしやすく、

誰一人怪我もなく、

全員が収穫と課題を持ち帰り、

最後には笑顔があった。


今日は通日、岩の魅力の案内役に徹しようと思っていたんだけど、

タイミングと行先が噛み合い、

かねてから登りたいと思っていた

千里眼(二段)をトライすることができた。

この課題は6年前(!!もうそんなに昔になるのか)
に一度触っており、その時は離陸だけでもできないという体たらくで、
長らく僕の中でこの課題は「とても不可能な課題」という位置づけにあった。

しかし時間の力は重い。


6年という月日の間のどこかで、不可能が可能に切り替わっていた。

いや、或いはこれは道具のおかげかもしれない。

今日も、離陸からランジの飛び出しまでは実力で持っていくことはできたものの、
最終的に完登を決定づけたのはやはり靴の力だった。

ソリューション、スクワマ、インスティンクトVSと靴を色々試してみたもののそのどれもでは今一歩強く蹴りだしきることが出来ず、リップを叩いては落ちるというのを繰り返した挙句、

ミウラーW'sに履き替えたら一発であっけなく止まってしまった。
明らかに踏み込みが違った。

なんやこの靴。チートやんけ。
また買うわ!

ということでまたひとつ愛靴ミウラーW'sの信頼と実績が積みあがったのだった。


2019年9月21日土曜日

神居古潭の梁山泊

新婚旅行で北海道へ一週間。

のんびりと観光だけを楽しむつもりだったけど、

やっぱり折角だから岩も登りたいという気持ちを抑えられず、一日だけ岩を登る日とすることにした。

当初の目的地はニニウの岩場だったけど、どうも前日に道を調べていると、
ニニウに至る北海道道610号占冠穂別線が通行止めになっているようで、

仕方なく逆方向の旭川方面へ。

第二候補ではあったけど、結局のところこちらにしても大正解だった。

岩場の場所は

旧神居古潭駅のある場所で、

駐車場に売店、トイレまで完備された立派な観光地でもあった。

旧神居古潭駅舎や、SLの車両まで飾ってあって、それを観るだけでも来る価値のある場所かもしれない。

そんな旧神居古潭駅舎からさらに10分ほどのアプローチで、
エリアのメイン岩であると思われる梁山泊に到着。

トポで「高い岩」ということは確認していたが、目の前にすると改めて高さを感じる。

中央の一番高いところは約6m。

地元クライマーの方がトップロープを張って練習していた。

その地元の優しいクライマーの案内もあり、色々な課題を登ることができた。

まず

ガンボルトSD(7a~7a+)

ここは何故か段級グレードではなくてフレンチグレードが採用されている。
なんとなく照合できるけど違和感があって、それがまた異国を感じさせて面白くもある。

次に登ったのは
ガンボルトキングSD(7b)
ガンボルトとラインは同じだけど。途中のムーブをランジに限定している課題。

曰く、この梁山泊という岩は、昔ジムが今ほど無い時代に、ジム代わりに多くのクライマーによって登られていた岩で、課題もただラインを指定したものだけでは飽き足らず、それこそジムのまぶし壁で課題を作るように、細かく使用するホールドを決めて作られた課題が多くあったとのこと。
このガンボルトキングなんかもその頃の名残。
今はもうトポで表せないような細かい限定のある課題は排除して、なるべくシンプルなライン取りの課題のみをトポに残すようにしているらしいが、昔は使用するホールド一つ一つすべてを指定したような課題もあったらしい。
なんとも興味深い話である。

次に登ったのは
モンキーフェイスSD(7b~7b+)


これは結構苦戦させられた。
外傾したホールドが多く、見た目よりストレスフルな動きを要求される。
色々ムーブを試行錯誤させられたが、最終的にしっくりくるムーブを一つ見つけたらあっさり登れた。
これは面白い。

次に、優しい地元クライマーさんが
「まだトポには載ってないんだけど」
と紹介してくれた

跳び熊(7a+)

羆嵐(7a+)

を登る。
「同じ7a+というグレードなんだけど明らかに羆嵐のほうが難しいと評判なんですよ」
と言われたが確かにそうだった。

跳び熊はジムで登りこんでる最近のクライマーならそう難しくないだろうが、羆嵐は岩にうまく体をはめ込む巧さとパワーを要求してくる。
どちらも良課題だった。

その後奥さんのトライのサポートとかをしつつ簡単な課題をいくつか登って終了。

夕方から雨が降る予定で、登っている間も湿度は80%。
宿のチェックイン時間の兼ね合いで滞在時間は4時間ほど。

そんな条件の中だったけど、面白い課題が結構たくさん登れて大満足。

奥さんは1個しか課題は完登できなかったけど、コロポックルっていう6a+(三級くらい)の課題を最後まで一生懸命打ち込んでて悔し楽しそうだった。
(コロポックルは僕もやったけどクラシカルな名課題だった。)

「観光も楽しいけど、岩を登った今日のほうが何倍も楽しかった!」
と言って貰えて、岩に来た甲斐があったと思う。

色々登って楽しかったというのもあるけど、
今回の旅では、優しい地元クライマーの方に出会えたということがかなりの収穫だった。

この梁山泊という岩が地元のクライマーにとってどのように登られてきたかの歴史であるとか、課題のライン取り、それぞれの課題の地元民からの評判など、有意義な情報をたくさん聞くことができた。

僕はボルダリングという行為を、より深い孤独を獲得するために有用な行為だと思っている。
でも、逆にこのように、土地も時間も遠いところに居るクライマーと「何か」を共有できる行為でもある。
岩を登るという単純な行為が、旅をより深く広くしてくれる。
なんとも素晴らしいじゃあないか。


2019年9月12日木曜日

映画「フリーソロ」を観て


散々話題になっている映画

「フリーソロ」

を観てきた。

この映画を観終わった後に僕の精神を襲ったのは大きな感動と歓心、それと嫉妬だった。

まず、この映画を観る以前に僕はアレックス・オノルドというクライマーに対して大きく間違ったイメージを持っていたということを白状しなければならない。

約1kmほどのフリーソロを達成するような人物は、
どこか頭のネジが吹っ飛んでいて、かつ、ほとんど人外の技術や体力をその身に修めているんだろうとばかり思っていた。

この映画を観るにあたって僕は
「超越した技術と体力を持った、何ものをも恐れない超人が繰り出す、神のような御業を拝見させていただこう」

そんな気持ちで映画館に足を運んだ。

だが実際にはアレックス・オノルドという人物は
埒外の超人でも、人外の精神を宿した半人半神のような存在ではなく、
ただただ「人間」だった。

この映画はそんな「人間」アレックス・オノルドをしっかりと描き切っていた。

アレックスは決して恐怖を感じないわけでも、死をなんとも思っていないわけでも、命がけのギャンブルを楽しんでいるわけでもない。

フリーソロを行う上でアレックスが抱えている葛藤や、積み上げた努力や、組み上げた方法論なんかは、全部が全部深く共感できる人間のそれだった。

僕自身、どちらかというとアレックスのような生き方に憧れを抱いている人間のうちの一人だ。

というか、
どんなかかわり方であれ、クライミングにそれなりの深さで「ハマって」いるような人間は、アレックスの生き方を理想に思わないはずがない。

でも、色々な考えがその生き方を妨害する。

安定、保障、幸福、平穏、安寧、評価、栄光。

「普通の人」が人生に求める多くのもの。

その多くのものを少しでもたくさん得るためには、どこかで「アレックス的な生き方」には見切りをつけなきゃならない。

(そしてその見切りをつけた自分を肯定するために「アレックス的な生き方」を否定する側に立ってしまうこともある)

勿論僕も、その、見切りをつけてしまって生きている「その他大勢の人間」のうちの一人だ。

アレックスがもっと超越的な人間なら良かったのにと思う。

なんの共感もできないクレイジーなぶっとび野郎だったらこんな風に嫉妬なんかしなかった。

でも映画の中のアレックスは驚くほど「人間」で、だから僕はその生き方や在り方に嫉妬してしまった。

劇中ラストでアレックスが完登したシーンは身体中が震えるほど感動したが、
その感動したという事実にまた悔しく思った。

「俺はいつから他人の成功なんかに感動するようになっちまったんだ」
と。

感動したいんだったら映画を観るんじゃなくて自分でそこを登りに行くべきなんじゃないかと。

他人の成功に便乗した借り物の感動なんかで満足するような人間なんかではありたくない。
そういう風な衝動を思い起こさせてくれたのもまたこの映画のおかげでもある。

アレックスがフリーライダーのルートを登る上でメモした情報の量は莫大なものだっただろうと思う。
何百手?あるいは何千手?の手順を恐らくほとんど全部メモに収めて、しかもそれを暗記していたようだ。
(フリーソロを)登るときは考えてない。考えることは事前に終わっている。自動操縦のように体を動かすだけ。と言っているが、それをなすためにどれくらいの時間と執念と理性と精神とを必要とするのか。

僕は今までボルダーにおいて結構「自分の限界に挑戦」をしてきたほうだと思っていた。
執念と時間をかけてひとつの課題に打ち込むほうだと思っていた。
「打ち込み系クライマー」を自称していた。
この映画を観た後だと「打ち込む」ってことがどういうことなのか、改めて考えなければならないと思わされる。


まだまだ書くべきことはたくさんあるような気がするけど、
とりあえずこのくらいにしておく。

映画のレビューというより自分のことばっかり書いてしまった。

とにかく、この映画はクライマーなら必ず観るべきだと思う。

クライマーじゃなくても観て面白いと思う。

この映画のラスト、フリーソロを完遂した後に監督のジミー・チンがアレックスに

「この後の予定は?」

と聞いて

「とりあえず懸垂かな」

とアレックスは答える

「今日くらいは休めよ」

と笑いながらジミーが言ってエンディングに入る。

僕も何か大きな目標を達成した直後に予定を聞かれたときに

「とりあえず懸垂かな」

と答えられるようなクライマーになりたい。

2019年9月6日金曜日

残暑お見舞いの下仁田

前回の更新からまるっきり二か月!

失踪したわけでも死んだわけでもありません。

まあ8月は仕事や私用でスケジュールがバッチリみっちり埋まっていたのと、暑さで岩どころではなかったのと、

あとなにより
新潟が誇るローカルボルダー
三面ボルダーが土砂崩れによってアクセスできなくなってしまったということ

が更新のまるっきり途絶えていた理由です。

三面については、ちょっと管理者に問い合わせたところ
2019年中の道路開通は絶望的
ということで

今シーズンの僕の輝かしい三面ライフは完全に失われてしまった。


とまあ消沈したりなんだりしていたけども

9月はちょっとスケジュール的に余裕が出てきたので

ハイシーズンに向けて
またのんびりと体を岩になじませていこうと思う。

まず第一弾として今日(9/6)は

下仁田ボルダー

下仁田を選んだ理由はまず単純に距離

新潟からだと御岳にいくより1時間ほど早い!

あと優しい課題が多そうだしランディングもよさそう。
(これは同行者の都合)

自分としてもほぼ初めて行く場所だし
(実は以前一回行ったことだけはあるんだけど、台風直後で水没してて泣きながらUターンして帰った思い出だけがある)
初見の課題をたくさん触ってエンジョイする気持ちで行こうと思っていた。

まあゆうてももう9月だし

コンディションもそう悪くないはず!

と意気込んで行ったものの・・・

まーだまだあっっつい!!

日なたでマット広げるともうマットの上は裸足ではとても乗れないくらい熱を持つ。

日陰ではまあまだマシだったので、まずは橋の下から。

橋の下はちょうど昼頃まで良い感じに日陰でになっていて、しばらくそこでだらっと過ごした。

マンナン太郎(初/二段)は登れたものの、
それより右側にある課題の足元が変な感じに水没してて、結局ここで登ったのはそのマンナン太郎と、あと、その左にある5級。
この5級が結構高さも動きもあって面白かった!


マンナン太郎、どうも後で確認するとみんなが登ってるラインと若干ズレがあるっぽいけど…
限定があるってわけでもなさそうだし細けえことはいいんだよ!の精神で行く。
これはこれで面白かったし、岩くらい好きに登らせてくれや!ってことで。

午後になると
タッキートラバース(初段)
の岩の辺りが日陰になっていたので移動。



うっかり1撃してしまったので、動画用に再登。逆光ひどいな。
この後この岩の3級と2級も登ったけど正直タッキートラバース含め全部グレード一緒くらいに感じた。タッキートラバースが易しめなのか他の3~2級がカラいのか…?

その後またちょっと移動して

今度は日野ランジ(初段)


これはぶっちゃけ苦戦した。
やっぱりランジは苦手ですわ。
なんとかスマートな飛び出し方は無いものかとあーだこーだ悩んだ後、上裸になって右手カチ持ちして声出したら行けた。
やっぱランジって気合だわ(確信)

んで、もう結構遅い時間だったけど
「1撃するからもう一個だけ登らせて」
って同行者に許可をとって

道化師(初段)を1撃。
得意な感じだった。
というよりこういうたぐいの課題はミウラーウーマン履いときゃなんとかなる。
上部ヌメヌメで実はかなり怖かった。

その後同行者の、あさイチでやって登れなかった4級課題のリベンジに付き合って(無事完登!エラい!)終了!


あーーーーーーーーーー!

岩!

たのしーーーーーーーー!

やっぱ岩登りって本当に楽しい!

そう再確認した1日。

2019年7月8日月曜日

灼熱の三面

主に雨とか雨とか、ほかにも雨とかによって1か月も岩を触っていなかったけども、

今日(7/8)

久しぶりに三面まで岩を触りに行くことができた。

三面ボルダーのある場所は、
まさにこの間の地震で強く揺れた地域にあり、
その地震がアプローチになにか悪い影響を与えていたりしなかったかと不安だったけど、
まったく問題なかった。

いつも通りの、綺麗な岩場だった。
強いて言うなら草木の背が高くなっていて少しアプローチで煩わしかった。
でもそれもまた自然を感じられて良い。

今日もかなり暑かった。

温度計をうっかり日向に置いていたらなんと40℃になっていた。
日陰でも28℃くらい。

ド灼熱!

なのでほぼ常に上裸でダラダラと過ごした。

誰もいない自然の中で上裸で半日過ごすというただそれだけで楽しいやつね。

その灼熱の中、

登れそうな岩を求めて歩き回り、また二本ほど初登

まずはコレ

プロキシ(1級)

この間初登した「子午線の祀り」の岩の左側のライン


ご覧のとおり、左側に落ちると水にジャボンである。

中盤のガバ地帯はかなり優しいけど、序盤の3手は結構ピリっとしている。

終盤変な方向にすっぽ抜けると入水の可能性も出てくるので緊張感は結構高い。
マントルは(動画では結構迷っているけど)リップ奥にしっかり保持できるホールドがあったので、それさえ発見できればそう難しくない。

恐怖度とかも加味してやっぱり1級くらいが妥当な気がする。


次は結構奥のほうで登れそうな岩を発見したのでそれを登ってみた。

クリーク(2級)

この岩は、シシガミの岩から上流方向に3~4分くらい歩いたところにある。
動画じゃあ隠れているが、ランディングに川が流れていて、小さな岩と岩に橋をかけるような感じでマットを敷かなければならないので、フォールすると結構バランス悪い着地になりちょっと怖い(でもうまくマット配置すればマットが濡れたりすることもないと思う)。

スタートは両腕を自然に開いたくらいの間隔で顕著なポケットホールドがあるのでそれを使用。
ほぼ一手目核心だけど、マントリングがぐいーっと手を伸ばす感じで気持ちいい課題。


他にも登れそうな岩をいくつか触ってみたけど、

簡単すぎて課題とも呼べないようなものだったり、
逆に途中から全然ホールドが見つからなくて登れず仕舞いだったりのものもあった。

初登ってやっぱり難しい。

難しいから、楽しい。

2019年6月4日火曜日

未知のマントル

長い長い閉鎖期間を越え、ようやく

三面ボルダーへのアクセスが解禁された。

今年こそはシシガミを登ろうと意気込んではいるものの、
なんだか最近自信が減衰している。

今日は久々に何の予定もない休日だったので意気揚々を三面に向かった。

三面の何が良いかって、そのロケーション。

緑が濃い。

エリアに行くまでの道中、ただそこをドライブすることだけを目的に行ったっていいとすら思えるような自然の中を行く。

今日は最高に天気が良く、緑が生き生きと映えていた。
こういう風景を普段から見るかどうかだけで人生の充実度って変わるんじゃないかと思う。

しかし暑い。

持って行った温度計を確認するとなんと

気温30℃(しかも日陰で)

灼熱の中、さぞかし岩場は虫の楽園と化しているかと思ったがそうでもなく、
暑いということ以外はそこそこに快適だった。

ともあれこの暑さでシシガミをトライする気にもなれず…

せっかくなのでかねてから登ろうと思っていた未登のラインを触ってみることにした。


この岩。

この岩はキングコングなどがある「ゴリラ岩」のすぐそばにあり(写真右に見えている岩がゴリラ岩の裏面)

写真の面は川に面しているんだけど、ちょうどその真下に、水平に近い形で岩があり、対岸から見るとまるで舞台のような形でランディングを形成してくれている。

なので僕はこの岩を勝手に石舞台岩と呼んでいる。

そのちょうど真ん中に直登できそうな感じにホールドが確認できているので、
いつか登ってみようとは思っていた。

ということで手を付けてみたが、

まあー怖い!

やっぱり初登って難しい。

既登のラインだったらそれは
「登れる」ということが少なくとも確定しているわけで、

でも未登のラインだとひょっとしたらホールドそのものが途中から全然無いかもしれない。リップがまるっきりつるつるで全く持てないかもしれない。

それでも地上からのオブザベを信じて恐る恐るだが手を出していくとなんとかリップまで到達した。

リップにたどり着いた時、リップの奥にまずホールドを探す。
何かカチの一つでも見つかればそいつで引きながらセーフティにトップアウトできるはずだが……何も見当たらず。

ここで降りるということはもう不可能。

仕方なくリップ際でマントルを返す。
先週小川山で優しいグレードのマントルを返しまくった経験が生きて、冷静に返しきることができた。

強度だけで言えばいつも登ってるハイグレードの課題と比べてかなり劣るが、
それよりも緊張感があったし、充実度もハイグレード課題の完登時に劣らない。

何故多くのトップクライマーが初登に拘るのか、その理由の片鱗が少しは見えてきたような気がする。

かの倉上慶大さんがこの動画の中で

「分からない一手を出すっていうのが冒険。分からないってものに挑戦していくのが。その冒険の一手一手をやっていて、いつの間にか岩の上に立っている」

と言っている。

真似できないメンタリティだと思っていたけど、今日の登りはそれに近い感覚を得ることができたように思う。


今回登ったライン。

課題名は「子午線の祀り」
グレードは「1級」



スタートホールドは右手カチ、左手は薄いカチポケット。

結構ガバ多いし、全体的な強度は2級くらいかなーとは思ったけど
出だしが結構悪いのと、あとは高さによる恐怖や危険度も加味して1級が妥当かと思う。

「いつか自分が初登してやったときには思い切り厨二くさい名前つけてやろう」と常々思っていたので、ひとつ夢が叶った。



その後、また岩を移動して3本簡単なラインを初登

幽寂(4級)(読みは ゆうじゃく)
・SD 右手三角形のポケット、左手カチでスタート。そのまま直上。
閑雅(3級)(読みは かんが)
・SD 幽寂と同じスタート。右にトラバースしていき、岩の真ん中あたりをトップアウト。
鳥声(5級)(読みは ちょうせい)
・SD ポケット状のガバスタート。途中からカンテを巻き込みトップアウト。
(カンテを使用せず直上すると4級くらいになる。その場合マントルが結構悪い)

この岩は道路からの急登を下りきると眼前真正面15mくらいのところにすぐ見える岩。
勝手に目の前岩と呼んでいる。

ゴリラ岩に行く前にちょっと寄り道も可能だし、アップ課題として登ってくれる人が出てくれるんじゃないだろうかと期待している。
それと、三面には難しい課題しかないから、という理由でここに来ることを避けていた新潟クライマー達が三面デビューを果たすきっかけの一つとして機能したら嬉しい。

そういう理由もあって、これらの課題を「無名(4級)」とか「カンテ(5級)」とかにはしなかった。

だって、なんか、わかるでしょ?
無名の3級とかより課題名ちゃんとついてる3級とか登れると嬉しかったでしょ?

「あの~小川山の~なんかエイハブ?って岩のちかくにあった小さい岩の~マントル課題の3級のやつ登れました~」
って言うよりも
「塩原の『桜』登れました!」
って言うほうが胸張れるしモチベーションも上がるでしょ。

そんな、ただの名前のない「4級」とか、
いかにも「強いクライマーがただアップか暇つぶしのためになんとなく登りました」みたいな雰囲気じゃん?

だからもう必要以上にカッコつけて厨二くさい名前をつけてやった。


とりあえず今日登った課題はすべて動画を撮影もしているので以下に載せておく。


オンサイト狙いもしてほしいので一応ネタバレ注意ということで。












2019年3月28日木曜日

理想的な皮膚の水分量とは?――あるいはREACTの効能について――

「フリクションにおいて水分は悪である」
「手汗はかかないにこしたことはない」
「乾燥肌であるほど有利である」

クライミングにおいて、どうもそういう情報が多いが、僕自身はそういった説に否定的である。
というのは以前の記事で書いた通りだ。

以前の実験でも立証した通り、
革や木といった素材とホールドとの間においては水分はむしろフリクションを高める要因になる。
それが「人間の皮膚」という材質に限っては例外になるとは考えにくい。

しかし僕を含め多くの人が実感するとおり、過剰な水分はフリクションを弱める。

じゃあどれくらいの水分量がフリクションを生むのに適切なんだろうか?


まずはこんなものを購入してみた。

スキンチェッカー


肌の水分量と皮脂量を測定できる機械だ。


これでまず自分の皮膚の状態を測定してみた。

測定箇所は手の中指の第一関節より上の腹。

余談だけど
今僕の指の状態は結構酷く、
指の先端に近い腹の上半分はケロイドみたいな状態になっていて
その部分ではなんと測定が始まりすらしなかった。
なので測定は指の腹の下半分で行っている。

何度か計測した結果、大体
水分量35%/皮脂量35%
くらいだった。

あれ?意外と水分あるな!
というのがまず第一の感想だった。
自分は意外とそれほど乾燥肌とも言えないのかもしれない、と嬉しくもなった。
(それがぬか喜びだと後に気付くことになるのだが)

そしてふと気になり、
東京粉末REACT

を使用した後に測定を再度行ってみた。
すると

水分量45%/皮脂量24%

という結果に。
水分量が上がり皮脂量が減っている。

脂がフリクションにとって害だろうということは容易に想像できる。
そして適度な水分がフリクションにとって益であると僕は思っている。

ということは
REACTは皮膚をより高フリクションの状態に持っていく効果があると言えるのではないだろうか?


いよいよ気になってきたので、クライミングジム内でいろいろなクライマーに実験に協力してもらった。

実験は
①何もしていない状態で水分量/皮脂量をチェック
(測定箇所は中指の腹。測定タイミングはクライミング前)
②REACTを使用した状態で水分量/皮脂量をチェック
(REACTを4プッシュ程。手をゴシゴシと擦り、手を数十秒振り乾かしたタイミングで測定)

結果は以下の表の通り
(通常状態で、水分量40%未満は青く色づけし、60%以上は黄緑に色づけしている)




まず興味深いのは、
自称乾燥肌であったとしても、
水分量35%なんて低い数値はほとんど居ねーじゃん!ってこと。
「意外と水分あるな!」と思ったのは本当はそんなことは無かったということだ。残念。

そして中には水分量99%という驚きの結果が出ている人もいる。
こういう人こそが生粋のヌメラーと言えよう。

そして多くの人は大体

水分量50%皮脂量20%

くらいの数値に集中したということだ。

実験の際に軽くヒアリングしてみても、
水分量50%皮脂量20%に近い人の多くはフリクションについてあまり大きな悩みを抱えていないことが多く、
それを大きく下回ったり上回ったりしている人はフリクションについての不満を持っていることが多かった。

こうして見てみると、

水分量50%がひとつの基準となり、
それを10%以上下回っているようなら「乾燥手」
それを10%以上上回っているようなら「ヌメリ手」

と言ってしまっても良いのではないだろうか。


さて、
REACTの効能についてだが、見ての通り

水分量50%皮脂量20%付近の人には殆ど数値に変動が無い。

一方

水分量が35%程の人は水分量が増しているし、
水分量が70%以上の人は水分量が減少している。

皮脂量についても、
30%を超えているような場合、REACT後に減少している。

このことから、

REACTは
手の状態を水分量50%皮脂量20%に近づけるような効果があると言えよう。


さて、

今回の実験の結論としては

・水分量50%皮脂量20%が一つの基準値となる。
 (→これくらいが最もフリクションが安定する?)
・REACTは手の状態を水分量50%皮脂量20%に近づける。

の二点が言える。

REACTは極度の乾燥手、極度のヌメリ手の人にとっては、
汚れを落とすという効果以上に、皮膚の水分量皮脂量を正常化させる効果を強く感じられるはずだ。

じゃあ正常な皮膚の人にはREACTは洗浄液以上の効果は齎さないのか?
ということだがそういうこともないだろう。

今回はほぼ全員ジムに入館した直後、クライミングを始める前に計測を行った。
そのタイミングでは50%20%に近かったとしても、
登っているとすぐに水分量が増してしまうというタイプの人もいるだろうし、
登ることで乾燥してしまうという人もいるだろう。
(自称ヌメリ手、乾燥手にもかかわらず数値が50%20%に近かった人たちは恐らくそういったタイプなのだろう)

状態が悪いほうに変化したタイミングでREACTを使用すれば、皮膚の状態を「普段の自分の正常値」に近づけられる。

なので「普段は水分量50%皮脂量20%に近いけど登ると数値が大きく変動してしまう」という人にも恩恵があるはずだ。
(そして恐らく殆どの人がそうだろうと思う)

スキンチェッカーは安いものなら安いので、
フリクションに気を遣うクライマーの皆さんは是非試してみて欲しいと思う。

岩に行って「なんか今日は指の状態が悪いなー」と思ったら水分量をチェックしてみて、
極度に乾燥していたら多めにREACTをプッシュしてみるとか、
かなりヌメってきたと思ったらやはりREACTを使ったりチョークを変えてみたり。

それに、チェックしてみて水分量50%皮脂量20%だったとしたらもう「指の状態悪くて―」という言い訳も自分に出来なくなって必死で頑張ろうという気にもなるだろうし。

この「言い訳の余地を無くす」っていうのは限界を攻める時には結構重要だと思う。

良い結果が出ない時は、指の状態とか、シューズの相性がどうとか、天気がどうとか、
そういう言い訳の余地があるとつい人は失敗の原因をそいつらになすりつけがちだ。
そうするとなんとなく本気を出せなくなる。

僕がフリクションを結構気にするのはそこだ。

本当はそんなに神経質にフリクションがどうこうなんて気にしたくは無い。

でも「出来ないっ!」っていう状況になった時に一番言い訳の逃げ道に使いやすいのがやっぱりフリクション。

だから「フリクションが良い状態」っていうのをきちんと保つ術があるならちゃんとしておきたい。

そうすれば、登れなかった時に、きちんと原因を「自分の実力のせい」にできる。きちんと気持ちよく敗退できる。

まあ、

フリクションが良かろうが悪かろうがそんなものに成功失敗の要因をなすりつけずに、
いつでもきちんと敗退を受け入れる精神を養えればそれが一番良いんだろうけど。

2019年3月9日土曜日

【検証】チョークは本当に滑り止め効果があるのか

この間書いた「チョークについて」

これが思ったより反響があり、何人かの間で意見が交わされていたようなのでちょっとさらに突っ込んで分析してみることにした。

前回の記事で僕は自信満々に
「チョークは滑り止めである」
と断言し、
「チョークは吸湿のみが目的であり滑り止めではない」
という意見を思い切りこき下ろしたわけだけれども、

「チョークは滑り止めである」説も根拠は単に僕の感覚的なものでしかなかった。

僕はもうほとんど前提として、チョークに滑り止め効果があるし、それをほとんどのクライマーが了解しているものだと思っていた。
しかしやはり「チョークは滑り止めではない」と実感を持って発言している方もいる。


じゃあやはりここは実験してみるしかないだろう。

感覚値ではなく、実際値を出してみよう。



僕は生粋の文系人間なのでF=なんちゃらみたいな数式を持ち出して計算したりすることはとてもじゃないができないので、

今回は本当に初歩の初歩、小学生の理科の授業レベルの実験をしてみた。


まず用意したのは

・一辺60mm程度の大きさの立方体の木片。
・革(レザー)
・ゴム

革は一応、仮想人間の皮膚として。
表面と裏面をそれぞれ試してみることにした。
実際の人間の皮膚とはかなり違いがあるけど、それでも多少近いものはあるだろうという期待を込めて。

ゴムはホームセンターで滑り止め用として切り売りしている厚さ1mmのゴムシート。

木片の一面の大きさに合わせてゴムと革を切り、木片に張り付ける。



①何も貼っていない面
②革(表面)が貼ってある面
③革(裏面)が貼ってある面
④ゴムが貼ってある面

がそれぞれ出来上がる。

それぞれの面すべての側面にあたる面にフックを取り付ける。

台座として用意したのはコチラのホールド。


(木片の写真もホールドの写真も濡れているのは実験後に洗ってから撮ったからです)

このホールドの上に木片を置き、引きバネをフックに引っかけ、引っ張る。
バネがどれくらい伸びた時点で木片が動き出すかを計測した。

(木片だけだと軽すぎてバネが伸びるまでもなくあまりにたやすく動いてしまうため、水の入ったペットボトルを重しとして置く)


比較した条件は以下の4パターン。

条件①
何もつけない状態

条件②
チョークをまぶした状態

条件③
ホールドと木片を濡らした状態
(流水で洗うように濡らし、拭いたり乾かしたりしない状態)

条件④
湿った状態にチョークをつけた状態
(条件③の試行直後、さっと余分な水分を拭き取った上でチョークアップ)


結果は以下の通り。


表にまとめるとこうなる。


(動画撮影した以外に、もう2回づつ試行し、3回の試行の平均値を記した)
(それぞれの素材の最高値は黄色、最低値を灰色で塗りつぶしている)

手で引っ張っているので引っ張り角度や速度等が完全に一定ではない上に、肉眼で観測しているので細部の数値まではっきりしないし、誤差はかなりあるだろう。

しかし条件によって明らかに数値に大きな差が出ている。


まず、単純にチョークの有無について。

これはまず木で倍以上の差が出ているのが特筆すべき点だろう。
革(裏面)もかなり数値が変化している。

一方で革(表面)やゴムの場合はほぼ数値に変化が無い。微増といったところ。
これは試行上の誤差と言ってもいいのかもしれない。

しかし、この試行だけでもまず少なくともチョークをつけることで
いくつかの素材の場合大きくフリクションが向上するし、
どの素材でもフリクションが減少することはないということが分かる。
(ソールにチョークを塗るという行為は意味は薄いということはあっても「逆効果」とまでは言えない⁉)

次にチョークを水で洗い流すついでに、
台座のホールド・木片ともに濡れた状態で試行した。

驚くべきことに、革(裏面)はこの状態が最も数値が高くなった。
その他の素材も明らかに乾いた状態よりも数値が高い。

実験前の予想では、木あるいは革に関しては乾いているよりも湿っていたほうがフリクションが向上するかもしれないとは予想していたが、
まさかゴムでも湿っていたほうが数値が高くなるとは思わなかった。

そしてゴムでのみ、湿っていた場合に滑り方が変わるもの興味深い点だろう。
他の試行では一定のラインを超えると弾けるように一気に引っ張られたのに対し、水分+ゴムのパターンでのみ、滑り始めのラインを越えてからも少しづつ滑っていく。
ただこれが一体何を意味するのかというのはこの時点では分からない。
(頭のいいひと誰かこの現象の意味を考えてください)

最後に、湿り+チョークの試行。
革(裏面)以外で、この状態が最も高い数値が出た。
そしてさらに興味深いのが、通常状態ではあれだけ数値にバラつきがあったすべての素材で似たような数値を記録したという点だ。

この結果から、
・「乾燥したチョーク」よりも「水分を吸ったチョーク」のほうがよりフリクションを生んでいる。
・「水分を吸ったチョーク」は元の素材が持つフリクションをある程度無視してほぼ一定のフリクションを発揮させる。
というようなことが言える。


本実験の結果だけを見れば、やはり
「チョークには滑り止め効果がある」
と言えるだろうし、
さらに
「水分はフリクションを強める」
とも言えるだろう。


ただ、今回の実験がそのままクライミングの状況に当てはめられるかといったらそうとも言えない。

・あくまで使用した素材は木や革であって人間の皮膚ではない。
・ゴムもクライミングシューズのソールに使用されるハイテク素材ではない。
・400g程度の荷重しかかかっていない。

という点で、人間がホールディングする状況・クライミングシューズがスメアリングする状況とは異なっている。

もう少し実験の規模を大きくして、もっと素材を厳選して(せめてゴムはビブラムのシートを使うとか)やっていけば結果は変わってくるかもしれない。

そもそも実感として、登っていて「水分のせいで滑る」と感じることは多々ある。
今回の実験結果が全てであるとしてしまうならその実感は無視されることになる。

かかる荷重、接地面積、水分の過多、チョークの過多等によって結果はまた変わってくるだろう。


しかし少なくとも
「チョークの役割は水分を飛ばすだけであって、それ自体にフリクションを生む効果は無い」
という説を否定し、
「チョークは滑り止めである」という説を立証するのには今回の実験は十分な結果と言えるのではないだろうか。

今回の実験をするにあたって、いくつかの予想は当たっていたし、
またいくつかの予想は覆されもした。

やはり個人の経験と感覚などというものは多かれ少なかれ何かしらの間違いを抱えている。

「試してもいないのに分かったつもりになる」
ということがいかに危険かということを再確認したし、少し反省もしている。


ちなみに今回の実験に使用したチョークは「東京粉末BLACK」である。
まさか……BLACKがすごいだけなのか…?

…って冗談みたいに言ったけど、ひょっとしたらそうだという可能性も0じゃないから怖いところだ。


今回の実験をするにあたって参考にした動画がコチラ。


大人になってからすると「理科の実験」って楽しいね。


2019年3月7日木曜日

サイファーについて

サイファームーブが苦手。

といったクライマーは存外多い。

僕も結構そのクチで、始めは感覚的に全然うまく行かなくて、

「ああ、これは俺のタイプに合わない動きなんだ」

と思って全然やらなかった。

でも色々観察やら試案やらを経て、今ではむしろ結構得意なムーブって言えるようになってきた。

そんなわけで、

色々なクライマーを見て思う「サイファームーブとはどのように動くと良いのか」という気付きを少しまとめてみようと思う。

何も
「これがサイファームーブのコツだ!」
「こう動かないとサイファーとは呼べない!」
「必ずこう動くべきだ!」
とまで言うつもりはないが、実感として「こうやったら上手い事ハマったよ」という報告みたいなものとして捉えてほしい。


・足の振り方の誤解

サイファーが苦手と言うクライマーは

「サイファーってどんなムーブ?」

という問いに対して

「足を振り子のように左右に振ってその勢いで跳ぶムーブ」

という認識を持っていることが多い。

これが完全に間違いだと言うつもりはないが、この認識がサイファーという動きを見よう見まねで実行しようとしたときに全然上手くいかないという体験をさせる大きな原因の一つなんじゃないかと思う。

まず一つ目のキーワードは「左右に振る」

登っている姿を後ろから何となく見ると確かに壁に対して左右に足が振られているように見える。

しかし【体の向き】に対して考えた時、本当に足は左右に振られているのだろうか?

これはほとんど断言できることだが、
上手に安定したサイファームーブを起こしているクライマーは足を体に対して左右に振ってはいない。

足は体(骨盤の角度)に対して前後に振っている。

ちょっと地面に立って足を振ってみて欲しい。
軸足の後で足を左右に振ってみても、とても安定などしないし、全然力強く振ることができない。

軸足の横で足を前後に振ると、とても安定して力強く振ることができる。



【足は身体に対して左右に振らずに前後に振りましょう】

これがまず今回言いたい結論の一つ。


二つめのキーワードは「振り子」

振り子という物には「関節」が存在しない。
紐だったり棒だったり、それ自体は自発的に動いたりしないものを重力と慣性の力で行ったり来たりさせる機構である。

その振り子のようなイメージをして足を振ろうとすると、当然股関節より下の関節の可動のコントロールを放棄して、脱力したような感じで振ろうとしてしまう。

じゃあ地面の上で足をすべて脱力して前後に振ってみて欲しい。
決して体が上に持ち上がるような力は生じないはずだ。
ただ前後に体が引っ張られて安定性を欠くだけである。

足の振りで体を上に持ち上げるには、振り子の慣性の力だけでなく、筋力を使って足を強く振り上げる必要がある。

ここで大切なのは膝。

腹筋や背筋、腿以下の筋力を使い足を振り、
振った足の軌道が上向きに移行する辺りで膝をぐっと使ってその軌道をさらに上方向に修正してやることで、足の振りが体を持ち上げるための力として有効に利用できる。

足を振るイメージとして適切なのは「振り子」ではなく、

自分のへその前50cmくらいの位置にボールがあって、それを思い切り上に蹴り上げるようなイメージがいいかもしれない。

実際に地面の上でしっかり強く足を振り、タイミングよく膝を動かすと、軸足を動かさなくてもそれだけで少し体が浮く。

これをそのまま壁の上で行いましょうということ。



・壁と体の間の空間はどうなっているか

かなり昔に書いた通り(今読み返すとかなり粗い理屈でおかしいところも多々あるけど大筋の意見は変わっていない)、
ダイナミックムーブを起こす際大切なのは、壁と体の間の空間を意識することだ。

以前の記事では基本的に「動きだし前に壁と体に空間を開け、動き終わりに壁と体の間の空間が小さくなっているように動く」
というふうな趣旨だった。
(というかこの時って全部敬語で書いてる……いつからこのブログ敬語で書かなくなったんだっけ……)

サイファーで動く際も勿論その考え方は重要で、そしてさらにその空間の形についてもう少し複雑に(複雑ってほど複雑じゃないけど)考える必要がある。


まず、前項で【足を前後に振る】と書かれているのを読んだ時点で異論を述べたくなった方はいないだろうか?

「そんなふうに振ったら足が壁を蹴っちゃうじゃん!」と。

そう。
それは実に全うな考えで、なのでそうならないために、足を振る時には身体(少なくとも腰より下)を壁に対して横に向ける必要がある。

壁と腰が平行に向かい合っていては足は振れず、その状態で足を振ったとしてもそれは左右に足を振っていることになり、不安定で力の無い足振りになってしまう。
左右に足を振ることのデメリットは実は不安定で力が弱いだけでなく、もっと致命的なデメリットとして、「腰を壁から遠ざけてしまう」というものになる。

足を左右に振ろうとすると、振っている足は体の後方で楕円を描く様な軌道で戻ってくる。
その際、振った足が腰を後方に引っ張るような力が生じることになる。



もし足を左右に振って勢いをつけて次のホールドに届いたとしても、そのホールドは腰が後ろに引っ張られながら掴むことになり、非常に難しいタイミングと力が要求されてしまう。

足を前後に振るためには、
振る足のほうの腰を壁から遠ざけ、壁と腰に角度をつける。

つまり体の前面は壁ではなく次にとるホールド方向を向く。



この時、壁と体の間の空間は変形された形をとることになる。

両手両足をついて真上に出るようなムーブを起こす場合は、
なるべくきれいな四角形(台形)の空間を作って、素直にそれを潰すようなイメージで出て行けばいい。



しかし体を横に向けた場合、
壁と体の間の台形の空間は三角形に近い形に歪むことになる。

そして勿論次のホールドを取った時にはこの空間は潰れていなければならない。



そのためにはムーブの途中に半身をひねる必要がある。

これはドアをイメージすると分かり易いと思う。

残すほうの手を蝶番、体そのものがドアであると見立てて、
動きだしの前に大きくドアを開き、ドアを閉じながら動き、動き終わりにはドアは閉まっている。
そういうイメージ。

足の軌道も腰の捻転に併せて少し変化することになる。
最終的には足の軌道は壁と並行ではなく少し壁に向かっていくような軌道になる。
いや、腰の捻転に併せてというよりは足の軌道を壁に向かわせることで腰の捻転を生じさせるという順序になるのか?
まあとにかく振り上げきった瞬間にはつま先や膝頭の向きは壁の方向を向いているはずである。



このように、三角形に近い形の空間を作り、その空間を潰しながら動くことで、
取りに行く方の手、肩、腰が、壁に向かっていきながら次のホールドをキャッチする事ができる。

動き出し前の壁と体の間の空間が偏りの無い四角形の場合、なんとなく足が振りにくいはず。
そして空間の三角形の向きが逆の場合(出す方の肩が壁に近くて残す方の肩が壁から遠い状態)全然サイファーでは上手く飛び出せないはずだ。


・視線の動きと頸反射

頸反射という単語を聞いたことがあるだろうか?
これはごく簡単に言うと
首の動きに反応して体の他の部分が連動的に動くような現象のこと。

神経系の働きによるものらしいけども、詳しいメカニズムは良くわからない(笑

以前、ランジについて書いた時に
「残した方の手を見ると止まる」といった趣旨のことを書いたけれど、これも実は頸反射の一種なんじゃないかと思う。

今回言いたいこともまさに「残した方の手を見る」ということで(というか大体のムーブにおいてこの視線移動は正義だよなあ)

前項での腰の捻転の動きについてを言葉にすると、結構な長文になっているし、なんだか複雑そうでよくわからないと思う方も多いはず。

しかしこの視線移動による頸反射の利用によってあまり難しく考えずに動き出し前の空間作りと、動きの中での腰の捻転を生むことができる。

まず、動き出し前
単純に目標のホールドに顔をしっかり向けてよく見る。この時、少し頭を後ろに反らしてもいい。
すると自然に肩も目標方向に開き、そこで腕を伸ばして体を後ろに引けば三角形に近い空間が自然と開くはずだ。

次に、
体を振って飛び出して、目標のホールドを取る直前には残した方の手に振り返る。
この意識を強く持っていれば、ムーブの途中に「首が振り向く」という動作が必ず内包される。
そしてこの「首が振り向く」という動作に連動して肩が回転し、腰も回転する。

このように、ただ視線の方向を意識して移動させるだけで、体も自然とそれに併せて動いてくれるはずだ。

勿論、この視線だけでゼロからすべてが解決するわけではないが、
「概ねフォームはできているはずなのに上手くいかない」
「ホールドには届いているのに掴めずに落ちる」
くらいの段階に居る場合、あとはこの視線だけを意識すれば簡単に上手く行ったりすることは多いと思う。


長々と理屈っぽく書いたので
「いや、わけわかんないよ!」
「そんな理屈とかどうでもいいよ!」
「もっとわかりやすく一言で!」

そんな風に思う人も多いと思うのでなるべく短く要点をまとめると

①まず体ごと目標ホールドのほう向いてよく見ましょう
②足を前後に強く振りましょう
③動き終わりの辺りで振り向いて残した方の手を見ましょう

このへんを意識するだけでサイファーが結構サマになってくるんじゃないかと思う。



・最後に

今回の記事を書くにあたって何度も観た動画がコチラ

プロクライマーCarlo Traversiがピョンピョン跳ぶ楽しげな動画です。

まず注目して欲しいのは1:15くらいの、
黒板になんか書いてる後ろで、カルロが足振って跳んでいるところ。
この振りかた!
この跳びかた!
これをやりましょう!
っていうことを理屈ったらしく長々書いているのがはじめに書いている
【・足の振り方の誤解】
感覚派の方はもうこんなん読んでないでそこを観て下さい。

次に観て欲しいのは1:26~1:37くらい
遠いランジを一度失敗して、足の振りを確認してからもう一度跳んで成功させるシーン。
(失敗シーンは演出上意図的にやっているんだろうけど)

失敗シーンは、足も良く振れているし、腕も良く引けているけど、右半身が全然壁に向かって捻転していっていないのが分かる。

成功シーンは、右半身がギュルって感じで捻転して壁に向かっている。
足を左に振りきっている瞬間、腰は壁に垂直くらいまで開いているのに、右手を離した瞬間くらいには腰の角度は壁と並行まで閉じられているのが分かる。



そして止めた時には視線は左下。そうすることで右肩のポジションが右手のホールドの下にしっかり入って振られないぶら下がり姿勢を実現している。

2:05~の横からのアングルを観ればいかに右腰が開かれているかと、振っている足のつま先の向き、膝の向きがどう変化しているかが分かり易い。


結局のところ百聞は一見に如かず。
上手い人の登りを見て学ぶほうが文章を読むよりもよっぽど分かり易い。

でも、
「上手い人は上手いからできるんでしょ?」
「強いから遠くまでとべるってだけでしょ?」
「保持力が違うから…」
そんな風に言って

「強い人は強い人、自分は自分」

みたいな感じで他者の登りから学ぼうとしない姿勢では、いくら上手い人の登りを見てもなにも学びとれることはない。

サイファーだったら

「なんか強い人が足を横に振って跳んでた!カッコいいからまねしたろ!」

くらいの気分でなんとなく真似して(それはそれで良いことだと思う)
で、出来なくて、

「ああーアレは強い人専用ムーブだわー。弱い俺には出来ないやつだわー」

ってなってゆくゆくは

「サイファー苦手です」

みたいに言うんじゃなくて、
なんとなくカタチだけそれっぽく真似しようとせず、もっとよく見て、

【どういうフォームでやればいいのか】
【そのフォームにはどういう意味があるのか】

ということを観察して、考えたりすること。
あとは手本となる上手い人に聞いたり、仲間と技術的なことについて話し合ったりすること。

そういうことが結局一番大切なんだと思う。

身体的に強くなるってことには、年齢だったり骨格や体質だったりでなにかしら限界はあるかもしれないけど
技術的なことは「上手くなろう」という意思さえあれば誰でもいくらでも上手くなれるはずだから。

でもこの「上手くなろう」という意思を持ち続けるっていうのもまた難しい話で……

まあそのあたりの話はまた別の機会に。

2019年3月5日火曜日

続・チョークについて

ちょっと前回の記事を書いてから一晩経ってまた思う事があったので、
補足として少し書く。


チョークに滑り止め機能はある、という説の反証として、

①「クライミングシューズのソールにチョークを塗るとかえって滑りやすい」
②「ホールドにチョークが乗りすぎているとかえって滑りやすい」

という例が挙げられると思う。

①について

これは単純に「クライミングシューズのソールのフリクションがチョークのそれより優れている」という仮説が立てられる。

例えば
ステルスHFとホールドの間の摩擦力を評価100として
チョークと皮膚の間の摩擦力が評価70くらい
ホールドとチョークの間の摩擦力が評価70くらい
皮膚とホールドが直接だと摩擦力が評価50くらい

みたいな。

すごく雑にまとめると

フリクションの強さがそれぞれ

ソール・ホールド間>皮膚・チョーク・ホールド間>皮膚・ホールド間

の順に並んでしまうってことなんじゃないだろうか?

故に、ソールにチョークを塗ってしまうと100が70になるので「かえって滑りやすい」という説に繋がる。

そして「ソールにチョークを塗った方がフリクションが増す時がある」という説も同時に存在する。

これは例えばビブラムXSEdgeやステルスオニキス等、元々フリクション性能に特化していない種類のソールであったりが、
さらに気温等の条件によってソール・ホールド間のフリクションの値がチョーク・ホールド間のフリクションの値を下回ってしまう時に言えることなんじゃないだろうか?


皮膚の状態というのも個人差や状況差によって一定でない。

場合によっては、皮膚・ホールド間のフリクションがチョーク・ホールド間のフリクションを上回ることもまたあるかもしれない。

僕の乏しい経験からになるからあまりはっきりとは言えないが、

「チョークを手につけるとかえって滑りやすい」

という発言を最もよく聞くのが小学生くらいの子供からだ。

触ってみると、小学生くらいの手の肌はしっとりとしていて柔らかく、それでいて手汗を過剰にかいたりしない。

前の記事で言ったフリクションを得るための「適切な水分量」にかなり近い状態を保ち続けやすいのではないだろうかと思う。

そのようなフリクション的に理想的な皮膚の場合は、フリクションの関係が、皮膚・ホールド間>チョーク・ホールド間になることもありそうだ。

しかし、手の状態というのは生きているが故に変動が激しい。

登り始めには理想的柔らかさ+「適切な水分量」によって100の摩擦力があっても、発汗等の要因によってそれが50くらいまで変化することはあるだろう。

しかしチョークを用いれば常に70近くの摩擦的評価を得続けることができる。

高い水準でフリクションを安定させ続けやすい、というのがチョークの利点なんではないだろうか。



②について。

これはまあ単純に「適量」があるということだろう。

いい具合に、ホールド―チョーク―皮膚、とチョークの粒子の凹凸がホールドと皮膚を繋ぎ合わせるような量であればフリクションは増すだろうし、
チョークの粒子が堆積するくらいになってしまっていると、その堆積したチョークが崩壊するような感じで滑っていくんじゃないかと思う。

ブロックチョークの表面を強く撫でると表面は削れていく。
削れていくから撫でる指は滑って行く。

過度にチョークが堆積したホールドの表面はそのブロックチョークのような状態に近くなっていると言える。
しかもしっかりと形成したわけでもないのでブロックチョークよりもさらにその堆積は崩壊しやすいはずだ。

イメージ的にはこんな感じ。

なので過度にチョークが堆積したホールドを持つと滑りやすいという現象は、
「チョークが滑っている」というよりは「積もったチョークがズレている」というような表現が適切なんじゃないかと思う。(まあ結果的には同じなわけだけども)


以上、

前回の記事の補足としての考えをちょこっとまとめてみた。


まあ相変わらずこれらはただの経験則で(いや、経験則というのもおこがましいか)
なんら正確な実験やら数値的な計測を行ったものではない。

だから間違った解釈や的外れな考察を多分に含んでいるだろうし、
どこまで行っても「~と思う」以上は言えない。


でも「こんな考え方がある」と他のクライマーの方々に伝えて、

誰もが思考停止的に「チョークって実は滑り止めじゃないんだぜ」って言い続ける状況を変えたい。

そして、「チョークは滑り止めである説」の反証として
しっかりとした実験や論拠に基づいて
「やっぱりチョーク自体に滑り止めとしての機能は無い」
ということが立証されるのならば、

それはそれでクライミングにおけるフリクション問題を前進させる切っ掛けになれるんじゃないかと期待している。

2019年3月4日月曜日

チョークについて

最近チョークにとって思うことが色々とある。

なんとなく思うこと、声高に叫びたいこと、やってみたこと……

様々あるのでちょっと書いてみる。


①チョークは滑り止めである

チョークは滑り止めである。

クライミングにチョークをしっかりと使っていて、チョークについてきちんと考えている人はこれに異論を唱える人はほとんど居ないと思う。

しかし、驚くべきことに

Googleで「チョーク 滑り止め」で検索すると、様々な記事が現れてくるが、それのほとんど(もう本当にうんざりするくらいほとんどの記事に)にまず「チョークは実は滑り止めではない」というような旨のことが書いてある。

トップに出てくるのは

その記事の冒頭にはこう書いてある。
  • 実は、チョークの主成分である炭酸マグネシウム自体は滑り止めではありません。例えば、滑りやすい路面に炭酸マグネシウムをまき、その上を歩いたら、逆に滑りやすくなるほどです。 では、なぜチョークを使うのかというと、炭酸マグネシウムは吸水性に優れるから。つまり、手から出る汗を炭酸マグネシウムが吸い取ることで、手指が汗で滑ってホールドから落ちるのを防ぐ役割を果たしているのです。

はい。

恐るべきことはこれが記載されているのはアマチュアの個人ブログなんかじゃないということ。

CLIMBING-netという日本で恐らく最大のクライミングポータルサイトが公式に
「クライミング用チョークの基礎知識」として、

チョークが滑り止めだと思っているのは初心者の抱える誤解であり、本当はチョークに滑り止めとしての効果なんてないんですよと発信している

その他、どこかのジムのブログから個人のブログに至るまで、チョークについて扱っている様々な記事のほとんどはまず似たような冒頭から入っている。

チョークは実は滑り止めなんかじゃないんですよ

と。

?????

例えば、滑りやすい路面に炭酸マグネシウムをまき、その上を歩いたら、逆に滑りやすくなるほどです。」 

いやいやいやいや。

そんなん路面に何かしらの粉を大量に撒いたらそれがどんな性質の粉だろうとそりゃ滑りやすくなるわ。ステルスMi6のコンパウンドだって大量に撒けば滑るわ。

本当に検証してるんだろうか?

きちんと、人間の皮膚と岩(あるいは人工ホールド)との間で、適量のチョークの有無によってフリクションが増減するのか。
それは水分の多寡によるものなのか。
そういったことを検証した上での発言なのだろうか?

もししっかり検証していたのだったら申し訳ない。

しかし、実感として、チョークが滑り止めではないという意見に対しては大声でNO!と叫びたい。

僕は超がつくほどの乾燥肌だ。

指先は老婆の踵のように角質化し、ひび割れ、ケロイド状に近い質感になっている。

手指に水分油分はほとんど無く、本のページもうまくめくれなければ紙幣を素早く数えることもできない。

チョークには実は滑り止め効果は無く、むしろ滑りやすくなる原因になり、にも拘わらずチョークを付けるのは手から水分を失わせるという目的があるからなのだとしたら、僕はチョークを付けるメリットが全くないことになる。

しかし実際、僕はチョークを付けないとほとんどホールドを保持することができない。

スローパー系のホールドなんてノーチョークでは全く持てない。

しかし、チョークをきちんとつけたとたんにピタっと止まり始める。

プラシーボ効果?
いやいや、さすがにそんなレベルじゃなく差が出ている。

乾燥肌とはいえ僅かに油分や水分が手のひらにあって、それをチョークが吸っているからフリクションが増している?

その仮説に対する反証のため、手をしっかり洗って皮脂を落とし、しっかり乾かした後、アルコールを刷り込み水分を完全に飛ばした状態でホールドを持ってみた。

全く何もしない状態に比べれば僅かにフリクションは増した感はあるが、それでもチョークを付けた状態から比べればまったく誤差のレベルだった。

もし、乾燥肌の手をさらにアルコールで乾燥させた状態でもまだ水分が取り切れなくて、その僅かな水分があるだけでもホールドは保持できなくて、その僅かな水分をチョークは取り去ってくれている、というんならチョークってのは一体どんな恐ろしい物質だと言うんだ……。

まあもういいや。

とにかく、言いたいことは、チョークそのものに皮膚とホールドの間のフリクションを増す効果は確かにあるということだ。



②水分=悪なのか?

そもそもフリクションにおいて
水分=悪なのか?

これは僕が乾燥肌だから特に感じることなのかもしれないが、この答えについても断じてNO!だ。

チョークにも適量があるように、水分にも適量があるというだけの話だと思う。

僕はスーパーの袋を開けるのが大の苦手だ。
ぜんっぜんビニールと指の間にフリクションが生じない。

大体のスーパーには袋詰めスペースに水を含ませた布巾を置いてあったりする。
その布巾で指を湿らせるとビニールと指の間にフリクションが生じ、ビニール袋をやっと開けることができる。

「そりゃビニールの話じゃん。ホールドの話じゃないじゃん」

と思われるかもしれないが、ビニール以外の素材についても、軒並みいろんな物とのフリクションを確かめてみると、やはりある程度水分があったほうがフリクションが増す。

クライミングホールドについても、ノーチョークという縛りで行くんなら、手を水の中にある程度の時間浸けて、指皮が水分を含んだ後、軽く水を拭いて半乾きくらいの状態でホールドを保持した時が一番フリクションを感じる。

じゃあ水分はフリクションを生む善なる存在なのか?
もちろんそういうわけでもない。

僕も乾燥肌とはいえさすがに夏場などでは手がヌメるということもある。
一定のところまでは水分があってくれたほうがフリクションは良い感触があるが、そこを超えると今度は水分が原因で滑ってくる感覚がある。

ホールドと指の間に高いフリクションを生じさせるための「適切な水分量」というものが確かにある。(それはホールドの材質や形状などによって異なるだろうが)

イメージとしてはこんな感じ
このなんちゃってグラフはあくまでなんとなく僕が感じるイメージであり、実際はこのような綺麗な曲線を描くということも無いだろうし、フリクションが頂点となる適切な水分量というのが数値的にどれくらいのものなのかというのは正直全く分からない。

でもイメージとしてはそんなに的外れじゃないんじゃないかと思う。


③乾き手とヌメり手はどっちが良いの?

これも僕が乾き手なので、乾き手側の主観と偏見を多分に含んだ意見にはなるんだけども、まあ思うことを書いていきたい。
(なにせこれはアマチュアクライマーのただの個人的なブログでしかないからだ)

前項でまず「適切な水分量」があるというようなことを書いたが、

まず乾き手のクライマーは初期でその「適切な水分量」が無い。
むしろヌメり手クライマーは初期に「適切な水分量」に近い状態に近いと思う。

しかし登り始めて手数が進むにつれ、ヌメり手クライマーは「適切な水分量」から遠ざかり、乾き手クライマーは徐々に「適切な水分量」に近付いていくということが言えるのかもしれない。

ヌメり手クライマーが「適切な水分量」から遠ざかるのを防ぐためにチョークの「吸水性」が活躍するし、乾き手クライマーが「適切な水分量」を持たない段階でフリクションをサポートするためにチョークそのもののフリクションが作用してくれる面があるんじゃないだろうか。

これは暴論かもしれないが、ヌメり手と乾き手のクライマーはそれぞれチョークの持つ別々の特性を利用しているという側面もあるのではないだろうか?

故に、乾き手のクライマーは、吸水性はイマイチだが、粒子のサイズや形状によってフリクションを生みやすいチョークを必要とするはずだし、ヌメり手のクライマーはチョーク自体がフリクションをそう生じなくても、吸水性に優れたチョークを必要とするんではないだろうか?

これは余談だが「東京粉末BOOST」

これは物凄くかみ砕いて言ってしまえば「乾き手のクライマーがヌメり手クライマーの利点を手に入れるための道具」だと個人的には解釈している。(まあ勿論そういうコンセプトで作られていると言われているわけじゃないし、実際にもっと奥深い効果があるんだろうと思う)

乾き手の自分がBOOSTを使用すると、直後に良い感じに皮膚に水分を感じ、フリクションのための「適切な水分量」になっているという感覚を得る。
「ヌメり手の人って登り始めの段階ではこんな感じのフリクションを持ってるんじゃない?」
そんな感触を勝手に想像する。
そして僕は乾き手なわけだから、そこから手数が進むにつれ過度に水分が出すぎるということもない。

またなんちゃってグラフになるんだけど
こんなイメージなる。
登り始めのスタート直後はやっぱりヌメり手の人が有利なんじゃないか?という乾き手クライマーの嫉妬みたいなものがにじみ出たイメージになってしまっているけども

もう一度言いますがあくまでイメージです
(そもそも乾き手とかヌメり手とかも綺麗に二分できるわけじゃないし、もっと右側からスタートするびっちゃびちゃの手の人も居るだろうし、程度の違いを言い出したら出発点の水分量なんてみんな違うしね)

まあでもこのイメージなんちゃってグラフでもやっぱり乾き手+BOOSTが最強なんじゃないかと思わされる。
次点でちゃんとチョークを使ったヌメり手。

で、BOOST抜きにしても手数の多いルートに関してはやっぱり乾き手のほうが有利になるんじゃないかと思う(途中でチョークアップをしないという条件に限り)。

でも7手以内くらいで完結するボルダー課題で、かつハリボテボリューム多様のフリクション勝負の課題の場合はヌメり手のほうが結構強いんじゃないかと思う。


④今まで使ったチョークについて

理屈っぽい話はこれくらいにして、
実際に今まで自分が使ってきたチョークについてちょっと触れていこうと思う。

前述のとおり僕は乾き手で、そんな僕の主観的な意見・感想をそれぞれだらっと述べていきたい。


CAMP チャンキーチョーク
僕が最初に「こりゃいいや!」と思ったチョーク。
これ以前に使っていたチョークは正直何を使っていたか覚えていない(笑)

チャンキーを指で押しつぶすようにして指に刷り込むと僕の乾燥肌に対してもしっかり吸い付いてくれる感じがある。


東京粉末 EFFECT

昔、誰かのチョークバッグの中から良い匂いがしたのをきっかけで出会った。
その良い匂いがカッコいい!という思いだけで購入するも、コレがまたフリクションという意味でもCAMPを超える噛み合いを見せ、しばらくこればっかり使っていた。


東京粉末 BLACK
現在の自分の主力チョーク。
EFFECTの良さにすっかり惚れこんでいたが、それを超えるBLACKが出る!という発売当時の話題性に負けてホイホイ購入。
EFFECTに比べて抜群に良いぜ!ってほどの違いは感じないが、やはり気持ちこちらのほうが安定する気がしているのでやはりこちらを愛用している。
なんとなくしっとりとしている感触で、乾燥肌に対しても弾かずにくっついてくれる。



フリクションラボ GORILLA GRIP
岩で使える!と評判だったので購入。
結論から言うとあまり自分には合わなかった。
悪いというわけではないが東京粉末と比べると今一つ合わない。
なんというか、指にあまり馴染まないような感触。乾燥しすぎているのかも?
ヌメり手の人のほうがこのチョークは合うんじゃないだろうか?


USAMIX  ザチョーク
これは確か貰い物で使ってみたんだけど、これもしっとり系で良い感じ。
コスパも良いし、主戦力にしてもいいかなーとも思ったけどやはり東京粉末BLACKのほうがなんとなく安定感あるかなー、というところ。
東京粉末が無かったらコイツが主力になっていた可能性もあった。


フリクションラボ シークレットスタッフ
これもネットの評判で購入。
何故か特定のホールドに対しては粉チョークを上回る抜群のフリクションを発揮した(LapisのBallsシリーズだったかな?)。
ポリウレタン系でなくポリエステル系の人工ホールドに対して相性が良かった。
自然岩にしても岩質によってはコイツが抜群に効くものがあったのかもしれない。
そういったバリエーションを試す前に無くなってしまった(それでも2本は使い切った)。
色々可能性は感じたものの。コストパフォーマンス面と、安定性の面からもう使わなくてもいいかなーと思っている。


ペツル POWER LIQUID
貰いもので使ったのが最初。
ロジンが多量に含まれているのでジムでしか使えない。
ロジンの威力はすさまじく、何課題か登っても全然チョークが落ちることが無い。
これは凄い。フリクションがめちゃくちゃ持続するじゃん!と思ったのは始めだけで、チョークが残っている=フリクションが残っているわけではないということに途中で気づく。
そしてロジンと自分の肌の相性がそんなに良くないらしく、かえってロジンによってフリクションが失われるような感触があるときすらあった。
やはりフリクションを感じるときとそうでない時の安定感に欠けること、そもそもロジンを使うということに対する若干の嫌悪感、それらにより使用しなくなった。


PD9
うーん、合わなかった。
岩でも人口壁でもとにかく良いと思うことがほとんど無かった。
期待度を下げて「どうせ止まんねーや」と思いながら使ったら「お⁉意外と効くぞ」と思ったこともあったが、その後同じホールドを普通にチョークアップして触ったらもっと持てたのでやっぱり粉チョークを普通に使ったほうが持てる。
粉チョークの下地としてなら使ってもいいかとは思うが、これを下地として使ったからさらにフリクションがかなり上がったということも無かった。
これもヌメり手の人にとっては結構良かったりするんだろうか。



⑤液体チョークづくり

今日び、あまり「液体チョーク縛り」のジムっていうのもそんなにないけれど、
今の自分の所属ジムがなんと液体チョーク縛り。

始めはかなり煩わしいと思っていたけど住めば都、慣れればそんなに気にならない。

しかしまあ既成の液体チョークにあんまり合うのが見つからない。
人のを試してみたりちょっと買って試してみたりと色々やったがやはり東京粉末BLACKを粉で使った時の噛み合いに及ぶものが無い。

ということで、

作ってみることにした

東京粉末BLACK LIQUID

作り方自体にはそう試行錯誤は無い。

粉末のBLACKに、75%エタノール製剤を混ぜるだけ。

この75%エタノール製剤、本当は無水エタノールに精製水を混ぜて自分でいい具合に配合するのが純粋でいいんだろうけど手間がかかるのが嫌なので、使用したのは「マイアルファ75」

問題は入れる容器。

自分的にコレは良い!と思ったのは
ダイソー等の100円ショップで売っている
「はちみつボトル」
こんな感じのやつ。
これに粉末を満タンになるまで入れ、マイアルファをすこしづつ入れていく。

長い棒を突っ込んでぐりぐりとかき回しながら泥のような見た目になるまでマイアルファを足していく。

そこからはお好み。

本当に液体のようなシャバシャバにしたいならもっとマイアルファを足せばいい。
僕は泥くらいの感じが良いと思った(乾くまでの時間が短縮される。なんか指に深く刷り込める感じがする)のであまりシャバシャバにならない程度にしておく。

で、最後の仕上げに蓋をしっかり占めてからガッシガッシに振る。

完成。

粉末満タンくらいから作る始めるとこの時点でボトル半分くらいの液チョーが出来上がっていると思う。

使う時もはちみつボトルが優秀で、泥状くらいに仕上げた場合、容器を軽く押すと歯磨き粉みたいな感じでちょうど良く出てきてくれるし、蓋の密閉性も意外と高く、品質の劣化もそんなに早くない。

お勧めです。はちみつボトル。

やっぱり液体(というか泥状)にしてもBLACKは良い。
僕の肌に対してあきらかに市販の液体チョークと比べて一線を画す噛み合いっぷりを見せる。

まあ、液体チョーク限定のジムで登りでもしないかぎりわざわざこんな風に手作り液体チョークをつくる必要なんて無いだろうけど、もし作りたいと思っている人がいたらちょっとは参考になったら幸いです。



以上!



2019年2月20日水曜日

馬脚を露す


マジでカランバが登れない。

いい加減自分の弱さにうんざりしてくる。

正直、心のどこかでカランバが登れないのはあまりにも寒い環境のせいだと思っていた。

しかし今日(2/20)はかなり暖かかった。

気温は正午時点で16℃。

寒すぎもせず暑すぎもしない、まさにベストコンディション。

にも拘わらず、今日も登ることができなかった。


・・・

やはり今まで僕は自分の実力を誤魔化し続けすぎたということだろう。

「打ち込み系クライマー」とか言ってしまえば、
なにかしらのポリシーだとかスタイルとして確立されているかのように聞こえるが、
結局は自分の根本的なレベルアップをおろそかにして、課題を打ち込んで自動化することで適応させて登ってきただけにすぎない。

本来の自分の実力を本当に伸ばすことをせずに、ゴムを引っ張るように無理やりその時だけ伸びたように見せかけて誤魔化していた。

手数の短い課題や、フィジカルよりも技術寄りというか、その課題そのムーブのコツを掴むことが大切なタイプの課題ならそれで登ることができていた。

しかし、カランバのような手数の多いルーフ課題ではとうとうその誤魔化しが効かなくなってきたと言えるだろう。

本来の自分のフィジカル不足、保持力の偏り、足使いの稚拙さ、ボディコントロール力の欠如、空中感覚の鈍さ、持久力の弱さ、そういったものが分かりやすく露呈し、自己に突き付けられているのがわかる。


根本的にレベルアップが必要だ。

課題に自分を適応させるだけじゃもうこの先は無い。

自覚している具体的な弱点と、それを克服するために必要な方法は既にいくつか分かっている。

まずはそれをやろう。


そしてレベルアップするまではカランバを触るのはいったん辞めよう

……とはならないんだよなあ。

やっぱりレベルアップのためのトレーニングと並行して打ち込みも続けたい。

課題に敗退することそのものがトレーニングのモチベーションにもなるし、岩に触れることでしか、その課題に触れることでしか得られないものもある。

というか単純に、そういった一時退却みたいなのが性に合わない。

トレーニング積んで、レベルアップして、圧倒的な力を身に着けてから、颯爽と鼻歌交じりにカッコよく登る。

それも良いのかもしれないけど、

やっぱり僕はカッコ悪く、歯ぎしりしながら、負け続けながら挑戦し続けたい。



と、

なんか締めた感じになったけど、やっぱりカランバに敗退し続けていい加減気分が滅入って来たので、今日はカランバを打ち込んだ後帰る前に気分転換にコプリスを登った。



初めてコプリス側から野立岩をトップアウトしたけど、やっぱり怖かった。
「もう落ちられない」って部分から先はグレードで言えば多分6級か7級くらい?だと感じたし、まあ10回やれば10回確実に落ちずに登れるんだろうけど、100回やれば、コンディションや精神状態によっては1回くらいは足を滑らせたって不思議じゃないわけだし。

こういう「難しさ」の外にある面白さっていうのはやっぱり岩ならではだなって思う。
ジムじゃ6級に緊張することなんてまず無いけど。これはトップアウトを確実にして最後に立ち上がる瞬間までしっかり緊張感あったからなあ。


2019年1月28日月曜日

漫画の話

(今回はマジでクライミング全く関係無い内容です)

本当に岩に行けてない。

原因は自堕落なメンタルと天気と距離とスケジュールと体力と……

まあ一番大きな要因はやっぱり天気。

2月になればもう少し暖かくなるだろうからそうしたらもう少し気軽に行ける。
はず。

で、

じゃあ岩に行かないで休日何してんのかって言いうと、

そりゃーー漫画読んでます。

電子書籍って便利やね。
家から一歩も出ずに、そしてマイナーな漫画も苦労して本屋を梯子したり取り寄せしたりせずにポンっと買うことができる。

以前は「やっぱり本は紙で読まないと!」と電子否定派だったけど、
この便利さには勝てなかったよ…


そんなこんなで、

ここ最近に読んだ漫画について色々書いていきます。

そう

暇なんです。

今日も塩原に行こうと思ってたけど天候の問題とか微妙なスケジューリングの都合で半端に暇なんです。

暇つぶしのために書きます。

題して

『最近読んだちょっとマイナーだけど面白い漫画』


「オーイ!とんぼ」

既刊1~15巻(以下続刊)

『ゴルフ漫画』って実は結構好き。
小学生の頃読んだ「ライジングインパクト」みたいなトンデモ設定も好きだったし「空の昴」も「KING GOLF」も面白い。「黄金のラフ」も良かったし「風の大地」は紛れもなく名作。
ただ、この「オーイ!とんぼ」はそれらと比べても一番好きかもしれない。

元プロゴルファーが鹿児島の南の離島で天才少女と出会って云々…という、まあ話の大筋は結局天才主人公がTUEEEEEE!!!!する感じのものなんだけど、展開がすごく丁寧に進んでいくし、登場人物が誰もかれも魅力的。
技術的な解説にも(実際合ってるのかどうかは置いておいて)かなり説得力があって良い。

個人的に泣いたのは7巻。
最も熱かったのは13~14巻。
10巻のラストも良かった。

掲載誌が漫画雑誌じゃなくて「週刊ゴルフダイジェスト」というゴルフ雑誌であることから、普通の「漫画を読む層」に浸透していない分かなりマイナーだと思うけど、これが「ビッグコミック」とか「モーニング」とかその辺で連載されてたらもっとエラいことになってたと思う。

今最も人に薦めたい漫画。



SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん

既刊1~12巻(以下続刊)

地味な高校教師に、ジミヘンドリクスの幽霊が取り付いて、「27歳が終わるまでに音楽で伝説を残さなければ死ぬ」という呪いまでかかり、なんやかんやで生徒たちとバンドを組んで伝説を残そうとするという物語。

そもそもの設定の根幹が「ヒカルの碁」のパクリやん!とか
素人に毛が生えた程度の奴らが数日の特訓で上手くなりすぎ!とか
メンバー今までの居場所簡単に捨てすぎじゃね?とか
ストーリーラインとか脚本上の細かい突っ込みどころは多々ある。

それでもそういった細かい突っ込みどころを気にさせないような勢いと迫力がある。
減点形式で見ていったら凡作だけど、加点形式で評価していったら名作といえると思う。

「音楽」というものを漫画でどう表現すればいいのか、というのに明確な正解は今のところどの漫画家も持っていないと思うが、この漫画はその表現がかなり上手い。

凡庸な漫画だったら、「どれだけすごい音か」ということを、例えば観客の心理描写で(な、なんてすごい音なんだ!)みたいな感じで文字に起こして説得力を持たせようとしてしまうけど、この漫画はそういうのがほとんど無く、あくまで「絵」とか「コマ割り」とか「構図」とか、「漫画表現」で「音」の感じを表現しようとしている。
ちょっと誇張しすぎな感じもあるけど、「漫画」で「音楽」を表現しようとしている数少ない挑戦的な漫画であると思える。

もっといろんな人に知って貰ってもいいと思う。



恋は光

全7巻

「恋をしている人間が光って見える」という超能力(?)を持った大学生の主人公が、その光の謎について考えながら自分の恋に向き合っていく、みたいな感じの物語。
第1話を読んだ時点では(この設定で話が続けられるのか?1巻完結くらいで終わるんじゃね?)と思ったが、意外にもまったくダレることなく7巻まで密度の濃い話が続いた。

基本的にはゆるい感じで物語が進行する。コメディと言うほどユルくもないが、ドロドロと深刻な感じにはならない絶妙なバランスで、ストレスを感じずに読み進むことができるのは凄い。
構図としては主人公の男一人に対し、恋心を抱く三人のヒロインが居るという形になるが、よくある「何の取柄もない主人公にわけもなく惚れる美少女達」みたいな、男の欲望を満たすためのご都合主義的な設定に見えない。
どちらかといえばむしろ女性陣の視点で物語が進行していくことが多く、ヒロインが、主人公のために用意された「キャラクター」的ではなく、一個の人間として丁寧に描写されているのがこの漫画を魅力的にしている。

物語の全体的な評価としては「結構面白い」というくらい。
ただ、
北代さん(キャラのフルネームが出ないのよこの漫画)というヒロインを生んだだけでこの漫画には計り知れない価値がある。
個人的に今まで読んだ全漫画中第1位ヒロインである。(この漫画のメインヒロインとは言ってない)こんないい女、現実どころか二次元界を広く見渡してもそうそうおらんわ!アホか!
むしろ主人公は北代さん。

同作者の「煩悩寺」「純真ミラクル100%」も面白い。



銀河の死なない子供たちへ

全2巻

この作者「施川ユウキ」は基本的にはギャグ漫画作家で、異常なシュール4コマのデビュー作「がんばれ酢めし疑獄!!」の頃からなんか好きだった。
同じく4コマの「サナギさん」それからアニメ化もした「バーナード嬢曰く。」は知っている人も結構居ると思う。(いるよね?)

ギャグ漫画の中でも時折風刺的というか、哲学性を感じさせるようなシーンやコマやセリフなんかが散見されていた。

恐らく今作が施川ユウキが本当に漫画で描きたかったことの一つなんじゃないかなーと思う。
「バーナード嬢曰く。」を読んで推察されるに、この作者の読書量(特にSF系)はかなりのものだと思う。
それに裏打ちされた確かな世界観がある。
いつかこの作者の描いた重厚なSFストーリーを読みたい。
でも絵がアレだからシリアス長編にするなら作画を別につけたほうがいいのかな。

こういう漫画を読んだとき真っ先に思い浮かぶ言葉が「考えさせられる」という言葉。
僕はこの「考えさせられる」という言葉が嫌いだ。この発言をする人は大抵実際には具体的な考えなど何一つ浮かんでいないからだ。
なんとなく感動したような、哲学的なような、そんな作品に出合った時、実際には何も学んではいないのに何かを学んだ気になる。そんな時に出てくる言葉が「考えさせられる」だ。
多分この漫画を読んで「考えさせられる」という感想を実際に発言した読者は多いと思う。

読み始めると短時間であっさりと読み終えるけど、読後感はもったりと残り続ける感じ。
短いので是非読んで欲しい。そして何かを「考えさせられ」て欲しい。




異世界おじさん

既刊1巻(以下続刊)

17年間の昏睡状態から目覚めたおじさんは、異世界からの帰還者だった。

基本的にはこの漫画自体が「後日談」みたいなものである。

まずこの漫画を楽しむには、昨今のライトノベル界隈や深夜アニメ界隈を席捲している「異世界転生」という設定についてそこそこ知っている必要がある。
それを知らないとそんなに面白くないかもしれない。

よくある「異世界モノ」に対する揶揄というか、それを踏まえたアンチみたいなところが少なからずあって、そこが絶妙な笑いを生んでいる。

ギャグ漫画の形式も色々多岐にわたってきていて、どんなものがハマるかは人それぞれって感じはあるが、個人的にはツボにバッチリはまった。
大爆笑!って感じではないが、ニヤリとしてしまう箇所が多い。

おじさんの回想に出てくるエルフの女性が可愛くて、ラブコメになりそうだけど絶対にならないってところも面白い。エルフさんマジ不憫。

1話からのバックナンバー数話と最新話が
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF00000079010000_68/

ここで無料で読めるので、ちょっと読んでみて欲しい。
ハマる人はハマるはず。




東京都立呪術高等専門学校

全1巻

今や週刊少年ジャンプの看板候補にもなっている(と俺が思っている)「呪術廻戦」の前日譚。
本誌で呪術廻戦を連載する前にジャンプGIGAで短期連載された作品。

もともと呪術廻戦は連載スタートするつもりはなくて、この呪術高専が思いのほか人気だったから設定を引き継いで呪術廻戦という作品が本誌連載を開始したらしい。

呪術廻戦はもちろん面白いし好きだが、個人的にはこの呪術高専のクライマックスを超えるシーンは未だ出てきていないと思う。

呪術廻戦を読んでいる人はこの呪術高専も読むべきだし、呪術廻戦を読んでない人はまずこの呪術高専を読んで欲しい。これを読めば呪術廻戦も読みたくなるはず。




さよなら、ハイスクール
全3巻

自分の教室の「スクールカースト」をぶっ壊してやろうと主人公が奔走する物語。

この漫画は「絵がヘタ」(あるいは絵が雑)なのが逆に良い。
このテーマで絵が変に小綺麗だとなんだか生々しくなりすぎて説教臭い印象が増大してしまう気がする。
ざっくりとしたややコミカルな絵柄だからこそ重苦しくなりすぎず、どこかしらギャグのニュアンスを含みながら進んでいく。

なんというか、「青春」というものと、それにまつわるものを、客観的に、あまりウェットになりすぎずにうまく捉えられていると思う。

「青春」や「学校」や「教室」といった枠組み、そういったものを「一時的でたいしたものじゃない」ことを自覚的に捉えながらも、当事者にとっては抜け出せない「全て」なんだという感覚を上手く表現できている。

何度も読み返そう、と思うような漫画ではないが、第一話から最終話まで一気にスルーっと読んでいける漫画だ。



懲役339年
全4巻

「転生」(生まれ変わり)が信じられている世界で、生まれた時から前世の罪で投獄されている主人公達を描いた作品。

ありそうで無かったような設定と独特の雰囲気。
1巻を読み終わったあたりでは、これはかつてないほどの名作なのでは?と、
社会の枠組みと世界観そのものと対立する主人公が最後にはどんな結末を迎えるのかワクワクした。

ただ、終盤に近付くにつれやや話の構造がスケールダウンしていったというか、収集のつけ方に意表をついたものは無かった。
大きなどんでん返しも無く、主人公達が目指した方向にきちんとうまく着地させていった感じだ。
ただその終わらせ方も含めてなお名作だとも思う。
1巻のラストと最終巻のエピローグの繋がりが好き。




スピリットサークル
全6巻

もはやマイナーと言ってもいいのか迷う。
読み終わった後に「アレ?6巻しかなかったっけ?」と思うくらい密度の高いストーリー。

各エピソードがそれぞれ独立したストーリーとして見ても面白いし、各所にちりばめられた伏線が綺麗にしっかり回収されていくところも素晴らしい。

本当にこの作者は物語の作り方が緻密だと思う。第一話の段階で最終話までの全ての話をあらかじめすべて書いてるんじゃないかと思うくらい。

何週も読み返したい。そして読み返すたびに新しい発見がある。

同作者の
「惑星のさみだれ」
「戦国妖狐」
も、もちろん名作。その他短編作品集を含めてそれぞれの作品間で微妙に世界設定がつながっているので全部読むとまた面白い。




………

はい。

こんな感じです。

特に「オーイ!とんぼ」と「異世界おじさん」と「スピリットサークル」あたりは是非とも多くの人に読んで欲しいと思う。





2019年1月10日木曜日

今更2018年のことと2019年を迎えたこと

はい!

生きてますよ!


約2か月の放置!

まあー、死んだか失踪したかと思われても無理はないくらいかもしれない。


なんにも書くことが無いというわけでもない。

でも「ここに態々書く必要があることか?」
という些細なことばかりだったりして、

そしてそんな些細な情報はインスタだったりツイッタだったりのSNSでもって細かく放出してしまうともう消費されてしまうもんだ。

文字数制限のあるSNSは情報ひとつひとつの閲覧時間はほとんど数秒で、
しかも雑多な情報群の中の一部として処理されるもんだから、そこに発信する情報は意味も価値も無い、毒にも薬にもならないような雑多なものでも良いと思える。

でもこの個人のブログという形式では、
文字数もそれなりに多く、必然的に閲覧時間も長くなる
(イコール、閲覧者の時間を多く奪うことになる)
そして閲覧者は、これを読みにきている。ということだ。

だから一応ここに書く内容というものは、
ただの独り言的な呟きの範疇を超えて、
ある程度コンテンツ的な意味を持たせるべきじゃあないかと、
そう愚考した挙句、書くことに困り、結果長期間放置することになり、長期間放置したんだから尚更再開時の内容に気を遣うことになり、また書くことに困る、という負のスパイラルに陥っていたというわけだ。

だからとりあえずそのスパイラル断ち切るためにも、
まず一回開き直ってどうでもいい内容を書こう。



とまあ、

放置の言い訳も済んだことだし、

じゃあ2018年の総括でも。

・1月 右ひざの負傷(外側靭帯損傷(6年ぶり3回目)
・5月 東京→新潟(実家)の引っ越し
・8月 左手人差し指の負傷
・4~11月 7kg太る

特記事項としてはこんなところ。

2018年は、クライミング面だけで見ればほぼマイナス。
弱体化の年といってもいいだろう。

まあそんな中でも11月に三面でキングコングが登れたことは僥倖だった。

あと、体重の増加についてはそんなに悪いことばかりではなく、
太った状態で登っていたことで、若干フィジカルが向上したような気がする(そう思わないとやってられないだけかもしれないが)

ということで、
2019年の抱負と目標としては

ひとまず、2017年の自分を超える。

ということになる(2018年を超えるのは最低条件)。

膝の負傷も指の負傷ももうほとんどなんともない。
体重も12月から徐々に落とし始めてきた。

2019年春を迎えるまでには、少なくとも2017年末あたりの自分のコンディションと同等までは戻せるはず。
そこで、戻すだけで満足してはいけない。そこからもう一回り、ふた回り成長したい。

具体的な目標課題としてはやはり塩原のルーフ内課題。

カランバ
カタルシス
ハイドラ
ユーマ

このあたりを狙っていきたい。この4本を今年中に登れれば上出来だと思える。

そしてなんといっても
去年目標として掲げながらも達成できなかった

三面のシシガミ

これは必ず登りたい。というかこれだけは必ず登る。

そのためにまずやることを優先順に並べると

①痩せる
②フィジカルの向上
③ルーフへの順応
④指の強化

このへんかな。

①は急務。堕落した精神を叩き直さねば。
②は前々からずっと抱えてきた弱点であり、目をそらしごまかしてきたところ。
そろそろきっちり向き合わなくてはいけないところまできた。
③はもうひたすら課題をやるしかない。
④はまあ、ビーストメーカーをちゃんと習慣づけてやろう。


さあ!

やるぞ!

2019年!