2015年7月29日水曜日

クロスムーブ理論―2種類のクロス―

最近は岩行くたび雨。

どうなってんだまったく。

今日なんてエリア到着と同時に豪雨でとんぼ帰り。

酷い。


ブログの更新も随分と止まっている。



ということでまた理論系でも書いてみよう。


今回のテーマは

「クロスムーブ」


前回は「デッド」で前々回は「ランジ」

で今回はクロス、と、段々内容が地味で基礎的なほうになってきていますね。


さて

前置きはさておき、そろそろ本題に入りましょう。


今回語ることは副題の通り

「2種類のクロス」

内訳は

「閉じるクロス」


「開くクロス」

の2つです。

まずは以下の2つの画像を見て下さい。


Aのホールドが左手で元々持っていたホールドで、Bのホールドに向けてクロスで右手を出している、という状況です。


それぞれのムーブでは「力の加わる方向」がまるで逆方向です

しかし、

このムーブはどちらも「クロスで右手を出す」と言われます。
ちょっと問題だと思いませんか?


はじめに断っておきますが、

この開くクロスと閉じるクロス、

どちらが良い出し方でどちらが悪い出し方かというようなことはありません。

場合によってどちらの出し方が適切かが変わるというだけです。


最近色々なクライマーの登りを観察していて思うのですが、

この2つを明確に区別できていないクライマーが非常に多いです。

特に保持力と腕力が特に強いクライマーは

クロスといえば「閉じるクロス」だけしか思いつかないというような人も居ます(マジで)。




じゃあどんな状況でこの2つを使い分けるのかということについてですが、

まずはじめに

ホールドの向きを考えましょう


もう一度画像を見て下さい。

「閉じるクロス」の例の画像では

AのホールドBのホールド右下に引ける向きに付いています。

この状況で「開くクロス」をしようとすると、Bのホールドを取った時点で左下に滑り落ちます。

逆に

「開くクロス」の例の画像では

AのホールドBのホールド左下に引ける向きに付いています。

この状況で「閉じるクロス」をしても、Bのホールドに手が届いてもBのホールドを有効に保持することができません。


次に考えるのは

ホールドの信頼度です


Aのホールドがガバでしっかりと保持できるがBのホールドは持ち辛いカチなどであれば、しっかりとAのホールドを保持してスタティックに「閉じるクロス」で出したほうが確実でしょう。

逆に
Aのホールドは悪いがBのホールドはガバであるような状況であれば思い切って「開くクロス」で勢い良く体ごと左にスライドしてBのホールドにしっかりと体重を預けるべきでしょう。

クロス方向に片手でランジに行く時なんかはかなりの確率で「開くクロス」を選択することが適切になると思います。


先に保持力と腕力の強いクライマーは「閉じるクロス」ばかりする、というようなことを書きましたが、
それは彼らにとってAのホールド(継続して保持しているホールド)は大抵信頼できてしまっているからです。彼らにとっては「まだ触っていないガバ」に体を預けに行くよりも「今持っているカチ」を徹底して握りこむほうが信頼に足るムーブだということでしょう。強すぎるというのも考え物ですね。



・ホールドの向き
・ホールドの信頼度

この2つ以外にも色々と課題に応じて条件は重なるでしょう。(例えば足の位置とか、次のホールドまでの距離とか)
さまざまな要素が複合的に作用してムーブは決定されるべきなので、それらの条件を細かくリストアップすることはちょっとここでは難しいので割愛します。



今回言いたかったことは、
「クロス」と一言で片付けてはいるが、全然違うムーブがそれぞれ含まれているんだということ、
それと、ホールドの配置をよく考えてムーブ選択をしましょうということです。


ものすごく基本的なことですね。

しかし、

基本的なことっていうのは無意識にやっていることだから、強く意識しないとなかなか理論も何もないと思いがちです。

そういった意味では基礎的でかつ些細な部分に着目することこそ、難しく高度なことだと言えるのかもしれません。


かのイチロー選手もこう言っています

「自分で無意識にやっていることを、もっと意識しなければならない」

と。

僕のこの作業も、記事として成文化することで、無意識にやっていた(あるいはぼんやりとしか意識していなかった)ことをはっきりと意識するためにやっているわけだし。


ある程度のレベル(3級以上くらい)のクライマーなら大抵、

この「開くクロス」と「閉じるクロス」の使い分けは出来ているはずです。

しかしそれを意識して使い分けているかとなると、話は違うでしょう。


今回のコレが
そんな人たちの、

無意識を意識に変えるためのきっかけに少しでもなってくれればと。