ところで昨日から僕は風邪気味だった。
しかし今日は折角の休日だし、空気は冷えていて、雲は無く、岩のコンディションは良さそうだ。
自分の体とは、いつでも折り合いは付けられるが、季節や天候といった事柄に対してはそう容易に折り合いがつけられるものでもない。
そういうわけで、僕は岩に登りに行こうと決めた。
行き先はミタライ。
あと少しで登れそうな
「ハリガネムシ」と「ゴワトリ」
その2つの課題に照準を絞って打ち込むつもりだった。
最近は僕にしては結構まじめにトレーニングに取り組んでいたつもりだし、身体自体はそれなりに仕上がり掛けてきている。
しかし体調は今ひとつ。
岩のコンディションも実際に触ってみると思ったほど良くはなかった。70点といったところだろう。
自分の身体の状態についても半信半疑のまま、とりあえず「ハリガネムシ」からはじめることにした。
アップがてら核心である後半のランジ部分の練習を何回かこなし、体も温まり感覚も小馴れてきたタイミングでつなげに入る。
1stトライで、かなりいいところまで行けた。
核心のランジがほぼ止まりかけた。
完登の予感が強まり、浮き足立とうとする心を抑え、慎重にレストを挟み何度かトライ。
後半に意識を持って行き過ぎて序盤で足が切れて落ちたり、やはりランジがうまく決まらなかったりと、何度かミスを重ねたが、その度に細かく調整を繰り返して、納得のいく修正を加えていった。
結果、4回目のトライで完登することができた。
時間にしてみれば1時間もかからずに登れたことになるけど、実感としてはもっと掛かっていた気がした。集中し、緊張していたということだと思う。
その後、身体と精神のコンディショニングのため「ハナモゲラ(2級)」を登り、
次の目標である「ゴワトリ」に。
思ったより「ハリガネムシ」が簡単に登れたこともあり、今日の岩と自分の体のコンディションは思ったよりも良いんじゃないかと感じ始めていたため、「ゴワトリ」も今日中に登れるんじゃあないかという気持ちはかなり高まっていた。
しかし、
いざ取り付いてみるとやはり前回落ちていた箇所と同じ場所で何度も落ちる。
その部分を切り取って練習してみてもそれ以上改善の余地はあまり残されていないように思えた。
上部で落ちるのを防止するにはやはり下部のムーブをより正確にこなすしかない、という結論に至り、下部のムーブをより慎重に、注意深く、集中し、細かな調整を重ねて少しずつ洗練させていった。
そのようにして何度かトライを重ねるもやはりどうにも決めきれない。
その一因としては、前回岩に行った際に裂けてしまった右手中指の皮がまだ完治していなかったということもあった。
テーピングを巻くことでフリクションが犠牲にされるのを危惧していたため、敢えて何も巻かずにトライしていたのだが、それによってかえって無意識のうちに右手に力が込めきれていないのではないか、と思い至った。
指の腹のフリクションがなるべく死なないよう、かつ傷口がしっかりカバーできるような位置にテーピングを巻き、意を決してトライしてみた。これでダメなら仕方が無い。(体力的にも時間的にもこれが最期のトライになるだろうな、というタイミングだった)
登れた。
登れてしまった。
まあ、このゴワトリという課題に関しては「易しい三段だ」と言われているとか、今回僕が採用したムーブは初登時のムーブとは異なり幾分易しいものだとか、色々細かい言うべき箇所はあるのかもしれない。
でもとにかくこのライン、この課題を登れたことは確かだ。
そのことがただ素直に嬉しい。
その後、時間がまだ少しだけ余裕があったため「ケロ(1級)」をクールダウンがてら登り、今日のクライミングは終了。
結果的には今の自分にできる内での恐らく最高に近い出来だった。
今日思ったのは
「ベストコンディション」とはなんなのか?
ということ。
気力も体力も、環境も、すべてが最高に整っている状態。
そういう時ってあるんだろうか。
クライミングに生活全部を賭けられるわけでもない社会人であり、
クライミングが岩という自然物を相手にしているものであるかぎり、
そんな状況はほぼ無いといっていいと思う。
非の打ち所の無い完璧な状況というのは非現実的であるとさえ言える。
結局のところ「ベスト」というものは求めるべきでなく、「ベター」をいくつか重ねるしか無い。
これはコンディションという面でもそうだし、課題を登っている最中のムーブのこなし方についても同様に言えると思う。
いくつかの好条件といくつかの悪条件があって、
好条件をうまく味方につけて利用して、
悪条件をうまくかわすか抑えこむかして、
そういうふうにしてベストの結果を打ち出すしかないんじゃあないかな、と思う。
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