2019年6月4日火曜日

未知のマントル

長い長い閉鎖期間を越え、ようやく

三面ボルダーへのアクセスが解禁された。

今年こそはシシガミを登ろうと意気込んではいるものの、
なんだか最近自信が減衰している。

今日は久々に何の予定もない休日だったので意気揚々を三面に向かった。

三面の何が良いかって、そのロケーション。

緑が濃い。

エリアに行くまでの道中、ただそこをドライブすることだけを目的に行ったっていいとすら思えるような自然の中を行く。

今日は最高に天気が良く、緑が生き生きと映えていた。
こういう風景を普段から見るかどうかだけで人生の充実度って変わるんじゃないかと思う。

しかし暑い。

持って行った温度計を確認するとなんと

気温30℃(しかも日陰で)

灼熱の中、さぞかし岩場は虫の楽園と化しているかと思ったがそうでもなく、
暑いということ以外はそこそこに快適だった。

ともあれこの暑さでシシガミをトライする気にもなれず…

せっかくなのでかねてから登ろうと思っていた未登のラインを触ってみることにした。


この岩。

この岩はキングコングなどがある「ゴリラ岩」のすぐそばにあり(写真右に見えている岩がゴリラ岩の裏面)

写真の面は川に面しているんだけど、ちょうどその真下に、水平に近い形で岩があり、対岸から見るとまるで舞台のような形でランディングを形成してくれている。

なので僕はこの岩を勝手に石舞台岩と呼んでいる。

そのちょうど真ん中に直登できそうな感じにホールドが確認できているので、
いつか登ってみようとは思っていた。

ということで手を付けてみたが、

まあー怖い!

やっぱり初登って難しい。

既登のラインだったらそれは
「登れる」ということが少なくとも確定しているわけで、

でも未登のラインだとひょっとしたらホールドそのものが途中から全然無いかもしれない。リップがまるっきりつるつるで全く持てないかもしれない。

それでも地上からのオブザベを信じて恐る恐るだが手を出していくとなんとかリップまで到達した。

リップにたどり着いた時、リップの奥にまずホールドを探す。
何かカチの一つでも見つかればそいつで引きながらセーフティにトップアウトできるはずだが……何も見当たらず。

ここで降りるということはもう不可能。

仕方なくリップ際でマントルを返す。
先週小川山で優しいグレードのマントルを返しまくった経験が生きて、冷静に返しきることができた。

強度だけで言えばいつも登ってるハイグレードの課題と比べてかなり劣るが、
それよりも緊張感があったし、充実度もハイグレード課題の完登時に劣らない。

何故多くのトップクライマーが初登に拘るのか、その理由の片鱗が少しは見えてきたような気がする。

かの倉上慶大さんがこの動画の中で

「分からない一手を出すっていうのが冒険。分からないってものに挑戦していくのが。その冒険の一手一手をやっていて、いつの間にか岩の上に立っている」

と言っている。

真似できないメンタリティだと思っていたけど、今日の登りはそれに近い感覚を得ることができたように思う。


今回登ったライン。

課題名は「子午線の祀り」
グレードは「1級」



スタートホールドは右手カチ、左手は薄いカチポケット。

結構ガバ多いし、全体的な強度は2級くらいかなーとは思ったけど
出だしが結構悪いのと、あとは高さによる恐怖や危険度も加味して1級が妥当かと思う。

「いつか自分が初登してやったときには思い切り厨二くさい名前つけてやろう」と常々思っていたので、ひとつ夢が叶った。



その後、また岩を移動して3本簡単なラインを初登

幽寂(4級)(読みは ゆうじゃく)
・SD 右手三角形のポケット、左手カチでスタート。そのまま直上。
閑雅(3級)(読みは かんが)
・SD 幽寂と同じスタート。右にトラバースしていき、岩の真ん中あたりをトップアウト。
鳥声(5級)(読みは ちょうせい)
・SD ポケット状のガバスタート。途中からカンテを巻き込みトップアウト。
(カンテを使用せず直上すると4級くらいになる。その場合マントルが結構悪い)

この岩は道路からの急登を下りきると眼前真正面15mくらいのところにすぐ見える岩。
勝手に目の前岩と呼んでいる。

ゴリラ岩に行く前にちょっと寄り道も可能だし、アップ課題として登ってくれる人が出てくれるんじゃないだろうかと期待している。
それと、三面には難しい課題しかないから、という理由でここに来ることを避けていた新潟クライマー達が三面デビューを果たすきっかけの一つとして機能したら嬉しい。

そういう理由もあって、これらの課題を「無名(4級)」とか「カンテ(5級)」とかにはしなかった。

だって、なんか、わかるでしょ?
無名の3級とかより課題名ちゃんとついてる3級とか登れると嬉しかったでしょ?

「あの~小川山の~なんかエイハブ?って岩のちかくにあった小さい岩の~マントル課題の3級のやつ登れました~」
って言うよりも
「塩原の『桜』登れました!」
って言うほうが胸張れるしモチベーションも上がるでしょ。

そんな、ただの名前のない「4級」とか、
いかにも「強いクライマーがただアップか暇つぶしのためになんとなく登りました」みたいな雰囲気じゃん?

だからもう必要以上にカッコつけて厨二くさい名前をつけてやった。


とりあえず今日登った課題はすべて動画を撮影もしているので以下に載せておく。


オンサイト狙いもしてほしいので一応ネタバレ注意ということで。












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