ちょっと前回の記事を書いてから一晩経ってまた思う事があったので、
補足として少し書く。
チョークに滑り止め機能はある、という説の反証として、
①「クライミングシューズのソールにチョークを塗るとかえって滑りやすい」
②「ホールドにチョークが乗りすぎているとかえって滑りやすい」
という例が挙げられると思う。
①について
これは単純に「クライミングシューズのソールのフリクションがチョークのそれより優れている」という仮説が立てられる。
例えば
ステルスHFとホールドの間の摩擦力を評価100として
チョークと皮膚の間の摩擦力が評価70くらい
ホールドとチョークの間の摩擦力が評価70くらい
皮膚とホールドが直接だと摩擦力が評価50くらい
みたいな。
すごく雑にまとめると
フリクションの強さがそれぞれ
ソール・ホールド間>皮膚・チョーク・ホールド間>皮膚・ホールド間
の順に並んでしまうってことなんじゃないだろうか?
故に、ソールにチョークを塗ってしまうと100が70になるので「かえって滑りやすい」という説に繋がる。
そして「ソールにチョークを塗った方がフリクションが増す時がある」という説も同時に存在する。
これは例えばビブラムXSEdgeやステルスオニキス等、元々フリクション性能に特化していない種類のソールであったりが、
さらに気温等の条件によってソール・ホールド間のフリクションの値がチョーク・ホールド間のフリクションの値を下回ってしまう時に言えることなんじゃないだろうか?
皮膚の状態というのも個人差や状況差によって一定でない。
場合によっては、皮膚・ホールド間のフリクションがチョーク・ホールド間のフリクションを上回ることもまたあるかもしれない。
僕の乏しい経験からになるからあまりはっきりとは言えないが、
「チョークを手につけるとかえって滑りやすい」
という発言を最もよく聞くのが小学生くらいの子供からだ。
触ってみると、小学生くらいの手の肌はしっとりとしていて柔らかく、それでいて手汗を過剰にかいたりしない。
前の記事で言ったフリクションを得るための「適切な水分量」にかなり近い状態を保ち続けやすいのではないだろうかと思う。
そのようなフリクション的に理想的な皮膚の場合は、フリクションの関係が、皮膚・ホールド間>チョーク・ホールド間になることもありそうだ。
しかし、手の状態というのは生きているが故に変動が激しい。
登り始めには理想的柔らかさ+「適切な水分量」によって100の摩擦力があっても、発汗等の要因によってそれが50くらいまで変化することはあるだろう。
しかしチョークを用いれば常に70近くの摩擦的評価を得続けることができる。
高い水準でフリクションを安定させ続けやすい、というのがチョークの利点なんではないだろうか。
②について。
これはまあ単純に「適量」があるということだろう。
いい具合に、ホールド―チョーク―皮膚、とチョークの粒子の凹凸がホールドと皮膚を繋ぎ合わせるような量であればフリクションは増すだろうし、
チョークの粒子が堆積するくらいになってしまっていると、その堆積したチョークが崩壊するような感じで滑っていくんじゃないかと思う。
ブロックチョークの表面を強く撫でると表面は削れていく。
削れていくから撫でる指は滑って行く。
過度にチョークが堆積したホールドの表面はそのブロックチョークのような状態に近くなっていると言える。
しかもしっかりと形成したわけでもないのでブロックチョークよりもさらにその堆積は崩壊しやすいはずだ。
イメージ的にはこんな感じ。
なので過度にチョークが堆積したホールドを持つと滑りやすいという現象は、
「チョークが滑っている」というよりは「積もったチョークがズレている」というような表現が適切なんじゃないかと思う。(まあ結果的には同じなわけだけども)
以上、
前回の記事の補足としての考えをちょこっとまとめてみた。
まあ相変わらずこれらはただの経験則で(いや、経験則というのもおこがましいか)
なんら正確な実験やら数値的な計測を行ったものではない。
だから間違った解釈や的外れな考察を多分に含んでいるだろうし、
どこまで行っても「~と思う」以上は言えない。
でも「こんな考え方がある」と他のクライマーの方々に伝えて、
誰もが思考停止的に「チョークって実は滑り止めじゃないんだぜ」って言い続ける状況を変えたい。
そして、「チョークは滑り止めである説」の反証として
しっかりとした実験や論拠に基づいて
「やっぱりチョーク自体に滑り止めとしての機能は無い」
ということが立証されるのならば、
それはそれでクライミングにおけるフリクション問題を前進させる切っ掛けになれるんじゃないかと期待している。
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