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2022年2月19日土曜日

何故カチは得意なのにスローパーは苦手なのか?

はじめに

先日twitterでこのような呟きをしたら


思いの外反応が多かったので、自分が知っている範囲のスローパーを持つための方法論を少しまとめてみたいと思います。

先に予防線を張っておくと、これはあくまで三流の素人クライマーが色んなところで見たり聞いたり教わったりした材料を咀嚼して自分の中で消化した結果出てきた考えであり、正規の教育として普遍的に正しい考えというわけではないですよと言っておきます。

そして前述の通りこれは自分で考え出した完全オリジナルのアイデアというわけでもありません。大体元ネタがあります。

参考にしたものの中で解りやすくかつ一般に公開されているyoutubeの動画なんかをいくつか記事の最後に紹介しますので、文章を読むのが苦痛だという方は本文をすっとばしてそれを観ることをオススメします。


「小指側に絞る」と「人差し指側に絞る」

まず結論から言うと、スローパーが苦手な人は「小指側に絞る」ように持ってみましょう。

それで大体解決すると思います。


以前の記事

力を入れるべきは人差し指側か小指側か

で書いたように、小指側に絞るか人差し指側に絞るかで、背中・肩から指までがどのように動くかは変わってきます。

※ここで言っているのは、小指「側」人差し指「側」であり「小指」「人差し指」そのものではありません。

小指に力を込めながら人差し指側に絞ることも可能だし、小指を抜いた3本オープンの形で小指側に絞ることも可能です。

より正確な表現をすると「力を込める指はどれか」ではなく「力を込める方向はどちら側か」になります。


思い切って断じてしまうと、「カチは得意なのにスローパーは苦手」という方は人差し指側に絞って登るクセがあるんじゃないかと思います。

(そうすると必然的に、垂壁やスラブで常に壁にグッと体を近づけて登るのは得意だけど強傾斜で大きい動きを出して距離を出すのが苦手でもあるんじゃないでしょうか?)

「いや全然そうじゃないよ!」という方はここから先を読んでもあまり参考にならないかもしれません。


ここから先は、何故人差し指側に絞るとスローパーがうまく扱えなくなる(ことが多い)のかという理由を書いていきます。


手の平を正面に向け、真っ直ぐ手を上げてみてください。

そこから手の平を外側に向けながら(=人差し指側に回しながら)下ろせるところまで下ろしてみましょう(図1)

図1

すると手の軌道は体の軸に対してやや後方に向かっていることが分かります。


次に同じ姿勢から手の平を内側に向けながら(=小指側に回しながら)下ろせるところまで下ろしてみましょう(図2)

図2

手の軌道は体の軸に対してやや前を通って下りてきます。


この違いがスローパーを持てるか持てないかを分ける要因の一つとして働きます。

外傾したスローパーを手で抑えて、それを後方に向かって引っ張ると抜けてしまうというのは容易に想像が付くと思います。

人差し指側に絞りながら力を込めれば込めるほど、抜ける方向に向かって自分から引っ張っているということになります。

(これがインカットしたホールドであればしっかり握り込めば抜けることはありません。その場合、体を壁の方へ引き付ける力として働きます)

小指に絞りながら力を込めると「引く」動作の中にやや「押す」ような感覚が入ります。

そうすると力を込めれば込める程、手の平は強くホールドに押し付けられることになります。

スローパー保持が極端に苦手な人の中にはホールドと手の間に発生するフリクションというのは体重によって自然発生するもの以外に無く、それは接触面積の多寡によってしか左右されないと思っている人がたまにいます。

もし、スローパーを体重によって自然発生するフリクションだけで留めておこうとすれば、あと自分が出来ることはポジションの調整だけになり、もし絶好のポジションを見つけたとしても今度はそこから動き出すことができなくなります。

小指側に絞るように力を入れることで、手の平を背中の力で押しつけて能動的にフリクションを強めることができます。


「スローパーは下に入って効かせなさい」という神話

壁から体を離すとキツイ。壁に近づいたほうが楽になる。

これはもはや常識というか物理的に自明と言ってもいいかもしれません。

そこから生まれた神話が「スローパーは下に入って効かせなさい」です。

これは少なくとも10年くらい前まではかなり支配的な考えとしてクライミング界に浸透してたんじゃないかと思います。

(現に僕は初心者時代は色んな人にそう教わりました。地域的な差もあるかもしれませんが)

ひょっとしたらスローパーに限らず全ホールドそのように持ちなさいと教わった人も多いのではないでしょうか?

しかしこれは現代のボルダリングには通じない旧い神話と言えるでしょう。

「ホールドの下に入って効かせる」のはその場にずっと留まり続ける限りかなり有効な手段です。

クリッピングやレスティングの際は非常に有効だし、フットホールドや保持しているホールドがインカットしている場合にも有効に働くことがあるでしょう(動き出す際に体が壁から離れて行こうとしてもインカットホールドを引き込む力で軌道修正できるため)。

しかし現代のボルダリングにおいてハードでパワフルな課題を登りきるためには、スタートからゴールまでしっかり強い力を使い続けて動きを連続させることも求められます。

その際「ホールドの下に入って効かせる」という概念は邪魔になってくることもしばしばあります。

旧い神話に対抗してここで提唱したいのは「スローパーは体の前で持て」です。


恐らく「カチは得意なのにスローパーは苦手」という方の多くは、もう少し詳しく言うと

「スローパーの下に留まり続ける事はできるがそこから動き出して次のホールドを取ることができない」

ことが多いのではないでしょうか?


スローパーからデッドで距離のある一手を取りに行く状況を仮定してみます。

「壁から体を離すとキツイ。壁に近づいたほうが楽になる」が自明だとしたら

「スローパーを両手で持っている動き出しの直前」と「次のホールドを取った瞬間」のどちらが壁に近づいているべきでしょうか?

多く場合後者になると思います。

(持ってるホールドがクッソ悪いが行き先はドガバの場合などが例外)


「スローパーは下に入って効かせなさい」に従って壁に近づいて構えてみます。

ここから手を出すと、次のホールドに触れるタイミングでは体は後方に向かっていることになります(図3)。

図3

(ちなみにこの試行では失敗して落ちてます)


逆に、構える段階で体を壁からある程度離してみましょう。

ここから手を出すと、次のホールドに触れるタイミングで体は構え時よりも壁に近づきます(=壁に向かって行きながら次のホールドを取っていることになります)(図4)

図4

壁から離れながら次のホールドを取るよりも、壁に向かいながら次のホールドを取ったほうが安定しますね。

(ちなみにこの出発点のホールドがインカットしている場合、握り込む力で常に体を壁に引き寄せ続けることでずっと壁から離れずスタティックに動けるかもしれません)

しかしここで思ってしまうのが

「そもそもスローパーを持って壁から体を離せないんだってば!離した時点で落ちちゃうよ!」

ですね。

そこで「小指側に絞る」の実践です。

騙されたと思って小指側に絞って体の前でホールドを持ってみようとしてみて下さい。

その時重要になるのが「背中で持つ」という例のキーワードです。


「背中で持つ」という言葉に対する漠然とした理解

これもクライミング界ではおなじみのフレーズ

「背中で持つ」あるいは「背中で効かせる」

スローパー得意民は平気でこの言葉だけを投げつけて、それが出来ないカチラーを嘲笑しがちです。

そしてカチラーのあなたは一生懸命背中に力を入れようとします。

この時あなたはどのように背中に力を入れるでしょう?

図5を見てみましょう。

図5

左図では両肩甲骨を背中の中心に向かってギューっと引き寄せるよう力を入れています。

右図は肩甲骨同士は距離を保ったままです。それでいて肩甲骨はやや下に向かいます。


左図のような姿勢をとることを「背中で持つ」と思っている人は多いんじゃないかと思います。

なにせこの姿勢を取るとめちゃくちゃ「今、背中に力入ってるぅ~!」と感じます。

でもこれは実際には主に肩(僧帽筋あたり)に力が入っています。

右図のほうが広背筋に力を入れることができています(右図のほうが広背筋が膨らんでいるのが見て取れます)。

ちょっと二つの姿勢を作ってみて、誰かに僧帽筋と広背筋あたりを触ってもらってみて下さい。

「背中」が広背筋のことを指しているのだとしたら「背中で持つ」を実践出来ているのは右図の姿勢ということになります。

この辺は

力を入れるべきは人差し指側か小指側か

の懸垂している図を参照してもらうと解りやすいと思うんですが、人差し指側に絞りながら懸垂すると自然に肩の位置は上がり肩甲骨が中心に寄ります。

小指側に絞りながら懸垂すると自然に肩甲骨はやや下にさがり、その下あたりの筋肉(広背筋)に力が入ります。

ここでちょっと図1と図2を思い出してみましょう。

図1

図2


図1の引き方を両手で行うと大体図5の左図のような背中の形になります。

図2の引き方を両手で行うと大体図5の右図のような背中の形になります。


「背中で持つ」という謎ワードを漠然と実践しようと思って肩甲骨を真ん中に寄せようとすると、人差し指側に絞る形で引くことになり、肘は開き、頑張ってホールドから抜ける方向に力を込めることになるということですね。


右図のような姿勢を取るためにはやはり小指側に絞る意識が大切です。

小指側に絞る→肩甲骨を下げる→広背筋を使う=「背中で持つ」

というイメージです。

なので「背中で持つ」を実践しようと思うと必然的にホールドは体の前で持つことになります。

前章でスローパーは壁から離れて体の前で持てということを書きましたが、「背中で持つ」ができれば、壁から離れようと特別意識しなくても大体自然とそういうポジションに収まるということになります。

これはスローパーに限らずピンチでもガバでもカチでも適用できる考え方です。

小指側に絞って背中で持つことを意識すると、必然的にホールドは体の前で持つことになり、すると壁と体の距離が適度に保たれ、後ろから前の動きで壁に向かって行きながら次の一手を出すという動作が行ないやすくなります。

スローパーに限らず、デッドで手を出すのが苦手だ、という方もこの方法を意識してみると改善されるかもしれません。


まとめ(パワーも大事)

おおむね「小指側に絞る」がすなわち「背中で持つ」ことに繋がり、スローパーを処理しやすくなるという話をしてきました。

ここで重要なのは、これを実践するにはそもそもある程度背筋は強くなければいけないということです。

「スローパーは得意だがカチが苦手」という人の多くはクライミングの前に何らかのスポーツをやっていたりして背中をはじめとした体幹部の筋力が発達しており、しかし指が十分に鍛えられていない状態だと考えられます。

カチに対応するための指そのものの力はクライミング以外で中々鍛えられるものじゃないし、時間をかけずに一気に成長させられるようなものでもありません(そんなことしようとしたら大抵怪我します)。

なので「スローパーは得意だがカチが苦手」という人にはフィンガーボードにぶら下がったりカチ課題を沢山やったりといった、数か月~数年単位の地道な積み重ねが不可欠になります。

一方で「カチが得意」ということはつまり、地道に積み重ねたクライミング経験が間違いなくあるということですね。

結局のところスローパーは技術だけでは持てません。

当然ですが「背中で持つ」からには背中のパワーがモノを言うということになります。

ただし大抵の場合クライミングをしていれば背中はある程度自然に鍛えられます。

『鉄棒でフルアップの懸垂が5回以上できる』

最低限これくらいができる背筋力であれば、それはかなりスローパーの保持に貢献するはずです(カチは得意と言えるほどクライミングをやってる人ならば難しくない条件かと思います)。

あとは「背中で持つ」技術さえしっかりしていれば一般的なグレーディングとしての3級~2級くらいに登場するスローパーは大体うまく処理できるんじゃないかと思います。

それくらいの懸垂ができません!という人はまず懸垂トレーニングをしましょう。

懸垂10回連続で出来るくらいになれば「背中で持つ」技術さえあれば1級~初段くらいまでの大抵のスローパーは処理できるんじゃないかと思います。


余談

これは筆者の個人的な話になりますが、僕は初めて四段を完登(←これ自慢してますよ嫌な奴ですね)した当時連続でできた懸垂の最高記録は12回でした。

RPグレードに対してあまりにも情けないパワーだとコンプレックスを抱えてもいました。

やはりスローパーはカチに比べればかなり苦手でした。しかし初段レベルくらいまでならなんとか対応できていたと記憶しています。

ここ2年くらい「これじゃいかん!」と懸垂トレーニングに意識的に取り組み、なんとか連続20回くらいはできるようになってきました。

そうするとやはりスローパーの処理の安定感は増してきました。

やはり懸垂は大事ですね。


(おまけ)何故6mmプレートにぶら下がれるのにもっと厚いカチで構成されたカチ課題を登ることができないのか?

beastmaker microsの登場によって、できるだけ薄いプレートにぶら下がる保持力トレーニングはもはやメジャーな方法の一つになってきました。

そんな最近ちらほら見かけるようになったのが

「beastmaker micros 6mmにぶら下がれるようになったのに、いうほどカチ課題登れるようになってない現象」です。

これも小指側に絞ると人差し指側に絞るの違いである程度説明できると思っています。

microsのような薄いプレートにぶら下がろうとするとき、図6のような姿勢を取る人は結構多いかと思います。

図6

「ホールドの下に入って効かせる」をやっているということですね。

この姿勢からだとここからムーブを起こせません。

ここから上に手を出すためには、動きの中でホールドの下に潜り込んでいる頭や胸を一旦後ろに出してこなければなりません。

ぶら下がっているだけで精いっぱいの悪いホールドでそんな動きをしたら後ろに吹っ飛んでしまいます。

純粋に指に強い刺激を与えて腱や関節を鍛えるという目的としてはこのような姿勢でぶら下がるのも良いと思います。

しかしそのホールドを登りの中で扱えるようにするためのトレーニングになっているのかと問われると疑問が残ります。

図7のような姿勢でぶら下がってみるとどうでしょう。

図7

この姿勢からなら上にあるホールドを取りに動き出せそうです。

図6の姿勢でも図7の姿勢でもどっちでもぶら下がれます、という状態になれば、それはきっと同じ厚さのホールドを登りの中で扱えると言っていいと思います。

どっちかはできるけどもう一方はできないという人はできないほうを練習してみましょう。

beastmaker microsのような厳しいプレートはついそれにぶら下がる事自体が目標のチャレンジになりがちですが(それはそれで楽しいので良いとも思います)、それが登りの内容に直結する良質なトレーニングになるかどうかは目的意識と取り組み方に左右されると思います。


参考

ホールディングのコツ ボルダリングやクライミングにおいて保持力を上げるための握り方

https://www.youtube.com/watch?v=GBaYazW8s7c

理学療法士のクライマーの方が上げている動画です。

身体の専門家からの目線で、小指側に絞って引くことのメリットがわかりやすく解説されています。


【部活道】8箇条 前編 ボルダリング・クライミングの基礎がわかる!

https://www.youtube.com/watch?v=gAjtxrn-0xw&t=3s

ボルダリング界隈の人気チャンネルである、部活道チャンネルより。

スローパーに限らず「前で持つ」ことと「小指から」持つということを『型』の一部として提唱しています。


スローパーが持てるようになる〈4つのポイント〉‼️ by楢崎智亜

https://www.youtube.com/watch?v=7gXJap42ZP8

誰もが知っているプロクライマー楢崎智亜氏の解説。

3:00あたりから「肩甲骨を下げる」ことについて語られています。

ここで紹介されている「スローパーを持てない人がよくやっているパターンとしては、肩が上がって肘が開いているパターン」

は、まさに人差し指側に絞る意識と「背中で持つ」の間違った理解から生じるフォームだと思います。

4:15あたりから壁と体を離すことの重要性について語られています。

2020年11月19日木曜日

力を入れるべきは人差し指側か小指側か

 ◯はじめに

先日ツイッターでこんなアンケートをとってみました。

人差し指側と小指側どちらに力を入れるか。


そもそも全体がかなり少ない票数なので、

どちらが多いかというのは特に大きな意味はありません。

ただ「意見が分かれている」ということが重要です。

これは単に好みの問題でも、どの指が強いかの問題でもなく、

もっと大きく身体全体の動かし方に関わってくるものです。

その違いを自分なりに分析し、まとめてみたいと思います。


◯ぶら下がり姿勢の違い

ホールドを持つとき、どちら側に強く力を込めるかで姿勢に違いが表れる。


◯懸垂するとどうなるか


(※違いを顕著にするためにかなり大げさに力の偏りを作って保持しています。)


◯何故このような現象が起きるのか?

人差し指側に力を込める場合、腕は内旋(内側に旋回)しようとする。

小指側に力を込める場合、腕は外旋(外側に旋回)しようとする。

この腕の内旋・外旋の動きが肩の動きに連動し、肩の動きは背中や胸、首の動きに連動する。


◯「腋を締める」というワードについて

スポーツの場でよく言われる「腋を締めろ!」

それを、腋の下に空間が空かないように二の腕をぴったり体にくっつけることだと誤解している人は多い。

しかしそれは「腋を閉じる」という動きであり、腋が締まるとはまた別の運動だ。

「腋を締める」は「腋を閉じる」ではない。

「腋を締める」というのは、ざっくり言うと肩関節を外旋させる動きであると言っていい。

肩関節がしっかり外旋できていれば腋は閉じていなくてもいい。


「腋を締める」のイメージを掴むために一番簡単だと思う運動をしてみると。


こんな感じ。

かなり乱暴に言えば「腕を外旋させれば腋は締まる」と言っていい。


ホールドを持つときに当てはめると

小指に力を込める→腕が外旋しようとする→肩が外旋しようとする→腋が締まる

人差し指に力を込める→腕が内旋しようとする→肩が内旋しようとする→腋が開く

ということになる。


◯腋を締めるとどうなるか

先述した腋を締める運動をしてもらった状態(掌を前方へ向けて腕を下にたらした状態)で

上体を左右に動かしてみて欲しい。

特に意識をしなければ腕は体の動きとほとんど同調して動くはずだ。


逆に、そのまま手をひっくり返して手の甲を前に向けた(=腋が締まっていない)状態で同じことをすると、身体と腕は比較的バラバラに動くはずだ。

つまり、腋を締めることで得られる効果は「腕と体幹部の連動性が高まること」にある。

腕の独立した自由度を奪うことと言ってもいい。

腕の独立した自由度を奪うからこそ腕の「余計な動き」を抑制して肘や肩などを痛める要因を排除しやすいという見方も出来る。


◯小指に力を入れるのが正しい?

小指に力を込める=腋を締める→腕と体幹部の連動性が高まる。

ということをここまで書いたので、

じゃあ結論として

「小指に力を入れるのが正しいです」

と言いたくなるが、一概にそうも言えないのが難しいところでもある。

先述したとおり、腋を締める事は腕の独立した自由度を奪うことにも繋がる。

それはやはりデメリットとしても機能する。


◯遠い距離まで届くのはどちらか

これは実際に壁でやってみると分かるが

ギリギリ手が届くくらいのホールドに向かって

①腕を内旋させながら人差し指で触れに行く

のと

②腕を外旋させながら小指で触れに行く

のではあきらかに①のほうが距離を出しやすい。


◯壁との距離の違い

懸垂した時の姿勢を改めて見比べてみると分かるが、

小指側の場合よりも人差し指側の場合の方が壁との距離が近くなりやすい。

よって

・壁から距離を取りたい時

・ホールドを体の前で持ちたい時

は小指側に力を込めるのが良いと考えられ、

・壁にくっつきたい時

・ホールドを体の横(あるいは後ろ)で持ちたい時

は人差し指側に力を込めると良いと考えられる。


前傾壁で比較的ポジティブなホールドを保持している場合では小指側に力を入れた方が好ましい姿勢を取りやすいだろう。

垂壁やスラブ等で、下に効かせることでしか保持しきれないホールドを扱っているような、所謂「壁に入る」姿勢を強要させられる時には人差し指側に力を込めなくてはならない状況があるはずだ。


これは完全に推測でしかないが、

前傾壁では無類の強さを発揮するが垂壁スラブは苦手という人はナチュラルに小指側に力を込めて登っている傾向にあり、

逆に垂壁スラブでは全然落ちないが前傾壁で前後の動きを作るのが苦手という人はナチュラルに人差し指側に力を込めて登っている傾向にあるのではないだろうか?


◯違いのまとめ

人差し指側に絞る(内旋)

・壁にくっつきやすい

・腕力や肩の力で引くイメージ

・遠くまで手が届きやすい

主に垂壁・スラブ等で壁に貼りつく場面や、凹凸のある壁やハリボテ・ボリュームの下に入り込むような動きの際に有効?


小指側に絞る(外旋)

・壁から距離を取りやすい

・体幹の力で引くイメージ

・安定感が出る

主に前傾壁等で壁から距離を取って構える際や、強くホールドを引き込む動きの際に有効?


これらの違いを踏まえ、状況や自分の体質や体格、筋肉のつき方等に応じて使い分けることが出来ればクライミングの幅は広がるだろう。

例えば、ギリギリの遠い距離をデッドで出す一手のような状況で、

小指側に力を込め腋を締めた状態で構え、体幹の力を使って強く引き、狙う腕は内旋しながら次のホールドに向かい、ホールド捉える際に人差し指側に力を込めてホールドの下に入って止める。

といった、短い瞬間の中での使い分けの仕方も考えられる。

上腕の力や肩周りの筋肉が強固な人は基本的に人差し指側に力を込め続けるのがしっくりくるかもしれないし、腕よりも体幹の力がしっかりしている人は小指側に絞って体幹の力を動員するように登るのがいいかもしれない。


◯おわりに(個人的な嗜好)

ここまでそれぞれの違いを比べながら

「どっちも違ってどっちもいい」

というような書き方をしてきましたが、

筆者の個人的な嗜好としてはやはり

「小指側に力を込める」

のを基本としたほうが良いと思っています。

一番大きい理由としては、こちらのほうが怪我をしにくいんじゃないかということです。

僕は10年以上クライミングをしていますが、肩や肘周りに大きな故障を抱えたことがありません。

それに(はじめは無意識のうちに、のちに意識的に)小指側に力を込めることを基本として登ってきたからというのは大いに関係していると思っています。

また、相当な腕や肩の強さを持っていない限り、体幹を動員して動いた方が登りは簡単になるだろうし、

基本的には壁から離れた位置で構えて、前後の動きを意識してムーブを作った方が登りが簡単になるだろうと考えているからです。

壁に貼りついた状態を自分のベースの構えとして持つのは、視野も狭くなるし大きな動きを安定して生じさせづらいとも思っています。


ただ、人差し指側に力を込める事を基本として登っていて、故障も無く成果を上げ続けている方も多いかと思います。

そういった方に人差し指主体での登り方のコツのようなものを教わってみたいという気持ちもあります。

「みんな違ってみんな良い」でもなく「アレは間違いでコレが正しい」でもなく

それぞれの手法の特徴を細分化して分析して議論して好みも交えて細かく取捨選択していくことが、自分のクライミングを進歩させていくんだと思います。

2019年3月9日土曜日

【検証】チョークは本当に滑り止め効果があるのか

この間書いた「チョークについて」

これが思ったより反響があり、何人かの間で意見が交わされていたようなのでちょっとさらに突っ込んで分析してみることにした。

前回の記事で僕は自信満々に
「チョークは滑り止めである」
と断言し、
「チョークは吸湿のみが目的であり滑り止めではない」
という意見を思い切りこき下ろしたわけだけれども、

「チョークは滑り止めである」説も根拠は単に僕の感覚的なものでしかなかった。

僕はもうほとんど前提として、チョークに滑り止め効果があるし、それをほとんどのクライマーが了解しているものだと思っていた。
しかしやはり「チョークは滑り止めではない」と実感を持って発言している方もいる。


じゃあやはりここは実験してみるしかないだろう。

感覚値ではなく、実際値を出してみよう。



僕は生粋の文系人間なのでF=なんちゃらみたいな数式を持ち出して計算したりすることはとてもじゃないができないので、

今回は本当に初歩の初歩、小学生の理科の授業レベルの実験をしてみた。


まず用意したのは

・一辺60mm程度の大きさの立方体の木片。
・革(レザー)
・ゴム

革は一応、仮想人間の皮膚として。
表面と裏面をそれぞれ試してみることにした。
実際の人間の皮膚とはかなり違いがあるけど、それでも多少近いものはあるだろうという期待を込めて。

ゴムはホームセンターで滑り止め用として切り売りしている厚さ1mmのゴムシート。

木片の一面の大きさに合わせてゴムと革を切り、木片に張り付ける。



①何も貼っていない面
②革(表面)が貼ってある面
③革(裏面)が貼ってある面
④ゴムが貼ってある面

がそれぞれ出来上がる。

それぞれの面すべての側面にあたる面にフックを取り付ける。

台座として用意したのはコチラのホールド。


(木片の写真もホールドの写真も濡れているのは実験後に洗ってから撮ったからです)

このホールドの上に木片を置き、引きバネをフックに引っかけ、引っ張る。
バネがどれくらい伸びた時点で木片が動き出すかを計測した。

(木片だけだと軽すぎてバネが伸びるまでもなくあまりにたやすく動いてしまうため、水の入ったペットボトルを重しとして置く)


比較した条件は以下の4パターン。

条件①
何もつけない状態

条件②
チョークをまぶした状態

条件③
ホールドと木片を濡らした状態
(流水で洗うように濡らし、拭いたり乾かしたりしない状態)

条件④
湿った状態にチョークをつけた状態
(条件③の試行直後、さっと余分な水分を拭き取った上でチョークアップ)


結果は以下の通り。


表にまとめるとこうなる。


(動画撮影した以外に、もう2回づつ試行し、3回の試行の平均値を記した)
(それぞれの素材の最高値は黄色、最低値を灰色で塗りつぶしている)

手で引っ張っているので引っ張り角度や速度等が完全に一定ではない上に、肉眼で観測しているので細部の数値まではっきりしないし、誤差はかなりあるだろう。

しかし条件によって明らかに数値に大きな差が出ている。


まず、単純にチョークの有無について。

これはまず木で倍以上の差が出ているのが特筆すべき点だろう。
革(裏面)もかなり数値が変化している。

一方で革(表面)やゴムの場合はほぼ数値に変化が無い。微増といったところ。
これは試行上の誤差と言ってもいいのかもしれない。

しかし、この試行だけでもまず少なくともチョークをつけることで
いくつかの素材の場合大きくフリクションが向上するし、
どの素材でもフリクションが減少することはないということが分かる。
(ソールにチョークを塗るという行為は意味は薄いということはあっても「逆効果」とまでは言えない⁉)

次にチョークを水で洗い流すついでに、
台座のホールド・木片ともに濡れた状態で試行した。

驚くべきことに、革(裏面)はこの状態が最も数値が高くなった。
その他の素材も明らかに乾いた状態よりも数値が高い。

実験前の予想では、木あるいは革に関しては乾いているよりも湿っていたほうがフリクションが向上するかもしれないとは予想していたが、
まさかゴムでも湿っていたほうが数値が高くなるとは思わなかった。

そしてゴムでのみ、湿っていた場合に滑り方が変わるもの興味深い点だろう。
他の試行では一定のラインを超えると弾けるように一気に引っ張られたのに対し、水分+ゴムのパターンでのみ、滑り始めのラインを越えてからも少しづつ滑っていく。
ただこれが一体何を意味するのかというのはこの時点では分からない。
(頭のいいひと誰かこの現象の意味を考えてください)

最後に、湿り+チョークの試行。
革(裏面)以外で、この状態が最も高い数値が出た。
そしてさらに興味深いのが、通常状態ではあれだけ数値にバラつきがあったすべての素材で似たような数値を記録したという点だ。

この結果から、
・「乾燥したチョーク」よりも「水分を吸ったチョーク」のほうがよりフリクションを生んでいる。
・「水分を吸ったチョーク」は元の素材が持つフリクションをある程度無視してほぼ一定のフリクションを発揮させる。
というようなことが言える。


本実験の結果だけを見れば、やはり
「チョークには滑り止め効果がある」
と言えるだろうし、
さらに
「水分はフリクションを強める」
とも言えるだろう。


ただ、今回の実験がそのままクライミングの状況に当てはめられるかといったらそうとも言えない。

・あくまで使用した素材は木や革であって人間の皮膚ではない。
・ゴムもクライミングシューズのソールに使用されるハイテク素材ではない。
・400g程度の荷重しかかかっていない。

という点で、人間がホールディングする状況・クライミングシューズがスメアリングする状況とは異なっている。

もう少し実験の規模を大きくして、もっと素材を厳選して(せめてゴムはビブラムのシートを使うとか)やっていけば結果は変わってくるかもしれない。

そもそも実感として、登っていて「水分のせいで滑る」と感じることは多々ある。
今回の実験結果が全てであるとしてしまうならその実感は無視されることになる。

かかる荷重、接地面積、水分の過多、チョークの過多等によって結果はまた変わってくるだろう。


しかし少なくとも
「チョークの役割は水分を飛ばすだけであって、それ自体にフリクションを生む効果は無い」
という説を否定し、
「チョークは滑り止めである」という説を立証するのには今回の実験は十分な結果と言えるのではないだろうか。

今回の実験をするにあたって、いくつかの予想は当たっていたし、
またいくつかの予想は覆されもした。

やはり個人の経験と感覚などというものは多かれ少なかれ何かしらの間違いを抱えている。

「試してもいないのに分かったつもりになる」
ということがいかに危険かということを再確認したし、少し反省もしている。


ちなみに今回の実験に使用したチョークは「東京粉末BLACK」である。
まさか……BLACKがすごいだけなのか…?

…って冗談みたいに言ったけど、ひょっとしたらそうだという可能性も0じゃないから怖いところだ。


今回の実験をするにあたって参考にした動画がコチラ。


大人になってからすると「理科の実験」って楽しいね。


2019年3月7日木曜日

サイファーについて

サイファームーブが苦手。

といったクライマーは存外多い。

僕も結構そのクチで、始めは感覚的に全然うまく行かなくて、

「ああ、これは俺のタイプに合わない動きなんだ」

と思って全然やらなかった。

でも色々観察やら試案やらを経て、今ではむしろ結構得意なムーブって言えるようになってきた。

そんなわけで、

色々なクライマーを見て思う「サイファームーブとはどのように動くと良いのか」という気付きを少しまとめてみようと思う。

何も
「これがサイファームーブのコツだ!」
「こう動かないとサイファーとは呼べない!」
「必ずこう動くべきだ!」
とまで言うつもりはないが、実感として「こうやったら上手い事ハマったよ」という報告みたいなものとして捉えてほしい。


・足の振り方の誤解

サイファーが苦手と言うクライマーは

「サイファーってどんなムーブ?」

という問いに対して

「足を振り子のように左右に振ってその勢いで跳ぶムーブ」

という認識を持っていることが多い。

これが完全に間違いだと言うつもりはないが、この認識がサイファーという動きを見よう見まねで実行しようとしたときに全然上手くいかないという体験をさせる大きな原因の一つなんじゃないかと思う。

まず一つ目のキーワードは「左右に振る」

登っている姿を後ろから何となく見ると確かに壁に対して左右に足が振られているように見える。

しかし【体の向き】に対して考えた時、本当に足は左右に振られているのだろうか?

これはほとんど断言できることだが、
上手に安定したサイファームーブを起こしているクライマーは足を体に対して左右に振ってはいない。

足は体(骨盤の角度)に対して前後に振っている。

ちょっと地面に立って足を振ってみて欲しい。
軸足の後で足を左右に振ってみても、とても安定などしないし、全然力強く振ることができない。

軸足の横で足を前後に振ると、とても安定して力強く振ることができる。



【足は身体に対して左右に振らずに前後に振りましょう】

これがまず今回言いたい結論の一つ。


二つめのキーワードは「振り子」

振り子という物には「関節」が存在しない。
紐だったり棒だったり、それ自体は自発的に動いたりしないものを重力と慣性の力で行ったり来たりさせる機構である。

その振り子のようなイメージをして足を振ろうとすると、当然股関節より下の関節の可動のコントロールを放棄して、脱力したような感じで振ろうとしてしまう。

じゃあ地面の上で足をすべて脱力して前後に振ってみて欲しい。
決して体が上に持ち上がるような力は生じないはずだ。
ただ前後に体が引っ張られて安定性を欠くだけである。

足の振りで体を上に持ち上げるには、振り子の慣性の力だけでなく、筋力を使って足を強く振り上げる必要がある。

ここで大切なのは膝。

腹筋や背筋、腿以下の筋力を使い足を振り、
振った足の軌道が上向きに移行する辺りで膝をぐっと使ってその軌道をさらに上方向に修正してやることで、足の振りが体を持ち上げるための力として有効に利用できる。

足を振るイメージとして適切なのは「振り子」ではなく、

自分のへその前50cmくらいの位置にボールがあって、それを思い切り上に蹴り上げるようなイメージがいいかもしれない。

実際に地面の上でしっかり強く足を振り、タイミングよく膝を動かすと、軸足を動かさなくてもそれだけで少し体が浮く。

これをそのまま壁の上で行いましょうということ。



・壁と体の間の空間はどうなっているか

かなり昔に書いた通り(今読み返すとかなり粗い理屈でおかしいところも多々あるけど大筋の意見は変わっていない)、
ダイナミックムーブを起こす際大切なのは、壁と体の間の空間を意識することだ。

以前の記事では基本的に「動きだし前に壁と体に空間を開け、動き終わりに壁と体の間の空間が小さくなっているように動く」
というふうな趣旨だった。
(というかこの時って全部敬語で書いてる……いつからこのブログ敬語で書かなくなったんだっけ……)

サイファーで動く際も勿論その考え方は重要で、そしてさらにその空間の形についてもう少し複雑に(複雑ってほど複雑じゃないけど)考える必要がある。


まず、前項で【足を前後に振る】と書かれているのを読んだ時点で異論を述べたくなった方はいないだろうか?

「そんなふうに振ったら足が壁を蹴っちゃうじゃん!」と。

そう。
それは実に全うな考えで、なのでそうならないために、足を振る時には身体(少なくとも腰より下)を壁に対して横に向ける必要がある。

壁と腰が平行に向かい合っていては足は振れず、その状態で足を振ったとしてもそれは左右に足を振っていることになり、不安定で力の無い足振りになってしまう。
左右に足を振ることのデメリットは実は不安定で力が弱いだけでなく、もっと致命的なデメリットとして、「腰を壁から遠ざけてしまう」というものになる。

足を左右に振ろうとすると、振っている足は体の後方で楕円を描く様な軌道で戻ってくる。
その際、振った足が腰を後方に引っ張るような力が生じることになる。



もし足を左右に振って勢いをつけて次のホールドに届いたとしても、そのホールドは腰が後ろに引っ張られながら掴むことになり、非常に難しいタイミングと力が要求されてしまう。

足を前後に振るためには、
振る足のほうの腰を壁から遠ざけ、壁と腰に角度をつける。

つまり体の前面は壁ではなく次にとるホールド方向を向く。



この時、壁と体の間の空間は変形された形をとることになる。

両手両足をついて真上に出るようなムーブを起こす場合は、
なるべくきれいな四角形(台形)の空間を作って、素直にそれを潰すようなイメージで出て行けばいい。



しかし体を横に向けた場合、
壁と体の間の台形の空間は三角形に近い形に歪むことになる。

そして勿論次のホールドを取った時にはこの空間は潰れていなければならない。



そのためにはムーブの途中に半身をひねる必要がある。

これはドアをイメージすると分かり易いと思う。

残すほうの手を蝶番、体そのものがドアであると見立てて、
動きだしの前に大きくドアを開き、ドアを閉じながら動き、動き終わりにはドアは閉まっている。
そういうイメージ。

足の軌道も腰の捻転に併せて少し変化することになる。
最終的には足の軌道は壁と並行ではなく少し壁に向かっていくような軌道になる。
いや、腰の捻転に併せてというよりは足の軌道を壁に向かわせることで腰の捻転を生じさせるという順序になるのか?
まあとにかく振り上げきった瞬間にはつま先や膝頭の向きは壁の方向を向いているはずである。



このように、三角形に近い形の空間を作り、その空間を潰しながら動くことで、
取りに行く方の手、肩、腰が、壁に向かっていきながら次のホールドをキャッチする事ができる。

動き出し前の壁と体の間の空間が偏りの無い四角形の場合、なんとなく足が振りにくいはず。
そして空間の三角形の向きが逆の場合(出す方の肩が壁に近くて残す方の肩が壁から遠い状態)全然サイファーでは上手く飛び出せないはずだ。


・視線の動きと頸反射

頸反射という単語を聞いたことがあるだろうか?
これはごく簡単に言うと
首の動きに反応して体の他の部分が連動的に動くような現象のこと。

神経系の働きによるものらしいけども、詳しいメカニズムは良くわからない(笑

以前、ランジについて書いた時に
「残した方の手を見ると止まる」といった趣旨のことを書いたけれど、これも実は頸反射の一種なんじゃないかと思う。

今回言いたいこともまさに「残した方の手を見る」ということで(というか大体のムーブにおいてこの視線移動は正義だよなあ)

前項での腰の捻転の動きについてを言葉にすると、結構な長文になっているし、なんだか複雑そうでよくわからないと思う方も多いはず。

しかしこの視線移動による頸反射の利用によってあまり難しく考えずに動き出し前の空間作りと、動きの中での腰の捻転を生むことができる。

まず、動き出し前
単純に目標のホールドに顔をしっかり向けてよく見る。この時、少し頭を後ろに反らしてもいい。
すると自然に肩も目標方向に開き、そこで腕を伸ばして体を後ろに引けば三角形に近い空間が自然と開くはずだ。

次に、
体を振って飛び出して、目標のホールドを取る直前には残した方の手に振り返る。
この意識を強く持っていれば、ムーブの途中に「首が振り向く」という動作が必ず内包される。
そしてこの「首が振り向く」という動作に連動して肩が回転し、腰も回転する。

このように、ただ視線の方向を意識して移動させるだけで、体も自然とそれに併せて動いてくれるはずだ。

勿論、この視線だけでゼロからすべてが解決するわけではないが、
「概ねフォームはできているはずなのに上手くいかない」
「ホールドには届いているのに掴めずに落ちる」
くらいの段階に居る場合、あとはこの視線だけを意識すれば簡単に上手く行ったりすることは多いと思う。


長々と理屈っぽく書いたので
「いや、わけわかんないよ!」
「そんな理屈とかどうでもいいよ!」
「もっとわかりやすく一言で!」

そんな風に思う人も多いと思うのでなるべく短く要点をまとめると

①まず体ごと目標ホールドのほう向いてよく見ましょう
②足を前後に強く振りましょう
③動き終わりの辺りで振り向いて残した方の手を見ましょう

このへんを意識するだけでサイファーが結構サマになってくるんじゃないかと思う。



・最後に

今回の記事を書くにあたって何度も観た動画がコチラ

プロクライマーCarlo Traversiがピョンピョン跳ぶ楽しげな動画です。

まず注目して欲しいのは1:15くらいの、
黒板になんか書いてる後ろで、カルロが足振って跳んでいるところ。
この振りかた!
この跳びかた!
これをやりましょう!
っていうことを理屈ったらしく長々書いているのがはじめに書いている
【・足の振り方の誤解】
感覚派の方はもうこんなん読んでないでそこを観て下さい。

次に観て欲しいのは1:26~1:37くらい
遠いランジを一度失敗して、足の振りを確認してからもう一度跳んで成功させるシーン。
(失敗シーンは演出上意図的にやっているんだろうけど)

失敗シーンは、足も良く振れているし、腕も良く引けているけど、右半身が全然壁に向かって捻転していっていないのが分かる。

成功シーンは、右半身がギュルって感じで捻転して壁に向かっている。
足を左に振りきっている瞬間、腰は壁に垂直くらいまで開いているのに、右手を離した瞬間くらいには腰の角度は壁と並行まで閉じられているのが分かる。



そして止めた時には視線は左下。そうすることで右肩のポジションが右手のホールドの下にしっかり入って振られないぶら下がり姿勢を実現している。

2:05~の横からのアングルを観ればいかに右腰が開かれているかと、振っている足のつま先の向き、膝の向きがどう変化しているかが分かり易い。


結局のところ百聞は一見に如かず。
上手い人の登りを見て学ぶほうが文章を読むよりもよっぽど分かり易い。

でも、
「上手い人は上手いからできるんでしょ?」
「強いから遠くまでとべるってだけでしょ?」
「保持力が違うから…」
そんな風に言って

「強い人は強い人、自分は自分」

みたいな感じで他者の登りから学ぼうとしない姿勢では、いくら上手い人の登りを見てもなにも学びとれることはない。

サイファーだったら

「なんか強い人が足を横に振って跳んでた!カッコいいからまねしたろ!」

くらいの気分でなんとなく真似して(それはそれで良いことだと思う)
で、出来なくて、

「ああーアレは強い人専用ムーブだわー。弱い俺には出来ないやつだわー」

ってなってゆくゆくは

「サイファー苦手です」

みたいに言うんじゃなくて、
なんとなくカタチだけそれっぽく真似しようとせず、もっとよく見て、

【どういうフォームでやればいいのか】
【そのフォームにはどういう意味があるのか】

ということを観察して、考えたりすること。
あとは手本となる上手い人に聞いたり、仲間と技術的なことについて話し合ったりすること。

そういうことが結局一番大切なんだと思う。

身体的に強くなるってことには、年齢だったり骨格や体質だったりでなにかしら限界はあるかもしれないけど
技術的なことは「上手くなろう」という意思さえあれば誰でもいくらでも上手くなれるはずだから。

でもこの「上手くなろう」という意思を持ち続けるっていうのもまた難しい話で……

まあそのあたりの話はまた別の機会に。

2015年7月29日水曜日

クロスムーブ理論―2種類のクロス―

最近は岩行くたび雨。

どうなってんだまったく。

今日なんてエリア到着と同時に豪雨でとんぼ帰り。

酷い。


ブログの更新も随分と止まっている。



ということでまた理論系でも書いてみよう。


今回のテーマは

「クロスムーブ」


前回は「デッド」で前々回は「ランジ」

で今回はクロス、と、段々内容が地味で基礎的なほうになってきていますね。


さて

前置きはさておき、そろそろ本題に入りましょう。


今回語ることは副題の通り

「2種類のクロス」

内訳は

「閉じるクロス」


「開くクロス」

の2つです。

まずは以下の2つの画像を見て下さい。


Aのホールドが左手で元々持っていたホールドで、Bのホールドに向けてクロスで右手を出している、という状況です。


それぞれのムーブでは「力の加わる方向」がまるで逆方向です

しかし、

このムーブはどちらも「クロスで右手を出す」と言われます。
ちょっと問題だと思いませんか?


はじめに断っておきますが、

この開くクロスと閉じるクロス、

どちらが良い出し方でどちらが悪い出し方かというようなことはありません。

場合によってどちらの出し方が適切かが変わるというだけです。


最近色々なクライマーの登りを観察していて思うのですが、

この2つを明確に区別できていないクライマーが非常に多いです。

特に保持力と腕力が特に強いクライマーは

クロスといえば「閉じるクロス」だけしか思いつかないというような人も居ます(マジで)。




じゃあどんな状況でこの2つを使い分けるのかということについてですが、

まずはじめに

ホールドの向きを考えましょう


もう一度画像を見て下さい。

「閉じるクロス」の例の画像では

AのホールドBのホールド右下に引ける向きに付いています。

この状況で「開くクロス」をしようとすると、Bのホールドを取った時点で左下に滑り落ちます。

逆に

「開くクロス」の例の画像では

AのホールドBのホールド左下に引ける向きに付いています。

この状況で「閉じるクロス」をしても、Bのホールドに手が届いてもBのホールドを有効に保持することができません。


次に考えるのは

ホールドの信頼度です


Aのホールドがガバでしっかりと保持できるがBのホールドは持ち辛いカチなどであれば、しっかりとAのホールドを保持してスタティックに「閉じるクロス」で出したほうが確実でしょう。

逆に
Aのホールドは悪いがBのホールドはガバであるような状況であれば思い切って「開くクロス」で勢い良く体ごと左にスライドしてBのホールドにしっかりと体重を預けるべきでしょう。

クロス方向に片手でランジに行く時なんかはかなりの確率で「開くクロス」を選択することが適切になると思います。


先に保持力と腕力の強いクライマーは「閉じるクロス」ばかりする、というようなことを書きましたが、
それは彼らにとってAのホールド(継続して保持しているホールド)は大抵信頼できてしまっているからです。彼らにとっては「まだ触っていないガバ」に体を預けに行くよりも「今持っているカチ」を徹底して握りこむほうが信頼に足るムーブだということでしょう。強すぎるというのも考え物ですね。



・ホールドの向き
・ホールドの信頼度

この2つ以外にも色々と課題に応じて条件は重なるでしょう。(例えば足の位置とか、次のホールドまでの距離とか)
さまざまな要素が複合的に作用してムーブは決定されるべきなので、それらの条件を細かくリストアップすることはちょっとここでは難しいので割愛します。



今回言いたかったことは、
「クロス」と一言で片付けてはいるが、全然違うムーブがそれぞれ含まれているんだということ、
それと、ホールドの配置をよく考えてムーブ選択をしましょうということです。


ものすごく基本的なことですね。

しかし、

基本的なことっていうのは無意識にやっていることだから、強く意識しないとなかなか理論も何もないと思いがちです。

そういった意味では基礎的でかつ些細な部分に着目することこそ、難しく高度なことだと言えるのかもしれません。


かのイチロー選手もこう言っています

「自分で無意識にやっていることを、もっと意識しなければならない」

と。

僕のこの作業も、記事として成文化することで、無意識にやっていた(あるいはぼんやりとしか意識していなかった)ことをはっきりと意識するためにやっているわけだし。


ある程度のレベル(3級以上くらい)のクライマーなら大抵、

この「開くクロス」と「閉じるクロス」の使い分けは出来ているはずです。

しかしそれを意識して使い分けているかとなると、話は違うでしょう。


今回のコレが
そんな人たちの、

無意識を意識に変えるためのきっかけに少しでもなってくれればと。




2015年5月18日月曜日

デッドポイント理論―壁との距離―


以前ランジのコツについて書いた、


っていう記事があるんですが、

実はそれがこのブログ内で最も読まれている記事なんですよ。

次に多く読まれている記事の倍以上。

普段の日記みたいな記事に比べると約10倍くらい読まれてます。

意外、というかなるほど、というか。


なので(ってわけじゃないけど)

今回もそのようなことを書こうと思います。

今回の内容はある意味前回の理論の応用であり、ある意味前回の理論の下にあるものでもあります。

今回のキーワードは

壁との距離

です。


クライミングのムーブについて語るとき、

どうしても

上下左右二次元的な動きだけを考えがちです。

が、

実際はそこに前後の動き(=壁と体の距離)が重要な要素として絡んできます。


まずはこの動画を見て下さい。




次にこの動画を



前者の動画を、後者の動画をとします


二つとも、同じホールドを使用しています。


ちなみに持っているホールドとしては、

右手:悪目のカチ
左手:けっこう持てるピンチ
左手で取りにいく:悪目のカチ

となっています。左足は小さなホールドを踏んで右足は切っています。


見ればわかると思いますが、

Aのほうが安定しており、

Bのほうが不安定です。

両者の違いは、

次のホールドを取りにいく前と後の壁と体の距離です。


Aでは

ホールドを取りにいく前に体を壁から離しています。

結果、ホールドを取った後のほうが取りにいく前よりも体が壁に近づいています。

Bでは

ホールドを取りにいく前に体を壁に密着させています。

結果、ホールドを取った後のほうが取りにいく前よりも体が壁から遠ざかっています。


つまり

Aは
壁に向かいながらホールドを取っている。

Bは
壁から離れながらホールドを取っている。

ということです。


さらにわかりやすく画像で解説します。

まずはA

①取りにいく直前


②手を出した直後


③取ったところ

それぞれの時点での腰の位置を水色の丸数字肩の位置を緑の丸数字で表しています。

①~③に以降しながら、ほぼまっすぐに壁に向かって近づいていっています。



次にB

①取りにいく直前


②手を出した直後


③取ったところ

①~②の間ではほとんど腰と肩の位置は変わっていませんが、
③に到達した時点では肩と腰の位置は①時に比べ壁から遠ざかっています。


ここまで敢えてハッキリとはAとBどちらが良いとは言及していませんが、

まず大半の人は

AのほうがBよりも良いと思ってくれたと思います。


結論を一言で言いますと。

デッドポイントの一手を出す場合は、

壁から離れてからムーブを起こしたほうが良い。


ということになります。

壁から離れてからムーブを起こすと、
壁に向かっていきながら次のホールドを取れる。

壁に密着した状態からムーブを起こすと、
壁から剥がされながら次のホールドを取る事になる。(=剥がされる力に耐える必要がある)

ということです。

「壁から離れないために壁から離れる」という、一見矛盾したような一文になりますが、コレが今回の結論になります。


さて、ここでデッドポイントの一手を出す場合と微妙に状況を限定したのは、

スタティックに動く場合においてはこれが適用されない場合も多いからです。


ここでBの①~②間の肩と腰の位置関係を見て下さい。
殆ど変わっていません。それは右手や体幹等の力で耐えているからです。

そのまま右手でロックすることが出来ていれば、

常に腰と肩の位置を壁に密着させたまま③を迎えることが出来たはずです。

そのようにスタティックに動けるような状況ではわざわざ一旦壁を体から離す必要性も無いでしょう。
特にスラブやフェイスなどでは、スタティックに動いている分には壁から剥がされる力はあまり生じません。



さて次に補足として、

キャンパシングの動きについて見てみましょう。

また動画から。





じゃあ今度は前者の動画を、後者の動画をとします

身体の振られに注目してみましょう。

aよりもbのほうが振られが大きいように見えます。

これも、前述した壁との距離によるものです。

また図で補足します。


ではaから(解りやすく、最も大きな動作の2手目で解説します)
またそれぞれの時点での腰の位置を水色の丸数字肩の位置を緑の丸数字で表していますのでそこに注目してください。

①手を出す直前


②手を出した直後


③取った瞬間


④取った直後の振られ


⑤振られ収まり



次にb

①手を出す直前


②手を出した直後


③取った瞬間


④取った直後の振られ


⑤振られ収まり


見れば解るとおり

aのほうは肩及び腰はやや後方に下がりながらも基本的には上方に向かい、取った瞬間からその後大きく後方には引っ張られてはいません。

bのほうはほぼ水平に肩及び腰が後方に移動しています。


お分かりの通り

aは手を出す前に、体を壁から離しています。

bは手を出す前に、体を壁に密着させています。

それにより手を出した後の、後方へ行く距離が変わっています。


さらに体の高さも違いますね。

さすがにキャンパなので前述のデッドの時と同じように、初動時に壁から体を離していてもそこから壁に向かうということはできず、後方にも向かっています。

しかし、同じ距離を水平に移動するのではなく、上方への角度をつけて斜め上に出てやれば後方へ引っ張るエネルギーは少なくなります。

極端な話、100mの高さにボールを投げて1m前に進んだ、だとそれはもうほとんど垂直に投げたのと同じですよね。
(これで分かるかな?・・・)

このように、なるべく「下から上へ」向かうというのも「前から後ろへ」向かう力を抑制するのに役立つということです。



aのような動きをするために重要なのは、

体の前方でホールドを持つことです

これは意外と難しいです。

人は悪いホールドを保持しようとするとき、どうしても肩から先の関節を縮めて固めて体に近い所で持ちたくなります。

実際、そのほうが力が込めやすく、その場にとどまることだけが目的ならばそのほうが安定感は増すでしょう。

なので

安定したロックを固める→手を出して振られる→振られを収める→安定したロックを固める

という手順で進むのもアリかもしれません。

でもそれだと、一手一手が分断されます。一手出すごとにロックを固めるので、全体でかかる時間も長くなります。時間がかかるということはそれだけ無駄にヨレるということにもなります。

それよりもホールドを持つ位置を体の前方に収めておき、振られ自体を少なくして全体の流れを作ったほうが効率的だと思います。

ただやはり、

そもそも、体の前方でホールドを持った姿勢でぶら下がることができない(またはそこから体をひきあげられない)となるとaの動きはできません。

そこはやはり最低限保持力は必要です、ってことになるんじゃないかと思います。

理論を実践し、技術を身につければ誰でも上手く登れます、と言いたいところではあるんですが、

理論を実践するための力は必要だし、技術を繰り出すための力も必要です。
力をなるべく使わないムーブを出すために力が必要、というなんとも本末転倒なことがまあクライミングにはあってしまうということもまた事実です。

なのでできるアドバイスとしては、

今後キャンパトレをする際や懸垂トレをする際、

両手の真下に体を入れてそこから引き上げるようなやり方ではなく、両手を体の前面(なるべく体から離した位置)に置いた状態でやってみるといいんじゃないかと思います。



なんだか『思います』と、いまいち断定できない部分が多くなってきました。

というのも、あくまで今回事実として観測できたのは

「初動時に壁から体を離したほうが動作完了時に壁から体が離れづらい」

ということであって、そこからのそれが良いとかあれが悪いとかはあくまでも僕の個人的な推測と意見でしかないからです。

なので今回のこの理論について納得がいかないところがある方や
「いやむしろそれは間違いだ」と思われる方もいるかもしれません。

なので

こういう動き方が正しい!というふうな言い方はしません。

僕もひょっとしたら数ヵ月後に意見がコロっとかわっているかもしれません。

でも少なくとも今回観測されたこの

「初動時に壁から体を離したほうが動作完了時に壁から体が離れづらい」

ということは少なくとも確かなことです。

そのことを元に、それぞれの方がそれぞれに自分のクライミングを高めるための理論体系を構築することができればいいかと思います。


2014年9月11日木曜日

強傾斜壁におけるランジ理論―「振られにくい」ランジとは―

久しぶりの更新ですよ、と。

もう1ヶ月以上放置してましたねこのブログ。

だって夏はあまり岩行かないんですもん。

ということでね、今回の内容も岩行った話じゃありません。

ちょっと今までのジムトレで学んだことの一部を解りやすくまとめてみたくなったので、それを。

タイトルの通り、「強傾斜壁におけるランジ」についてです。

今回のテーマは

「いかに“振られ”の少ない跳び方をするか」

ということについてです。

ランジの際に落ちる原因の1つとして

「次のホールドを捕った後に振られて落ちる」

というのがあります。

「そもそも次のホールドに届かない」
というのは単に保持力、フィジカル不足によるところが大きいです。

しかし「振られて落ちる」ということに関しては

「跳び方」を変える事で簡単に改善することが出来ます。


まず前提として、

ランジにおいて重要なのは「重心の位置」です。

どうしてもクライミングをしている時は
ホールドを握っている「手の位置」
ホールドを置いている「足の位置」
ばかり気にしてしまいがちです。

しかし真に重要なのは重心の位置であるというのはクライミング中級者以上であればわかると思います。
(この感覚が解らないというクライマーはただの保持力オバケです。もう理論とか必要ないから全部力で捻じ伏せてください。結局理論やテクニックなんて保持力が無い弱者のためのものなんです)

とりわけ強傾斜、さらにランジの時などはほぼ空中にいるようなものなので、重心の位置は垂壁、スラブでスタティックに動いているときより強く結果に影響を及ぼします。

姿勢やポジションによって重心の位置は腰付近にあるときもあれば胸付近にあるときもありますが今回は重心の位置が腰にある場合として説明していきます。

まずは次の「図1」を見て下さい。




これは

跳ぶ前に手足を縮めてしっかりロックして、重心を壁に近づけたところからスタートし、そのまま真っ直ぐに跳び上がった場合です。

図の赤矢印が重心の移動の線です。
つまりこのような跳び方をすると、

次のホールドを捕った後に重心が後方に流れていくわけです。

次に「図2」を見て下さい。



これは跳ぶ前に少し腕を緩めて腰を深く落とし、跳ぶ動作の過程で腕を伸ばし腰を後方に一度引き(図の黄色い影)それから上に跳び上がる方法です。

赤矢印の軌道を図1と比べてみましょう。全然ちがいますね。
この跳び方をした場合、

次のホールドを捕った後に重心が上方に引っ張られます。

つまり、マイナス要因のはずの「振られ」が逆に身体を引き上げるためのエネルギーとして利用できるようになるわけです。


図1の跳び方の場合、「跳びすぎ」に注意する必要があります。
必要以上に跳んだ分のエネルギーは「振られ」の大きさに繋がるからです。

図2の跳び方の場合、「跳びすぎ」はむしろOKです。
必要以上に跳んだ分のエネルギーは身体を上に持ち上げる助けになるからです。

勿論、
「調度良い飛距離を出そう」
と思ったときよりも
「出せるだけ飛距離を出そう」
と思ったときのほうが思い切り跳べるためより遠くのホールドに向けて跳ぶ際に有利になるし、距離調整に神経を削られない分、ホールドの保持や足置きなどに集中力を割くことができ、そこも利点の一つです。


ということで、

図2のような跳び方をしよう!

というのが今回の「ランジのコツ」の1つの結論になるわけなんですが、

勿論そう簡単に話は済みません。

図2のような跳び方をするにはいくつか条件があるわけです。

①跳ぶ前の手と足の位置がある程度近い
→これがないとまず図2のはじめの姿勢がとれません

②跳ぶ前の手がしっかり保持できている
→これができないと図2の黄色い影の状態になったところですっぽ抜けて後方に落ちます


②については結局保持力かよ!
と言われるかも知れませんが、それについては

「はいそうです」

としか言いようが無いですね。
やっぱり最後は保持力ですよ。


あとは例えば、

・跳びだす前のホールドと姿勢がとても悪く
・跳びつく先のホールドがドガバ

の場合は、振られで落ちることより跳び立てず落ちる場合のほうが多いので、むしろ図1のような跳び方を推奨すべきですね。

つまり図2のような跳び方は、はじめに言ったように

「次のホールドを捕った後に振られて落ちる」という状況を改善するためのムーブなわけです。




さてここからまた少し話は変わりますが、
最近ランジにおいてまた一つコツのようなものを見つけました。

それは

「手を見る」

ということです。

基本のダイアゴナルムーブのコツとして、進行方向の逆を見る、というものがありますがそれと同じようなものです。

つまり、
新しく捕ったほうのホールドではなく、

もともと持っていたほうの、残した手を見る。ということです。

視線というものは思った以上に体の向きの決定に関わっています。

両手でホールドを握っているとき、

右手を見れば自然と右肩が後方に開き左肩が前方に突き出されます。
左手を見れば自然と左肩が後方に開き右肩が前方に突き出されます。

登っている最中のように一瞬で色々な判断、動作をしなければいけない時、

「左肩を後方に開き右肩を前方に突き出す」
という動作を考えて実行するよりも

「左手を見る」
を実行したほうが早いですね。

こういうのは大事です。


実験によると
跳び箱を跳べない小学生を集めて
「跳び箱の奥のほうに手をつけば跳べる」
と教えたところ殆どの生徒は跳べなかったが、
跳び箱の奥1/3に赤いテープを貼って
「赤に手をつけば跳べる」
と教えたところ多くの生徒が跳べるようになったとか


ここで
「図3」「図4」を見てください。




図3の場合は
残したほうの手を「押せて」います。

図4の場合は
残したほうの手は「引いて」しまいます。

なぜ引くのが悪く、押すのが良いのかというと、これも重心位置との兼ね合いです。

もう一度「図1図2」に戻って、捕った後のカタチを見て下さい。

左手の位置は重心よりも高いところにあります。
重心よりも高い位置にあるホールドは引けば効きます。

右手の位置は重心とほぼ水平に近い位置にあります。
重心と同じ高さにある(同じ高さに近い)ホールドを引いても抜けるだけです。

実際に触ってみると解ると思います。


ランジして、振られた結果、残しておいたほうの手が切れる、という状況の多くは、残したほうの手を依然として引き続けているということが原因です。

それを解消するために

「身体を軽くひねり、残したほうの手のほうの肩を後方に開いて、残しておいたほうのホールドを“引く”から“押す”に切り替える」

ということ。
そしてそんなことをランジの一瞬で考えて実行するのは難しいので、

「残したほうの手を見る」

に省略するということです。


実はこの「手を見る」法なんですが、

上記の解説は仮説です。

実際に自分でやってみて、「手を見る」と上手く止まることが多かった。
その経験に対して後から色々試行して思考して、納得の行く理屈をつけただけです。

だから実際「手を見る」ことで上手くランジが止まる理由は他にもあるのかもしれません。
ひょっとしたら僕の身体的に変なクセがついていて、「手を見る」ことでその変なクセが矯正されていただけであって、他の、僕と共通のクセが無い人はこの方法を試しても上手くいかないのかもしれません。

まあでも今のところ僕はこの「手を見る」法はかなり有効だと思っているし、この仮説もそれなりに説得力のあるものだと思っています。



とまあ、
こんなところです。

ランジが苦手な人は是非この理論を試してみて下さい。

劇的に変わるってことは無いにせよ、多分ほんの少し改善されると思います。

「全然変わらん」
「むしろ悪くなった」

と思ったらすいません。

「あのホラ吹きヤロー!」と心の中で罵ってください。



いやー
長くなった!

書き始める前はもっとあっさり終わらせるつもりだったのにこんな長文になってしまった。

こういうの書き始めるとほんと長くなる。
書いてるうちに当初書く予定無かったこととか、
書きながら思いついたこととか追加したりとか、

いやでもこういうアウトプットは大事ですよ。

アウトプットすることで自分のなかに再度強く認識されますし、自分の思考を改めて客観的に分析しなおす機会にもなりますしね。




続編
デッドポイント理論―壁との距離―

2014年5月9日金曜日

理屈屋

今回は長文です。
そして僕に起こった出来事について書くいわゆる「日記」的なものではありません。

僕が普段考えていることの一部を文章にまとめたものです。

暇で暇でしょうがない人は読んでください。


じゃ始めます。



クライミングに限らずスポーツ全般に、スポーツに限らず何か目標を達成する際に、「自信を持つ」ということはかなり重要な意味を持つ。

今回はその「自信」について考える。


・「自己肯定感」と「自己効力感」

一概に「自信」と言ったが、「自信」を大ざっぱに二種類に分類すると「自己肯定感」「自己効力感」がある。

「自己肯定感」というのは文字通り、自分を肯定する感覚である。

「自分は優しい人間だ」とか「自分は善い人間だ」とか「自分ってカッコいい」とか、そういう自分という人間に価値を感じているかどうか、という文脈の中での「自信」が「自己肯定感」。

「自己肯定感」が高い人間は主観的幸福度が高く、低い人間は主観的幸福度が低いと言われている。

例えば、電車で老人や病人らに席を譲ったり、募金をしたり、ボランティア活動をしたり、そういった行為をしたときに「自分っていい人間だな」と少しくらいは思うはずだ。それは「自己肯定感」を高めていると言っていい。(または逆に「ワル」っぽいものに憧れているような人はタバコを吸ったりケンカしたりすることで「俺ってワルだなあ」という方向で「自己肯定感」を高めたりもする)

募金したりすることを「自分にはなんの見返りもないじゃないか」と言って否定するような人も多いが、実際のところ綺麗ごとなどでなく、そういった行為を通じて「自己肯定感」を高めることが出来るのだから費用対効果は釣り合っているとも思う。

主観的幸福度を高める手っ取り早い方法の一つが自己肯定感を高めることで、自己肯定感を高める手っ取り早い方法の一つが善行(だと自分が思っていること)を積むことである、というのは確かだ。
やけに他人の世話を焼きたがる人というのはそういったことを意識的にしろ無意識的にしろ理解し、実践している人なのだと思う(それが実際他人のためになっているのかはまた別の話だが)。


次に「自己効力感」について。

より正しくは「セルフエフィカシー(self efficasy)」と言う。

これは言い換えると「自分には○○を達成できる」という感情のことだ。

スポーツなどをする際に重要になってくるのはこちらのほう。

これは「できる」と思っているかどうかが問題なので、実際にそれができるかどうかの能力とは話は別である。
勿論、自己効力感が高いほうがスポーツ時のパフォーマンスは上がる。

今回はこの「自己効力感」についてメインで語っていく。


・自己効力感はどうすれば高まるか

主な手段を効果の高い順に並べると次のようになる。
①達成体験をする
②達成した人の経験を見る・聞く
③達成した人からの助言を受ける、励まされる
④成功・達成をイメージする

②と③の間にそれほど差はないかもしれない。また、メンタルトレーニングなどで想像力を強く鍛えられている人は④でかなり強い効果を得られる。

しかしやはり一番強いのは
①の「達成体験をする」。

そんなことを言ったってその達成をするのが一番大変だ、と思われるかもしれないが、
要は何を「達成した」ことにするかの目標設定次第でそこはどうとでもなる。

教育などで人に「動機付け(モチベーション)」を与える際、達成しやすい目標を設定することが大切だと言われている。

達成できそうにない目標を掲げ続け、何も達成できていない状況で努力を続けるよりも、達成可能な小さな目標を小刻みに達成していくことで少しづつ自己効力感を高めていくことができるからだ。

しかし、その目標設定のさじ加減が難しいところで、自分が「達成できて当然だ」と思っている目標を達成できたとしてもそれは自己効力感を高めることには繋がらない。むしろ「達成できて当然だ」と思っている目標を達成できなかった時に、自己効力感が低下してしまうリスクが高い

自分で自分の目標を設定する際には、自分の現状の能力をなるべく正確に把握しているということが重要になる。
いつも自分で立てた目標が達成できないことを嘆いているような人は、目標の設定の仕方を誤っている、ひいては自己分析が正確に出来ていないということが原因だろう。

ボルダリングで言えば、最高グレード1級のクライマーが、3級の課題ばかりに取り組んでいても、有効な達成体験とはならないし、むしろ「達成できて当然」の目標なのだからリスクが高い。逆に最高グレード1級のクライマーが、1級の課題を毎日1本以上確実に登らなければいけない、というのを目標に掲げても中々達成できないばかりだ。

そして②と③について。
クライミングをやっているとよく「セッション効果」というのが起こるが、これはまさに②と③に直結している。

セッションをしていて、1人が登るとたちどころに2人3人と登り始めるということはよくある話だ。
これは勿論、複数人で一つの課題を解析しているわけだからその分効率的に課題を攻略できるという、実際的で物理的な要因もあるが、間近で誰かがムーブを成功させているのや完登しているのを見てそれが「できる」ものだというイメージをもつことができる=「自己効力感が高まる」ということも深く関わっている。
自分の能力を向上させたい、と思っている場合は、自分よりもほんの少し上のレベルの集団に混ざってセッションしてみるといいだろう。自分よりもほんの少し上のレベルの課題に対して自信をもつことができるはずだ。


・モチベーションをコントロールする

スポーツの場でも「モチベーション」という言葉はよく使われる。
そのモチベーションを発生・維持させるためにも自己効力感は重要になってくる。

モチベーションを生む要因としては
①「やらなくてはならないか」という「動機」
②「自分にはできそうか」という「期待」
③「やりがいのあることか」という「価値」
の3つがあり、その3つのどれか1つでもゼロならモチベーションは生まれないと言われている。

クライミングジム内でも
「そんな難しそうな課題やる気にならない」
という台詞を聞くことがあるが、つまりそれは自己効力感の不足故に「期待」がゼロであるためにモチベーションが発生していないということだ。

しかしそんな人でも、ものの試しに、と1度トライさせてみると意外といいところまで登れたりして(ここで「期待」が生じ)、結果その課題にしっかり取り組み始めたりもする。

自己効力感の低さはつまりイコール「期待」の値の低さということになる。
自己効力感の低い人はモチベーションが生じ辛く、結果としてチャレンジの機会を失い、本来出せる結果すら出す機会を失うことになる

モチベーションに直結する自己効力感の高め方としては先にも挙げた「目標の設定→達成」の他に「失敗の原因の解釈」などもある。

失敗の原因の解釈が的確にできていれば、成功のイメージを持つことは可能だ。

例えば課題が登れなかった時、
「俺が弱いから登れないんだ」とか「保持力が足りねーわ」とか「苦手系だからムリ」とか、そういった「分析の余地のない漠然とした一言」で片付けることは何の建設的な意味も持たない。
しかし、そこで一歩踏みとどまり、失敗の原因を正確に分析し、さらに解決の手段の解析まですることができれば、成功のための具体的な方針が見えてくる。
「○○が原因でできなかった」ということはつまり「○○さえなければできた」ということになり、それは成功のイメージを生む。成功のイメージは自己効力感を高め、自己効力感は「期待」を高め、結果モチベーションは高まる。


・自己成就予言

言葉には力が宿る、と言うと若干オカルトチックに聞こえるかもしれないが、実際にその効果はある。
「自己成就予言」といい、「自分はできる!」とか「自分はもっと成長する!」とかそういったことを口に出すことでそれに沿った行動をとるようになったりしていくというもの。プラシーボ効果に近いものがある。
逆にそういったポジティブな意味合いでなくても自己成就予言は発動し、「自分は弱い」「自分は駄目だ」「自分はここまでだ」と口に出し続けているとそれに引きずられたりもする。
プロスポーツ選手にはビッグマウスの人が沢山居るが(最近だとサッカーの本田選手なんかが代表的かな)それは単に傲慢だというよりは自己成就予言として意図的にやっているという面が大きいのではないか。

「顔面フィードバック効果」という有名な理論があり、それは顔面が動くと脳が連動して感情も動くというものだ。例えば笑顔を作るとその顔の筋肉の動きなどを脳が認識し、脳が幸せな時と同じ気分になってしまう。
自己成就予言はこの顔面フィードバック効果と似たようなものだ。
感情や気分といったものはとかく形而上的なものであると考えられがちだが、意外に物理的な効果の影響を強く受けるものでもある。

「A型の人間は自らA型の性格になっていく」という説がある。
これは「自分はA型だから几帳面なはずだ」という思い込みが、その人自身をA型の性格に矯正していくというもので、これも自己成就予言の一種だ。

とはいえ、自己成就予言はあくまで暗示のようなものだから、効果が強く出る人と出ない人が居る。
理性的、理論的に考える人ほどこういった暗示が効き辛い。「所詮暗示だろう」と頭で考えて、暗示に対して否定的な気持ちが暗示そのものを打ち消してしまいがちだ。

ざっくり言ってしまえば、自分の性格が自分の血液型の性格の類型と一致しているような人はこういった暗示が効きやすい人といえるだろうし、その逆の人は効きづらいといえよう。

それにビッグマウスを実践するというのは中々難しい面もある。
「俺は凄い」
と言っていて実際にたいしたことがないのを人に見られたら恥ずかしい(自己肯定感にマイナス)し、
「僕なんて大したことがないですよ」
と言っていて実際はデキる奴でしたっていうほうが格好いい(自己肯定感にプラス)。

つまりビッグマウスというのは「自己肯定感」のほうにリスクが高く、むしろ口では自分を悪く言っていたほうが「自己肯定感」を高めるチャンスに繋がるわけだ。

それも踏まえて、ビッグマウスを実践するということは、自己肯定感にリスクを負ってでも自己効力感を高めようとする攻めの姿勢であると考えられる。

スポーツの場でビッグマウスな選手は、「競技者」としての自分を「個人」としての自分より優先しているといえるし、謙遜ばかりする(予防線を張っているとも言える)選手は「個人」としての自分を「競技者」としての自分より優先しているといえるのではないだろうか。


・失敗の経験をもとに自信を高める

自己効力感の高め方についてここまで書いてきたが、ここまで書いてきたもののほとんどがある意味で「自分を騙す」ようないわゆる「暗示」の要素が強い。先にも書いたように、理性的、理論的に考える人、それからいわゆるストイックな「自分に厳しい人」はこういった方法をとることに抵抗があるかもしれない。

そういう人は、もっと緻密に自分を説得する方法をとれば良い。
要は分析することである。

・モチベーションをコントロールするの段で「失敗の原因の解釈」について触れたが、それを自覚的に、継続的に行うことだ。

まずは失敗したときにはその原因を探る。
その時に、できるだけ具体的に、解決可能な原因を探るのが大切。

次に成功したとき、そこで「成功したー、やったー」で済ますのではなく、失敗時の分析との「答え合わせ」をきちんと行わなければならない。
失敗時の分析が外れていたのなら、成功時に改めて失敗時と比較して原因を探る。成功時の分析をする、ということはつまり成功体験を長時間深く味わうことができるということにも繋がるし、精神的にだけでなく理論的に自分の中に成功の貯金を蓄えることができる。
失敗時の分析が合っていたのなら、自分は成功時以降正しい努力を行えたということの証明になり、自分の「分析力」「調整力」などに対する自信も向上する。

一度の失敗も無く成功した時にも、失敗したときのシミュレーションをする。
そして今回はなぜ成功したのかの分析を行う。

分析によって得られた自信は、単純な暗示によった自信よりも強く自分に定着する。
なんにせよ、苦労して得た(と自分が思っている)ものは労せずして得たものよりも強く自分の中に印象付けられるのである。

分析する、というのには様々な方法があるが、最も手っ取り早く、特別な思考法も要らないのはやはり「比較すること」だ。
ボルダリングのような、何度も同じ課題に打ち込むようなスポーツは特に比較用の材料が揃いやすい状況であると言える。ただいたずらにトライを重ねるのではなく、1回1回のトライすべてに意味を持たせ、それらすべてを比較し合って分析することが大切だ。
また、セッションによって、失敗例や成功例をセッション相手に肩代わりしてもらうというのもまた効率的だ。

失敗をただの失敗としてではなく、成功をただの成功としてでなく捉え、その二つをうまく連結させて一つの長期的な成功として扱うことが大切だということ。

漫画『バガボンド』の中で胤舜に敗れた武蔵が

「負けじゃねえ、勝ちへの途中!!」

と言う。実際これはただの負け惜しみに限りなく近いものではあったが実際に武蔵はこの後胤舜に勝利し、大きな成長を遂げている。
この台詞のような姿勢を持ち続けていることが、自己効力感を高めるためにはとても有効である。


・反復練習をする

反復練習というのはあらゆる練習の中で最も嫌われる練習のうちの一つだ。
しかしやはり反復練習というのは重要。

反復練習というのは、要は出来ることを何度もするということだから、小さな「達成体験」を積み重ねるということにもなるし、同じ動作を繰り返すわけなので失敗と成功の比較の機会も多い。
「俺は毎日100本のシュート練習をしてるんだ」ということが試合中にシュートを決めるための大切な自信となったりする。たとえその反復練習によって技術的な進歩がそれほど無かったとしても。

前段の「分析」「達成体験」の積み重ねを最も手軽に行うことができるのが反復練習であると言える。
しかしただ、何の目的意識も無く頭を空っぽにして反復練習を行っても大きな価値は得られない。
何も考えていなければ「分析」も勿論しないし、それが「達成体験」であるという意識も薄いからだ。

先にも述べたように、反復練習は最も嫌われる練習の一つだ。
だから中高の部活なんかでは、反復練習は「強制されてやるもの」だという意識を持っている選手は多い。それでは反復練習の真の価値は薄まる。

反復練習ほど、それに取り組む際の意識の違いによって効果の度合いが変わる練習もないだろう。


・まとめ

「自信」に限らず感情や理性というものは形の無いものだから、それを動かす方法はなんとなく「胡散臭さ」「曖昧さ」のある手段ばかりが思いつきがちであるが、形の無いものだからこそ、体系だてて理論的に考えることでコントロールしていくべきだと思う。

クライミングに限らずスポーツ全般に、スポーツに限らず何か目標を達成する際に、今ひとつ行き詰まりを感じている人、何となく伸び悩んでいる人は「自信」が上手く機能していないのかもしれない。
そういう人はちょっと今回の文のことを参考にしてみてほしい。






……まあ、かといって僕が自信をちゃんと持てているかっていうとそんなことも無いんですがね。

あと自分では結構自己効力感は高めに持てている気はする(意識的に高めようとしてるし)けど、自己肯定感がいつもかなり低めなんじゃないかなーっていう自覚がある。

もっとこう自分をすばらしー人間だーと思って生きていけたら良いだろーに。