最近チョークにとって思うことが色々とある。
なんとなく思うこと、声高に叫びたいこと、やってみたこと……
様々あるのでちょっと書いてみる。
①チョークは滑り止めである
チョークは滑り止めである。
クライミングにチョークをしっかりと使っていて、チョークについてきちんと考えている人はこれに異論を唱える人はほとんど居ないと思う。
しかし、驚くべきことに
Googleで「チョーク 滑り止め」で検索すると、様々な記事が現れてくるが、それのほとんど(もう本当にうんざりするくらいほとんどの記事に)にまず「チョークは実は滑り止めではない」というような旨のことが書いてある。
トップに出てくるのは
その記事の冒頭にはこう書いてある。
- 実は、チョークの主成分である炭酸マグネシウム自体は滑り止めではありません。例えば、滑りやすい路面に炭酸マグネシウムをまき、その上を歩いたら、逆に滑りやすくなるほどです。 では、なぜチョークを使うのかというと、炭酸マグネシウムは吸水性に優れるから。つまり、手から出る汗を炭酸マグネシウムが吸い取ることで、手指が汗で滑ってホールドから落ちるのを防ぐ役割を果たしているのです。
はい。
恐るべきことはこれが記載されているのはアマチュアの個人ブログなんかじゃないということ。
CLIMBING-netという日本で恐らく最大のクライミングポータルサイトが公式に
「クライミング用チョークの基礎知識」として、
チョークが滑り止めだと思っているのは初心者の抱える誤解であり、本当はチョークに滑り止めとしての効果なんてないんですよと発信している。
その他、どこかのジムのブログから個人のブログに至るまで、チョークについて扱っている様々な記事のほとんどはまず似たような冒頭から入っている。
チョークは実は滑り止めなんかじゃないんですよ
と。
?????
「例えば、滑りやすい路面に炭酸マグネシウムをまき、その上を歩いたら、逆に滑りやすくなるほどです。」
いやいやいやいや。
そんなん路面に何かしらの粉を大量に撒いたらそれがどんな性質の粉だろうとそりゃ滑りやすくなるわ。ステルスMi6のコンパウンドだって大量に撒けば滑るわ。
本当に検証してるんだろうか?
きちんと、人間の皮膚と岩(あるいは人工ホールド)との間で、適量のチョークの有無によってフリクションが増減するのか。
それは水分の多寡によるものなのか。
そういったことを検証した上での発言なのだろうか?
もししっかり検証していたのだったら申し訳ない。
しかし、実感として、チョークが滑り止めではないという意見に対しては大声でNO!と叫びたい。
僕は超がつくほどの乾燥肌だ。
指先は老婆の踵のように角質化し、ひび割れ、ケロイド状に近い質感になっている。
手指に水分油分はほとんど無く、本のページもうまくめくれなければ紙幣を素早く数えることもできない。
チョークには実は滑り止め効果は無く、むしろ滑りやすくなる原因になり、にも拘わらずチョークを付けるのは手から水分を失わせるという目的があるからなのだとしたら、僕はチョークを付けるメリットが全くないことになる。
しかし実際、僕はチョークを付けないとほとんどホールドを保持することができない。
スローパー系のホールドなんてノーチョークでは全く持てない。
しかし、チョークをきちんとつけたとたんにピタっと止まり始める。
プラシーボ効果?
いやいや、さすがにそんなレベルじゃなく差が出ている。
乾燥肌とはいえ僅かに油分や水分が手のひらにあって、それをチョークが吸っているからフリクションが増している?
その仮説に対する反証のため、手をしっかり洗って皮脂を落とし、しっかり乾かした後、アルコールを刷り込み水分を完全に飛ばした状態でホールドを持ってみた。
全く何もしない状態に比べれば僅かにフリクションは増した感はあるが、それでもチョークを付けた状態から比べればまったく誤差のレベルだった。
もし、乾燥肌の手をさらにアルコールで乾燥させた状態でもまだ水分が取り切れなくて、その僅かな水分があるだけでもホールドは保持できなくて、その僅かな水分をチョークは取り去ってくれている、というんならチョークってのは一体どんな恐ろしい物質だと言うんだ……。
まあもういいや。
とにかく、言いたいことは、チョークそのものに皮膚とホールドの間のフリクションを増す効果は確かにあるということだ。
②水分=悪なのか?
そもそもフリクションにおいて
水分=悪なのか?
これは僕が乾燥肌だから特に感じることなのかもしれないが、この答えについても断じてNO!だ。
チョークにも適量があるように、水分にも適量があるというだけの話だと思う。
僕はスーパーの袋を開けるのが大の苦手だ。
ぜんっぜんビニールと指の間にフリクションが生じない。
大体のスーパーには袋詰めスペースに水を含ませた布巾を置いてあったりする。
その布巾で指を湿らせるとビニールと指の間にフリクションが生じ、ビニール袋をやっと開けることができる。
「そりゃビニールの話じゃん。ホールドの話じゃないじゃん」
と思われるかもしれないが、ビニール以外の素材についても、軒並みいろんな物とのフリクションを確かめてみると、やはりある程度水分があったほうがフリクションが増す。
クライミングホールドについても、ノーチョークという縛りで行くんなら、手を水の中にある程度の時間浸けて、指皮が水分を含んだ後、軽く水を拭いて半乾きくらいの状態でホールドを保持した時が一番フリクションを感じる。
じゃあ水分はフリクションを生む善なる存在なのか?
もちろんそういうわけでもない。
僕も乾燥肌とはいえさすがに夏場などでは手がヌメるということもある。
一定のところまでは水分があってくれたほうがフリクションは良い感触があるが、そこを超えると今度は水分が原因で滑ってくる感覚がある。
ホールドと指の間に高いフリクションを生じさせるための「適切な水分量」というものが確かにある。(それはホールドの材質や形状などによって異なるだろうが)
イメージとしてはこんな感じ
このなんちゃってグラフはあくまでなんとなく僕が感じるイメージであり、実際はこのような綺麗な曲線を描くということも無いだろうし、フリクションが頂点となる適切な水分量というのが数値的にどれくらいのものなのかというのは正直全く分からない。
でもイメージとしてはそんなに的外れじゃないんじゃないかと思う。
③乾き手とヌメり手はどっちが良いの?
これも僕が乾き手なので、乾き手側の主観と偏見を多分に含んだ意見にはなるんだけども、まあ思うことを書いていきたい。
(なにせこれはアマチュアクライマーのただの個人的なブログでしかないからだ)
前項でまず「適切な水分量」があるというようなことを書いたが、
まず乾き手のクライマーは初期でその「適切な水分量」が無い。
むしろヌメり手クライマーは初期に「適切な水分量」に近い状態に近いと思う。
しかし登り始めて手数が進むにつれ、ヌメり手クライマーは「適切な水分量」から遠ざかり、乾き手クライマーは徐々に「適切な水分量」に近付いていくということが言えるのかもしれない。
ヌメり手クライマーが「適切な水分量」から遠ざかるのを防ぐためにチョークの「吸水性」が活躍するし、乾き手クライマーが「適切な水分量」を持たない段階でフリクションをサポートするためにチョークそのもののフリクションが作用してくれる面があるんじゃないだろうか。
これは暴論かもしれないが、ヌメり手と乾き手のクライマーはそれぞれチョークの持つ別々の特性を利用しているという側面もあるのではないだろうか?
故に、乾き手のクライマーは、吸水性はイマイチだが、粒子のサイズや形状によってフリクションを生みやすいチョークを必要とするはずだし、ヌメり手のクライマーはチョーク自体がフリクションをそう生じなくても、吸水性に優れたチョークを必要とするんではないだろうか?
これは余談だが「東京粉末BOOST」
これは物凄くかみ砕いて言ってしまえば「乾き手のクライマーがヌメり手クライマーの利点を手に入れるための道具」だと個人的には解釈している。(まあ勿論そういうコンセプトで作られていると言われているわけじゃないし、実際にもっと奥深い効果があるんだろうと思う)
乾き手の自分がBOOSTを使用すると、直後に良い感じに皮膚に水分を感じ、フリクションのための「適切な水分量」になっているという感覚を得る。
「ヌメり手の人って登り始めの段階ではこんな感じのフリクションを持ってるんじゃない?」
そんな感触を勝手に想像する。
そして僕は乾き手なわけだから、そこから手数が進むにつれ過度に水分が出すぎるということもない。
またなんちゃってグラフになるんだけど
こんなイメージなる。
登り始めのスタート直後はやっぱりヌメり手の人が有利なんじゃないか?という乾き手クライマーの嫉妬みたいなものがにじみ出たイメージになってしまっているけども
もう一度言いますがあくまでイメージです。
(そもそも乾き手とかヌメり手とかも綺麗に二分できるわけじゃないし、もっと右側からスタートするびっちゃびちゃの手の人も居るだろうし、程度の違いを言い出したら出発点の水分量なんてみんな違うしね)
まあでもこのイメージなんちゃってグラフでもやっぱり乾き手+BOOSTが最強なんじゃないかと思わされる。
次点でちゃんとチョークを使ったヌメり手。
で、BOOST抜きにしても手数の多いルートに関してはやっぱり乾き手のほうが有利になるんじゃないかと思う(途中でチョークアップをしないという条件に限り)。
でも7手以内くらいで完結するボルダー課題で、かつハリボテボリューム多様のフリクション勝負の課題の場合はヌメり手のほうが結構強いんじゃないかと思う。
④今まで使ったチョークについて
理屈っぽい話はこれくらいにして、
実際に今まで自分が使ってきたチョークについてちょっと触れていこうと思う。
前述のとおり僕は乾き手で、そんな僕の主観的な意見・感想をそれぞれだらっと述べていきたい。
CAMP チャンキーチョーク
僕が最初に「こりゃいいや!」と思ったチョーク。
これ以前に使っていたチョークは正直何を使っていたか覚えていない(笑)
チャンキーを指で押しつぶすようにして指に刷り込むと僕の乾燥肌に対してもしっかり吸い付いてくれる感じがある。
東京粉末 EFFECT
昔、誰かのチョークバッグの中から良い匂いがしたのをきっかけで出会った。
その良い匂いがカッコいい!という思いだけで購入するも、コレがまたフリクションという意味でもCAMPを超える噛み合いを見せ、しばらくこればっかり使っていた。
東京粉末 BLACK
現在の自分の主力チョーク。
EFFECTの良さにすっかり惚れこんでいたが、それを超えるBLACKが出る!という発売当時の話題性に負けてホイホイ購入。
EFFECTに比べて抜群に良いぜ!ってほどの違いは感じないが、やはり気持ちこちらのほうが安定する気がしているのでやはりこちらを愛用している。
なんとなくしっとりとしている感触で、乾燥肌に対しても弾かずにくっついてくれる。
フリクションラボ GORILLA GRIP
岩で使える!と評判だったので購入。
結論から言うとあまり自分には合わなかった。
悪いというわけではないが東京粉末と比べると今一つ合わない。
なんというか、指にあまり馴染まないような感触。乾燥しすぎているのかも?
ヌメり手の人のほうがこのチョークは合うんじゃないだろうか?
USAMIX ザチョーク
これは確か貰い物で使ってみたんだけど、これもしっとり系で良い感じ。
コスパも良いし、主戦力にしてもいいかなーとも思ったけどやはり東京粉末BLACKのほうがなんとなく安定感あるかなー、というところ。
東京粉末が無かったらコイツが主力になっていた可能性もあった。
フリクションラボ シークレットスタッフ
これもネットの評判で購入。
何故か特定のホールドに対しては粉チョークを上回る抜群のフリクションを発揮した(LapisのBallsシリーズだったかな?)。
ポリウレタン系でなくポリエステル系の人工ホールドに対して相性が良かった。
自然岩にしても岩質によってはコイツが抜群に効くものがあったのかもしれない。
そういったバリエーションを試す前に無くなってしまった(それでも2本は使い切った)。
色々可能性は感じたものの。コストパフォーマンス面と、安定性の面からもう使わなくてもいいかなーと思っている。
ペツル POWER LIQUID
貰いもので使ったのが最初。
ロジンが多量に含まれているのでジムでしか使えない。
ロジンの威力はすさまじく、何課題か登っても全然チョークが落ちることが無い。
これは凄い。フリクションがめちゃくちゃ持続するじゃん!と思ったのは始めだけで、チョークが残っている=フリクションが残っているわけではないということに途中で気づく。
そしてロジンと自分の肌の相性がそんなに良くないらしく、かえってロジンによってフリクションが失われるような感触があるときすらあった。
やはりフリクションを感じるときとそうでない時の安定感に欠けること、そもそもロジンを使うということに対する若干の嫌悪感、それらにより使用しなくなった。
PD9
うーん、合わなかった。
岩でも人口壁でもとにかく良いと思うことがほとんど無かった。
期待度を下げて「どうせ止まんねーや」と思いながら使ったら「お⁉意外と効くぞ」と思ったこともあったが、その後同じホールドを普通にチョークアップして触ったらもっと持てたのでやっぱり粉チョークを普通に使ったほうが持てる。
粉チョークの下地としてなら使ってもいいかとは思うが、これを下地として使ったからさらにフリクションがかなり上がったということも無かった。
これもヌメり手の人にとっては結構良かったりするんだろうか。
⑤液体チョークづくり
今日び、あまり「液体チョーク縛り」のジムっていうのもそんなにないけれど、
今の自分の所属ジムがなんと液体チョーク縛り。
始めはかなり煩わしいと思っていたけど住めば都、慣れればそんなに気にならない。
しかしまあ既成の液体チョークにあんまり合うのが見つからない。
人のを試してみたりちょっと買って試してみたりと色々やったがやはり東京粉末BLACKを粉で使った時の噛み合いに及ぶものが無い。
ということで、
作ってみることにした
東京粉末BLACK LIQUID
作り方自体にはそう試行錯誤は無い。
粉末のBLACKに、75%エタノール製剤を混ぜるだけ。
この75%エタノール製剤、本当は無水エタノールに精製水を混ぜて自分でいい具合に配合するのが純粋でいいんだろうけど手間がかかるのが嫌なので、使用したのは「マイアルファ75」
問題は入れる容器。
自分的にコレは良い!と思ったのは
ダイソー等の100円ショップで売っている
「はちみつボトル」
こんな感じのやつ。
これに粉末を満タンになるまで入れ、マイアルファをすこしづつ入れていく。
長い棒を突っ込んでぐりぐりとかき回しながら泥のような見た目になるまでマイアルファを足していく。
そこからはお好み。
本当に液体のようなシャバシャバにしたいならもっとマイアルファを足せばいい。
僕は泥くらいの感じが良いと思った(乾くまでの時間が短縮される。なんか指に深く刷り込める感じがする)のであまりシャバシャバにならない程度にしておく。
で、最後の仕上げに蓋をしっかり占めてからガッシガッシに振る。
完成。
粉末満タンくらいから作る始めるとこの時点でボトル半分くらいの液チョーが出来上がっていると思う。
使う時もはちみつボトルが優秀で、泥状くらいに仕上げた場合、容器を軽く押すと歯磨き粉みたいな感じでちょうど良く出てきてくれるし、蓋の密閉性も意外と高く、品質の劣化もそんなに早くない。
お勧めです。はちみつボトル。
やっぱり液体(というか泥状)にしてもBLACKは良い。
僕の肌に対してあきらかに市販の液体チョークと比べて一線を画す噛み合いっぷりを見せる。
まあ、液体チョーク限定のジムで登りでもしないかぎりわざわざこんな風に手作り液体チョークをつくる必要なんて無いだろうけど、もし作りたいと思っている人がいたらちょっとは参考になったら幸いです。
以上!
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