2014年9月11日木曜日

強傾斜壁におけるランジ理論―「振られにくい」ランジとは―

久しぶりの更新ですよ、と。

もう1ヶ月以上放置してましたねこのブログ。

だって夏はあまり岩行かないんですもん。

ということでね、今回の内容も岩行った話じゃありません。

ちょっと今までのジムトレで学んだことの一部を解りやすくまとめてみたくなったので、それを。

タイトルの通り、「強傾斜壁におけるランジ」についてです。

今回のテーマは

「いかに“振られ”の少ない跳び方をするか」

ということについてです。

ランジの際に落ちる原因の1つとして

「次のホールドを捕った後に振られて落ちる」

というのがあります。

「そもそも次のホールドに届かない」
というのは単に保持力、フィジカル不足によるところが大きいです。

しかし「振られて落ちる」ということに関しては

「跳び方」を変える事で簡単に改善することが出来ます。


まず前提として、

ランジにおいて重要なのは「重心の位置」です。

どうしてもクライミングをしている時は
ホールドを握っている「手の位置」
ホールドを置いている「足の位置」
ばかり気にしてしまいがちです。

しかし真に重要なのは重心の位置であるというのはクライミング中級者以上であればわかると思います。
(この感覚が解らないというクライマーはただの保持力オバケです。もう理論とか必要ないから全部力で捻じ伏せてください。結局理論やテクニックなんて保持力が無い弱者のためのものなんです)

とりわけ強傾斜、さらにランジの時などはほぼ空中にいるようなものなので、重心の位置は垂壁、スラブでスタティックに動いているときより強く結果に影響を及ぼします。

姿勢やポジションによって重心の位置は腰付近にあるときもあれば胸付近にあるときもありますが今回は重心の位置が腰にある場合として説明していきます。

まずは次の「図1」を見て下さい。




これは

跳ぶ前に手足を縮めてしっかりロックして、重心を壁に近づけたところからスタートし、そのまま真っ直ぐに跳び上がった場合です。

図の赤矢印が重心の移動の線です。
つまりこのような跳び方をすると、

次のホールドを捕った後に重心が後方に流れていくわけです。

次に「図2」を見て下さい。



これは跳ぶ前に少し腕を緩めて腰を深く落とし、跳ぶ動作の過程で腕を伸ばし腰を後方に一度引き(図の黄色い影)それから上に跳び上がる方法です。

赤矢印の軌道を図1と比べてみましょう。全然ちがいますね。
この跳び方をした場合、

次のホールドを捕った後に重心が上方に引っ張られます。

つまり、マイナス要因のはずの「振られ」が逆に身体を引き上げるためのエネルギーとして利用できるようになるわけです。


図1の跳び方の場合、「跳びすぎ」に注意する必要があります。
必要以上に跳んだ分のエネルギーは「振られ」の大きさに繋がるからです。

図2の跳び方の場合、「跳びすぎ」はむしろOKです。
必要以上に跳んだ分のエネルギーは身体を上に持ち上げる助けになるからです。

勿論、
「調度良い飛距離を出そう」
と思ったときよりも
「出せるだけ飛距離を出そう」
と思ったときのほうが思い切り跳べるためより遠くのホールドに向けて跳ぶ際に有利になるし、距離調整に神経を削られない分、ホールドの保持や足置きなどに集中力を割くことができ、そこも利点の一つです。


ということで、

図2のような跳び方をしよう!

というのが今回の「ランジのコツ」の1つの結論になるわけなんですが、

勿論そう簡単に話は済みません。

図2のような跳び方をするにはいくつか条件があるわけです。

①跳ぶ前の手と足の位置がある程度近い
→これがないとまず図2のはじめの姿勢がとれません

②跳ぶ前の手がしっかり保持できている
→これができないと図2の黄色い影の状態になったところですっぽ抜けて後方に落ちます


②については結局保持力かよ!
と言われるかも知れませんが、それについては

「はいそうです」

としか言いようが無いですね。
やっぱり最後は保持力ですよ。


あとは例えば、

・跳びだす前のホールドと姿勢がとても悪く
・跳びつく先のホールドがドガバ

の場合は、振られで落ちることより跳び立てず落ちる場合のほうが多いので、むしろ図1のような跳び方を推奨すべきですね。

つまり図2のような跳び方は、はじめに言ったように

「次のホールドを捕った後に振られて落ちる」という状況を改善するためのムーブなわけです。




さてここからまた少し話は変わりますが、
最近ランジにおいてまた一つコツのようなものを見つけました。

それは

「手を見る」

ということです。

基本のダイアゴナルムーブのコツとして、進行方向の逆を見る、というものがありますがそれと同じようなものです。

つまり、
新しく捕ったほうのホールドではなく、

もともと持っていたほうの、残した手を見る。ということです。

視線というものは思った以上に体の向きの決定に関わっています。

両手でホールドを握っているとき、

右手を見れば自然と右肩が後方に開き左肩が前方に突き出されます。
左手を見れば自然と左肩が後方に開き右肩が前方に突き出されます。

登っている最中のように一瞬で色々な判断、動作をしなければいけない時、

「左肩を後方に開き右肩を前方に突き出す」
という動作を考えて実行するよりも

「左手を見る」
を実行したほうが早いですね。

こういうのは大事です。


実験によると
跳び箱を跳べない小学生を集めて
「跳び箱の奥のほうに手をつけば跳べる」
と教えたところ殆どの生徒は跳べなかったが、
跳び箱の奥1/3に赤いテープを貼って
「赤に手をつけば跳べる」
と教えたところ多くの生徒が跳べるようになったとか


ここで
「図3」「図4」を見てください。




図3の場合は
残したほうの手を「押せて」います。

図4の場合は
残したほうの手は「引いて」しまいます。

なぜ引くのが悪く、押すのが良いのかというと、これも重心位置との兼ね合いです。

もう一度「図1図2」に戻って、捕った後のカタチを見て下さい。

左手の位置は重心よりも高いところにあります。
重心よりも高い位置にあるホールドは引けば効きます。

右手の位置は重心とほぼ水平に近い位置にあります。
重心と同じ高さにある(同じ高さに近い)ホールドを引いても抜けるだけです。

実際に触ってみると解ると思います。


ランジして、振られた結果、残しておいたほうの手が切れる、という状況の多くは、残したほうの手を依然として引き続けているということが原因です。

それを解消するために

「身体を軽くひねり、残したほうの手のほうの肩を後方に開いて、残しておいたほうのホールドを“引く”から“押す”に切り替える」

ということ。
そしてそんなことをランジの一瞬で考えて実行するのは難しいので、

「残したほうの手を見る」

に省略するということです。


実はこの「手を見る」法なんですが、

上記の解説は仮説です。

実際に自分でやってみて、「手を見る」と上手く止まることが多かった。
その経験に対して後から色々試行して思考して、納得の行く理屈をつけただけです。

だから実際「手を見る」ことで上手くランジが止まる理由は他にもあるのかもしれません。
ひょっとしたら僕の身体的に変なクセがついていて、「手を見る」ことでその変なクセが矯正されていただけであって、他の、僕と共通のクセが無い人はこの方法を試しても上手くいかないのかもしれません。

まあでも今のところ僕はこの「手を見る」法はかなり有効だと思っているし、この仮説もそれなりに説得力のあるものだと思っています。



とまあ、
こんなところです。

ランジが苦手な人は是非この理論を試してみて下さい。

劇的に変わるってことは無いにせよ、多分ほんの少し改善されると思います。

「全然変わらん」
「むしろ悪くなった」

と思ったらすいません。

「あのホラ吹きヤロー!」と心の中で罵ってください。



いやー
長くなった!

書き始める前はもっとあっさり終わらせるつもりだったのにこんな長文になってしまった。

こういうの書き始めるとほんと長くなる。
書いてるうちに当初書く予定無かったこととか、
書きながら思いついたこととか追加したりとか、

いやでもこういうアウトプットは大事ですよ。

アウトプットすることで自分のなかに再度強く認識されますし、自分の思考を改めて客観的に分析しなおす機会にもなりますしね。




続編
デッドポイント理論―壁との距離―

2 件のコメント:

  1. 残した手を見るとより押せる感覚あるよね。残した手を見るってのは、首を初動として体幹→肩→肘→手首とホールドをプッシュできる方向に回転するからではないかと思うのです。さらにそのベクトルが、ランジによる”振られ”のベクトルの逆方向のベクトルとなることで、相殺され結果止まる!のではないかと。
    以上、栃木より愛をこめて。
    とぅてぃだ

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    1. 首→(中略)→手首まで動作として繋がっているっていうのは確かにそうかもしれないですね。そこは意識して無かった!
      ちょっとその辺も意識してまた試行してみます。
      神戸より感謝をこめて。

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