2015年9月25日金曜日

雨の日

ニュートラルな状態、というのはどういうものを指すのだろうか。

何も悪条件が無い場合か。

いや、そういう状態はニュートラルではなく、ベスト、あるいはそこまではいかないまでもベターな状態と言うことができるだろう。

ニュートラルな状態、というのは、

いくつかの好条件、

いくつかの悪条件、

いくつかの様々な要素がその場に含まれていて、それらの要素が「自分にとって特筆すべきものではない」と判断できる範囲内に収まっている

ということだと思う。

結局のところ何をもってニュートラルとするかというのは自分の主観に拠るものであり、その基準すら相対的で曖昧で、変化しうるものなのではないだろうか。




最近、

岩へ行くたびに雨が降り、

もう、少しくらいの雨は

「自分にとって特筆すべきものではない」範囲に収まりつつある。


勿論、

実際には登りづらいし、

危険は増すし、

荷物は汚れるし、

雨が降っていて良いことはあまりない。

ただ、

自然物を相手にしているんだ、という実感はいつもより少し強くなる。

雨だからといって何もしないで帰る、という選択はあまりしたくない。

雨なら雨なりに、

濡れにくい岩を探すなり、濡れが影響し辛い課題を探すなり、リスクの少ない簡単な課題が雨でどのくらい手ごわくなっているのか探ってみたり、

その状況に見合った取り組み方をして、

何かしらの意味や価値を持ち帰りたいと思う。





夏の日(初段)


2015年8月6日木曜日

僕×鳥取=雨

先週、車をとばして行ったはいいが、エリア到着と共に豪雨。
結局、そのまま何もせず引き返し帰宅を余儀なくされた三滝渓


今日こそは、と

しっかりと天気予報を確認。

降水確率20%。

しっかりと晴れマーク。

最高気温32℃という表記が若干気にはなるものの、

そもそも登れもしない、という馬鹿げた事態には今度こそならないはずだと、安心してエリアへ向かう。


とりあえず目当ては先日敗退していた

斬(二段)


着いてみて、岩をチェックすると、


コンディションは

すこぶる悪い。


ホールドは乾いてはいるが、岩の表面が全体的にしっとりと染めっており、うっすらと岩表面を覆う苔が見事にその潤滑性を発揮している。

ちょっとしたスメアリングでバランスを整えようとすると逆にスリップしてしまうような非常にやりにくい状態。


いや、

OK。大丈夫。

コンディションが悪いなんてことは解ってた。

まず気温30℃超えでコンディションに期待すること自体間違ってる。

それもひっくるめて捻じ伏せればいいだけの話。


トライを重ね、合間合間に必要だと思われる箇所に対して根気強くブラッシングを行ったりしていると、風が吹いてきたのもあり、徐々にコンディションが良くなってきたようにも感じられた(気のせいかもしれないしそうじゃないかもしれない)。


そもそもが繊細なホールディングとバランスを要求される課題。

ホールドの持ち位置のミリ単位の試行や、体重を預ける角度等の精査を1トライごとにしていくと、徐々に高度も上がってきて、行ける感覚は高まってきた。

最終的にはこのように




登れてしまったわけだけど、

これは逆にコンディションの悪さがプラスに働いたと言えるかもしれない。

雑にムーブをこなそうとしたり力で抑え込もうとすると中々進まなかったと思う。

コンディションの悪さが逆に僕の慎重さ、臆病さ、周到さを引き出してくれたからの結果なのかもしれない。


その後一緒に行った二人の斬トライを暫く見守った後にエリア移動。

以前登った「風(初段)」のあるエリアへ。

そのエリアにはもうめぼしい課題は無いので、僕は同行者2人の風トライを見守りながら周囲の細々とした課題をマイペースに登っていよう、くらいの軽い気持ちだった。

が、

思いも寄らぬ誤算。


アプローチがジャングル化


以前(2ヶ月前)とは全くもって風景ががらりと変わっていた。

手で藪を掻き分け、足で草木を踏み折り、なんとかエリアに到達したころにはもうクタクタ。
斬登るよりヨレた。

半袖半ズボンというナメきった格好で行っていたので手足に細かな傷がいくつも付いていた。


そして誤算はそれだけでは終わらなかった。


ここにきて最大の裏切り。




降る



エリアに着いて30分もしないうちに大粒の雨が。

急いで撤収したものの、


ただでさえ険しいジャングル地帯を雨の中引き返すという苦難。

無事車に辿り着いた時には身も心もクタクタになっていましたとさ・・・



まあ


目当ての斬は登れたから良しとはするものの、



何のための天気予報だ!


と叫びたくなる。

呪いでもうけてんのかなあ。

僕が鳥取に入ると雨が降る呪い(見方を変えれば祝福とも言えるかもしれないが)。


2015年8月2日日曜日

Niigata Energy Rock Fes


ちょっくら宣伝というか告知というかなんというか・・・

えー

わが故郷新潟にて、

なにやら面白いイベントが行われるようで。




Niigata Energy Rock Fes




新潟という、クライミング界としては端っこのほうにある場所にて

身内主体で盛り上がり、

みんなで強くなろうってな感じの企画らしいですね。


面白そうなんで僕も是非とも参加したい!

ところなんですが、流石にそう何度も行ける距離ではないので・・・


その代わりと言っては何ですが、

僕も出来ることでこのNERFを盛り上げるお手伝いをしよう!と


ロゴの作成






ポスターの作成





この度、請け負いました。

ロゴのほうは、

このコンペの参加者に配布される

「NERFツアーTシャツ」

に使われるらしいです。

Tシャツ自体がどんな仕上がりになるかは知らないけど、

貰った人に「日常的に着たいくらいカッケーー!」

って思ってもらえたらいいなあ・・・

2015年7月29日水曜日

クロスムーブ理論―2種類のクロス―

最近は岩行くたび雨。

どうなってんだまったく。

今日なんてエリア到着と同時に豪雨でとんぼ帰り。

酷い。


ブログの更新も随分と止まっている。



ということでまた理論系でも書いてみよう。


今回のテーマは

「クロスムーブ」


前回は「デッド」で前々回は「ランジ」

で今回はクロス、と、段々内容が地味で基礎的なほうになってきていますね。


さて

前置きはさておき、そろそろ本題に入りましょう。


今回語ることは副題の通り

「2種類のクロス」

内訳は

「閉じるクロス」


「開くクロス」

の2つです。

まずは以下の2つの画像を見て下さい。


Aのホールドが左手で元々持っていたホールドで、Bのホールドに向けてクロスで右手を出している、という状況です。


それぞれのムーブでは「力の加わる方向」がまるで逆方向です

しかし、

このムーブはどちらも「クロスで右手を出す」と言われます。
ちょっと問題だと思いませんか?


はじめに断っておきますが、

この開くクロスと閉じるクロス、

どちらが良い出し方でどちらが悪い出し方かというようなことはありません。

場合によってどちらの出し方が適切かが変わるというだけです。


最近色々なクライマーの登りを観察していて思うのですが、

この2つを明確に区別できていないクライマーが非常に多いです。

特に保持力と腕力が特に強いクライマーは

クロスといえば「閉じるクロス」だけしか思いつかないというような人も居ます(マジで)。




じゃあどんな状況でこの2つを使い分けるのかということについてですが、

まずはじめに

ホールドの向きを考えましょう


もう一度画像を見て下さい。

「閉じるクロス」の例の画像では

AのホールドBのホールド右下に引ける向きに付いています。

この状況で「開くクロス」をしようとすると、Bのホールドを取った時点で左下に滑り落ちます。

逆に

「開くクロス」の例の画像では

AのホールドBのホールド左下に引ける向きに付いています。

この状況で「閉じるクロス」をしても、Bのホールドに手が届いてもBのホールドを有効に保持することができません。


次に考えるのは

ホールドの信頼度です


Aのホールドがガバでしっかりと保持できるがBのホールドは持ち辛いカチなどであれば、しっかりとAのホールドを保持してスタティックに「閉じるクロス」で出したほうが確実でしょう。

逆に
Aのホールドは悪いがBのホールドはガバであるような状況であれば思い切って「開くクロス」で勢い良く体ごと左にスライドしてBのホールドにしっかりと体重を預けるべきでしょう。

クロス方向に片手でランジに行く時なんかはかなりの確率で「開くクロス」を選択することが適切になると思います。


先に保持力と腕力の強いクライマーは「閉じるクロス」ばかりする、というようなことを書きましたが、
それは彼らにとってAのホールド(継続して保持しているホールド)は大抵信頼できてしまっているからです。彼らにとっては「まだ触っていないガバ」に体を預けに行くよりも「今持っているカチ」を徹底して握りこむほうが信頼に足るムーブだということでしょう。強すぎるというのも考え物ですね。



・ホールドの向き
・ホールドの信頼度

この2つ以外にも色々と課題に応じて条件は重なるでしょう。(例えば足の位置とか、次のホールドまでの距離とか)
さまざまな要素が複合的に作用してムーブは決定されるべきなので、それらの条件を細かくリストアップすることはちょっとここでは難しいので割愛します。



今回言いたかったことは、
「クロス」と一言で片付けてはいるが、全然違うムーブがそれぞれ含まれているんだということ、
それと、ホールドの配置をよく考えてムーブ選択をしましょうということです。


ものすごく基本的なことですね。

しかし、

基本的なことっていうのは無意識にやっていることだから、強く意識しないとなかなか理論も何もないと思いがちです。

そういった意味では基礎的でかつ些細な部分に着目することこそ、難しく高度なことだと言えるのかもしれません。


かのイチロー選手もこう言っています

「自分で無意識にやっていることを、もっと意識しなければならない」

と。

僕のこの作業も、記事として成文化することで、無意識にやっていた(あるいはぼんやりとしか意識していなかった)ことをはっきりと意識するためにやっているわけだし。


ある程度のレベル(3級以上くらい)のクライマーなら大抵、

この「開くクロス」と「閉じるクロス」の使い分けは出来ているはずです。

しかしそれを意識して使い分けているかとなると、話は違うでしょう。


今回のコレが
そんな人たちの、

無意識を意識に変えるためのきっかけに少しでもなってくれればと。




2015年6月15日月曜日

突発戸河内ソロリベンジ


疲れている。

体がそう強く訴えかけていた。

シフトの関係上、6/14~6/15が二連休だったのだが、

6/13の夜時点ではこの連休はもう寝て過ごすべきだと思っていた。

6/14の午前1時に就寝したのだが、そのままぐっすりと午後1時まで眠った(12時間!)。

起きてもまだ疲労は身体にこびりついており、それを拭うべく、起きてすぐたっぷり食事をして、昼から長い風呂に入った。

そして自室でごろごろとしていると午後7時再び眠りに落ちた。



次に目が覚めたのは6/15の午前1時だった。


その時異変に気付く。


全く疲れていなかった。


あれほど身体にしつこくこびり付いていた疲労が嘘のようにすっかりと消えていた。

深夜だと言うのにまったく眠気もなかった(当たり前だが)。


今すぐにでも登りに行けそうだ

と思った。

と思ったあと、いや、実際にそれもいいかもしれない、と考えた。

今から準備をして少し遠いエリアに車を走らせれば到着するのは早朝。
涼しい環境で登れるんじゃないだろうか。

それで暑くなってきたら帰ってくればいい。


そして、

そういえば戸河内に忘れ物があったなあ

と思い出す。



そんなこんなで6/15午前5時30分

僕は戸河内に居た。



狙い通り、早朝の空気はひんやりと澄んでいて、岩のコンディションも悪くない。

早速「忘れ物」であるところの


イカヅチ(二段)


を落としにかかる。

アップがてらムーブを改めて確認し、


登れた。

そら(雨の日にゴール手前まで行けたんだから)そう(乾いてれば登れる)よ


主目的を済ませたわけだけど、まだまだ朝6時過ぎ、まだまだ世間は起きだしてもいない。


じゃあ次に、と

イカヅチの直登ver.である


カナヅチ(初段)


にトライ。

いや、初段にしては悪い!

とはっきり思う。

イカヅチと4手目まで共通であるわけだけど、その4手目までがイカヅチのワルいところなわけだし。

そして5手目もなんだか悪い。ストライクゾーンが狭くかつ奥まっていて何度か外してしまった。

これは人によってはイカヅチよりもカナヅチのほうが苦手って人も居るんじゃないかな。


ラインもこっちのほうがカッコイイような気がする。


さてまだまだ時間はたっぷりある。

お次は


レスキュー返し(初段)


以前登ったモスランジと同じスタートから逆方向へ登っていく感じ。

カチ握ればいいだけのシンプルな課題。


実は意外とてこずった。

イカヅチ、カナヅチと打ち込んだ直後にいきなり登ろうとしたのが悪かった。

やはり一人だとレストをする気にならんからな。

意識的にちゃんとレストしたらすんなり登れましたとさ。


さてそろそろヨレてきたところで

次は


ノロ(初段)


まずコイツについて言うことは、スタート位置が高すぎだってこと。

チビの僕にはスタート位置につくのがちょっとキツかった。

一人で来てるわけだから当然マットも1枚しかないからマット積むってことも出来ず。

まあ課題自体は、カチ握って直登!っていうこれまたシンプルな作り。

指にヨレを感じて少し不安だったけどこの程度の課題で敗退するわけにはいかんわな。



この時点でそろそろ気温がだいぶ上がってきた。

そしてもう一つ問題が。

実は僕戸河内のトポ持ってないんですよね。

これまで登った課題はすべてラインを人づてに教えてもらったもの。

そう

もう知ってる段課題が無くなってしまった(ノロをSDにすれば三段になるけど結構ヨレてるのに三段やるってのもなあ)

幸いスマホ圏外ではなかったのでその場で調べることが出来た。

スマホ片手にうろついてみると


メカキングギドラ(初段)


という課題を発見!

小さめな岩なのでヨレている状態でも危険は少なくて丁度いい!

決して難しい課題じゃなかった。

たぶん内容としては今日登った初段の中で一番簡単だったんじゃないかと思う。

が、思いのほか苦戦。

ムーブは簡単に出たけどつなげようとすると腕がロックを拒否する。

いやーヨレてた。でもなんとか気合で登った。


と、

ここでそろそろ正午になろうとしていた。

気温もかなり上がっていて、汗はだくだく止まらない。
2リットル持ってきていた飲み物もとっくに無くなっていた。
筋肉に強く力を込めるとすぐにその箇所が攣ろうとする。

うん、ここらで潮時かな、結構課題落とせたし(計6段)現状もう落としたい課題も無いし。

ということで帰宅。

日が沈む前に帰ってこれた。



今回突発的にこんな岩行をしたわけだけど、

いや、これからの季節

ほんとにこのプランは悪くないかもしれない。

夜のうちに出発→早朝~午前中登る→暑くなったら帰る

の流れ。


まああとはあれか

身体の声を聞け、ってことか。

調子いい!行けそう!っていう体調の時はまあ大体実際行けるもんなんだな、と。


2015年6月2日火曜日

ぶらりローカルの旅


神戸から鳥取って、意外と近いんですって奥さん。

ということで、

今日はちょっと鳥取へ。


鳥取の岩場はあまり周知されていない、

所謂「ローカルエリア」ばかり。

ひとつひとつの小ぢんまりとしたエリアが点在しているような状態らしい。

今日はその中の一つ

三滝渓

へと赴いてみた。


割と曖昧な情報だけでぶらっと行ったものだから、かなり迷うと思ったけれども、

存外簡単にエリア発見。


到着して岩を見てみると、

いやー、ローカルだと思って舐めてた。

もっとちゃちな岩かと思ったら結構に立派な岩で、思いのほかテンションが上がる。


ということでまずはその岩の

斬(二段)

にトライ。

垂壁で

カチ!

カチ!

カチ!

そしてバランシー!

うーん、

こういうのも得意だと思ってたけど、やっぱり最近苦手になってきてるのかもしれない。

残念ながら敗退。

もうちょっと人目につくエリアにあったなら間違いなく人気課題になる、ってくらいの好課題だった。
また今度やりに行かなきゃ。

で、

少し岩を移動して、

次は

風(初段)

にトライ。

さっきの斬のある岩に比べると若干スケールの小さい岩だが、結構面白そう。

まあゆーても初段だしー、さっくり落としたるかー、

と軽い気持ちで取り付くも、

ハマる

これもバランス悪くて悪くて。

ホールドもイマイチ。

なんとか完登したものの、自分のジワジワ系の能力の低下(いや、もとから低かったのか?)にちょっと自信喪失気味に。


地味に見えるでしょ。

結構ワルいからこれ。


で、

そのへんで三滝渓を後にし、

帰り道の途中で

落折(三段)

という課題のみがある岩に寄り道。


この課題、


めっちゃカッコイイ。

めっちゃムズカシイ。

そしてめっちゃ怖い!

ランディングが結構悪くてね。

なのにリップにランジが核心。おまけにリップは外傾のスローパー。

まあ僕はそのランジでリップを叩けもしなかったわけですが。

そのランジパート行くまでにも7手くらいあるんだけどそこもやっぱ悪くて。

最終的にはバラすことは一応出来たけど、繋げるのは相当難しいな。
で、そこまで行ってようやく核心にさしかかるわけだ。めまいがするね。


ということで成果らしい成果は挙げられなかったけども、

やっぱり行ったことの無い岩場に行くっていうだけで楽しいもので。

またどっかローカルでも責めてみたいなーっと。

2015年5月18日月曜日

デッドポイント理論―壁との距離―


以前ランジのコツについて書いた、


っていう記事があるんですが、

実はそれがこのブログ内で最も読まれている記事なんですよ。

次に多く読まれている記事の倍以上。

普段の日記みたいな記事に比べると約10倍くらい読まれてます。

意外、というかなるほど、というか。


なので(ってわけじゃないけど)

今回もそのようなことを書こうと思います。

今回の内容はある意味前回の理論の応用であり、ある意味前回の理論の下にあるものでもあります。

今回のキーワードは

壁との距離

です。


クライミングのムーブについて語るとき、

どうしても

上下左右二次元的な動きだけを考えがちです。

が、

実際はそこに前後の動き(=壁と体の距離)が重要な要素として絡んできます。


まずはこの動画を見て下さい。




次にこの動画を



前者の動画を、後者の動画をとします


二つとも、同じホールドを使用しています。


ちなみに持っているホールドとしては、

右手:悪目のカチ
左手:けっこう持てるピンチ
左手で取りにいく:悪目のカチ

となっています。左足は小さなホールドを踏んで右足は切っています。


見ればわかると思いますが、

Aのほうが安定しており、

Bのほうが不安定です。

両者の違いは、

次のホールドを取りにいく前と後の壁と体の距離です。


Aでは

ホールドを取りにいく前に体を壁から離しています。

結果、ホールドを取った後のほうが取りにいく前よりも体が壁に近づいています。

Bでは

ホールドを取りにいく前に体を壁に密着させています。

結果、ホールドを取った後のほうが取りにいく前よりも体が壁から遠ざかっています。


つまり

Aは
壁に向かいながらホールドを取っている。

Bは
壁から離れながらホールドを取っている。

ということです。


さらにわかりやすく画像で解説します。

まずはA

①取りにいく直前


②手を出した直後


③取ったところ

それぞれの時点での腰の位置を水色の丸数字肩の位置を緑の丸数字で表しています。

①~③に以降しながら、ほぼまっすぐに壁に向かって近づいていっています。



次にB

①取りにいく直前


②手を出した直後


③取ったところ

①~②の間ではほとんど腰と肩の位置は変わっていませんが、
③に到達した時点では肩と腰の位置は①時に比べ壁から遠ざかっています。


ここまで敢えてハッキリとはAとBどちらが良いとは言及していませんが、

まず大半の人は

AのほうがBよりも良いと思ってくれたと思います。


結論を一言で言いますと。

デッドポイントの一手を出す場合は、

壁から離れてからムーブを起こしたほうが良い。


ということになります。

壁から離れてからムーブを起こすと、
壁に向かっていきながら次のホールドを取れる。

壁に密着した状態からムーブを起こすと、
壁から剥がされながら次のホールドを取る事になる。(=剥がされる力に耐える必要がある)

ということです。

「壁から離れないために壁から離れる」という、一見矛盾したような一文になりますが、コレが今回の結論になります。


さて、ここでデッドポイントの一手を出す場合と微妙に状況を限定したのは、

スタティックに動く場合においてはこれが適用されない場合も多いからです。


ここでBの①~②間の肩と腰の位置関係を見て下さい。
殆ど変わっていません。それは右手や体幹等の力で耐えているからです。

そのまま右手でロックすることが出来ていれば、

常に腰と肩の位置を壁に密着させたまま③を迎えることが出来たはずです。

そのようにスタティックに動けるような状況ではわざわざ一旦壁を体から離す必要性も無いでしょう。
特にスラブやフェイスなどでは、スタティックに動いている分には壁から剥がされる力はあまり生じません。



さて次に補足として、

キャンパシングの動きについて見てみましょう。

また動画から。





じゃあ今度は前者の動画を、後者の動画をとします

身体の振られに注目してみましょう。

aよりもbのほうが振られが大きいように見えます。

これも、前述した壁との距離によるものです。

また図で補足します。


ではaから(解りやすく、最も大きな動作の2手目で解説します)
またそれぞれの時点での腰の位置を水色の丸数字肩の位置を緑の丸数字で表していますのでそこに注目してください。

①手を出す直前


②手を出した直後


③取った瞬間


④取った直後の振られ


⑤振られ収まり



次にb

①手を出す直前


②手を出した直後


③取った瞬間


④取った直後の振られ


⑤振られ収まり


見れば解るとおり

aのほうは肩及び腰はやや後方に下がりながらも基本的には上方に向かい、取った瞬間からその後大きく後方には引っ張られてはいません。

bのほうはほぼ水平に肩及び腰が後方に移動しています。


お分かりの通り

aは手を出す前に、体を壁から離しています。

bは手を出す前に、体を壁に密着させています。

それにより手を出した後の、後方へ行く距離が変わっています。


さらに体の高さも違いますね。

さすがにキャンパなので前述のデッドの時と同じように、初動時に壁から体を離していてもそこから壁に向かうということはできず、後方にも向かっています。

しかし、同じ距離を水平に移動するのではなく、上方への角度をつけて斜め上に出てやれば後方へ引っ張るエネルギーは少なくなります。

極端な話、100mの高さにボールを投げて1m前に進んだ、だとそれはもうほとんど垂直に投げたのと同じですよね。
(これで分かるかな?・・・)

このように、なるべく「下から上へ」向かうというのも「前から後ろへ」向かう力を抑制するのに役立つということです。



aのような動きをするために重要なのは、

体の前方でホールドを持つことです

これは意外と難しいです。

人は悪いホールドを保持しようとするとき、どうしても肩から先の関節を縮めて固めて体に近い所で持ちたくなります。

実際、そのほうが力が込めやすく、その場にとどまることだけが目的ならばそのほうが安定感は増すでしょう。

なので

安定したロックを固める→手を出して振られる→振られを収める→安定したロックを固める

という手順で進むのもアリかもしれません。

でもそれだと、一手一手が分断されます。一手出すごとにロックを固めるので、全体でかかる時間も長くなります。時間がかかるということはそれだけ無駄にヨレるということにもなります。

それよりもホールドを持つ位置を体の前方に収めておき、振られ自体を少なくして全体の流れを作ったほうが効率的だと思います。

ただやはり、

そもそも、体の前方でホールドを持った姿勢でぶら下がることができない(またはそこから体をひきあげられない)となるとaの動きはできません。

そこはやはり最低限保持力は必要です、ってことになるんじゃないかと思います。

理論を実践し、技術を身につければ誰でも上手く登れます、と言いたいところではあるんですが、

理論を実践するための力は必要だし、技術を繰り出すための力も必要です。
力をなるべく使わないムーブを出すために力が必要、というなんとも本末転倒なことがまあクライミングにはあってしまうということもまた事実です。

なのでできるアドバイスとしては、

今後キャンパトレをする際や懸垂トレをする際、

両手の真下に体を入れてそこから引き上げるようなやり方ではなく、両手を体の前面(なるべく体から離した位置)に置いた状態でやってみるといいんじゃないかと思います。



なんだか『思います』と、いまいち断定できない部分が多くなってきました。

というのも、あくまで今回事実として観測できたのは

「初動時に壁から体を離したほうが動作完了時に壁から体が離れづらい」

ということであって、そこからのそれが良いとかあれが悪いとかはあくまでも僕の個人的な推測と意見でしかないからです。

なので今回のこの理論について納得がいかないところがある方や
「いやむしろそれは間違いだ」と思われる方もいるかもしれません。

なので

こういう動き方が正しい!というふうな言い方はしません。

僕もひょっとしたら数ヵ月後に意見がコロっとかわっているかもしれません。

でも少なくとも今回観測されたこの

「初動時に壁から体を離したほうが動作完了時に壁から体が離れづらい」

ということは少なくとも確かなことです。

そのことを元に、それぞれの方がそれぞれに自分のクライミングを高めるための理論体系を構築することができればいいかと思います。